骨と語る―法人類学者の捜査記録
価格:¥ 1,835(税込)
発売日:1995-09
この本は、アメリカの法医人類学者・故ウィリアム・メイプルズ(William R. MAPLES)[1937-1997]さんが、ご自分が扱ってきた事例について紹介した本です。共著者は、マイケル・ブラウニング(Michael BROWNING)さんです。原題は、1994年に出版された「Dead Men Do Tell Tales」で、直訳すると「死者は物語を語る」となります。監修・解説は、元東京都監察医務院長の上野正彦さんで、小菅正夫さんの翻訳により、1995年に徳間書店から出版されました。
本書の内容は、以下のように全16章からなります。
- 毎日がハロウィーン: 法人類学者という稼業
- お喋りな頭蓋骨: しゃれこうべから殺しの手口を知る
- 骨の束: 白骨になるまでの時間
- 土に抱かれて: 埋葬死体を発見する
- 浮き荷と投げ荷: バラバラにされた犠牲者たち
- 魂が病むとき: 自殺で受ける奇妙な外傷
- 悪鬼を出し抜く: 殺人者が投げかける難問
- 不自然な自然: エレファント・マンの骨を鑑定する
- 日出づるなき処: 子供たちの不当な死
- 炎と骨壺: 火葬が作り出すミステリー
- 愛の瓦礫: 無理心中現場の一万個の骨
- 失われた軍隊: ヴェトナム戦没者の遺骨識別
- 取り違えられた征服者: フランシスコ・ピサロの真偽
- 砒素と大統領: ザカリー・テーラーは毒殺か?
- 全ロシアの皇帝: 骨が語るニコライ二世虐殺の真相
- わが骸をして語らしめん: 恐るべき五重殺人
この本で、特に興味深いのは、第8章の「不自然な自然: エレファント・マンの骨を鑑定する」でした。エレファント・マンは、イギリス人の、故ジョン・メリック(John MERRICK)[1862-1890]のことです。ただ、本名は、本書にも触れられていますが、「John」ではなく、「Joseph」のようで、エレファント・マンを診察した医師、フレデリック・トリーヴズが書き換えたようです。
1979に上演された「エレファント・マン」や、1980年に上映された映画「エレファント・マン」で有名になりました。また、本書にも触れられていますが、今年亡くなった歌手のマイケル・ジャクソン[1958-2009]さんが、王立ロンドン医科大学から当時の金額で100万ドルで買い取ろうとしたという報道もなされました。
メリックさんの死因は、まだ、特定されてはいませんが、本書ではプロテウス症候群ではないかとされています。ただ、保存されていた皮膚の標本は、第二次世界大戦中のドイツ空軍によるロンドン大空襲で焼失してしまったため、現代のDNA鑑定が不可能となってしまったのは残念なことです。