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人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

法医人類学の本5.白骨死体の鑑定

2010年11月06日 | I1.法医人類学の本[Forensic Anthropol

Setayoshino1990

 この本は、科学警察研究所の瀬田季茂さんと吉野峰生さんにより、人骨から性別・死亡年齢・身長等を推定する方法について詳細に解説されたものです。1990年に、令文社から出版されました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたので、リンクさせていません。

 本書の内容は、以下のように、全4章からなります。

第Ⅰ章.人体骨格

  1. 人体骨格の概略
  2. 人体骨格の解剖学

第Ⅱ章.白骨死体の鑑定

  1. 胎児骨の鑑定
  2. 男女性の判別
  3. 年齢の推定
  4. 身長の推定
  5. 死後経過年数の推定
  6. 個人識別に有効な歯の特徴的所見の記録

第Ⅲ章.白骨死体の個人識別

  1. スーパーインポーズ法と復顔法
  2. X線写真の所見による個人識別

第Ⅳ章.白骨死体鑑定の実例

  1. 動物骨の鑑定
  2. 幼児骨の鑑定
  3. 思春期女性骨の鑑定
  4. 青年期男性骨の鑑定
  5. 40才代女性骨の鑑定
  6. 60才男性骨の鑑定

 本書は、日本語で書かれた法医人類学の本としては、最も、専門的な本だと思われます。なお、巻末には、人体体部の名称・骨の生物学・骨の発生と成長の附録がついています。本書は、索引も入れて全478ページの大著です。すべて読むというよりは、必要な部分を辞書のように使うというのが良いと思います。


法医人類学の本4.身元確認

2009年12月07日 | I1.法医人類学の本[Forensic Anthropol
身元確認 歯や骨からのアプローチ 身元確認 歯や骨からのアプローチ
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2001-10-10

 この本は、歯科医師の大國 勉さんが、骨や歯から性別・死亡年齢・身長等を推定する方法について書いた本です。2001年に、フリープレス社から出版されました。

 著者の大國さんは、東京歯科大学のご出身で、大久保清事件・連合赤軍リンチ殺人事件・日航機墜落事故等で身元確認を担当された方です。

 本書の内容は、以下のように全17章からなります。

  1. 緒論
  2. 歯の知識
  3. 歯の解剖
  4. 歯種の鑑別
  5. 口腔をつくる骨と個人識別
  6. 頭部の骨と個人識別
  7. 歯の配列と咬合
  8. 歯の異常と個人識別
  9. 歯の疾患と個人識別
  10. 種々の歯科治療
  11. 歯や骨の記録
  12. 年齢の推定
  13. 性別の判定
  14. 歯や骨と血液型
  15. 鑑定書
  16. 日航機墜落事故:世界最大の惨事
  17. 必要な医学用語

 本書では、骨や歯から個人識別する方法が多くの写真や図で解説されており、法医人類学のみならず、人類学や骨考古学にも大変、参考になる本です。


法医人類学の本3.骨と語る

2009年08月19日 | I1.法医人類学の本[Forensic Anthropol

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骨と語る―法人類学者の捜査記録
価格:¥ 1,835(税込)
発売日:1995-09

 この本は、アメリカの法医人類学者・故ウィリアム・メイプルズ(William R. MAPLES)[1937-1997]さんが、ご自分が扱ってきた事例について紹介した本です。共著者は、マイケル・ブラウニング(Michael BROWNING)さんです。原題は、1994年に出版された「Dead Men Do Tell Tales」で、直訳すると「死者は物語を語る」となります。監修・解説は、元東京都監察医務院長の上野正彦さんで、小菅正夫さんの翻訳により、1995年に徳間書店から出版されました。

 本書の内容は、以下のように全16章からなります。

  1. 毎日がハロウィーン: 法人類学者という稼業
  2. お喋りな頭蓋骨: しゃれこうべから殺しの手口を知る
  3. 骨の束: 白骨になるまでの時間
  4. 土に抱かれて: 埋葬死体を発見する
  5. 浮き荷と投げ荷: バラバラにされた犠牲者たち
  6. 魂が病むとき: 自殺で受ける奇妙な外傷
  7. 悪鬼を出し抜く: 殺人者が投げかける難問
  8. 不自然な自然: エレファント・マンの骨を鑑定する
  9. 日出づるなき処: 子供たちの不当な死
  10. 炎と骨壺: 火葬が作り出すミステリー
  11. 愛の瓦礫: 無理心中現場の一万個の骨
  12. 失われた軍隊: ヴェトナム戦没者の遺骨識別
  13. 取り違えられた征服者: フランシスコ・ピサロの真偽
  14. 砒素と大統領: ザカリー・テーラーは毒殺か?
  15. 全ロシアの皇帝: 骨が語るニコライ二世虐殺の真相
  16. わが骸をして語らしめん: 恐るべき五重殺人

 この本で、特に興味深いのは、第8章の「不自然な自然: エレファント・マンの骨を鑑定する」でした。エレファント・マンは、イギリス人の、故ジョン・メリック(John MERRICK)[1862-1890]のことです。ただ、本名は、本書にも触れられていますが、「John」ではなく、「Joseph」のようで、エレファント・マンを診察した医師、フレデリック・トリーヴズが書き換えたようです。

 1979に上演された「エレファント・マン」や、1980年に上映された映画「エレファント・マン」で有名になりました。また、本書にも触れられていますが、今年亡くなった歌手のマイケル・ジャクソン[1958-2009]さんが、王立ロンドン医科大学から当時の金額で100万ドルで買い取ろうとしたという報道もなされました。

 メリックさんの死因は、まだ、特定されてはいませんが、本書ではプロテウス症候群ではないかとされています。ただ、保存されていた皮膚の標本は、第二次世界大戦中のドイツ空軍によるロンドン大空襲で焼失してしまったため、現代のDNA鑑定が不可能となってしまったのは残念なことです。

Maples1995


法医人類学の本2.白骨は語る

2009年08月18日 | I1.法医人類学の本[Forensic Anthropol

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白骨は語る
価格:¥ 2,548(税込)
発売日:1994-07

 この本の原題は、『Witnesses From the Grave』というもので、直訳すると、「墓場からの目撃者」となります。著者は、ジャーナリストのクリストファー・ジョイス[Christopher JOYCE]さんと作家のエリック・ストーバー[Eric STOVER]さんのお二人です。小泉摩耶さんの翻訳で、1994年にNTT出版株式会社から出版されました。

 本書は、主に、アメリカのオクラホマ大学の法医人類学者、クライド・スノー[Clyde SNOW]さんの仕事にふれています。本書の内容は、以下のように全17章に分かれます。第Ⅰ部は、「骨が語る事件の真実」として、第1章から第7章になります。また、第Ⅱ部は、「ヨーゼフ・メンゲレを追う」として、第8章から第10章になります。さらに、第Ⅲ部は、「アルゼンチンでの大量虐殺」として、第11章から第14章になります。

  1. スノー、骨学を学ぶ
  2. 科学的検死法の確立
  3. 妻をソーセージにした男
  4. 航空機墜落事故を追って
  5. 床下に子どもの白骨
  6. 砒素づけの無法者
  7. カスター将軍、最後の陣地
  8. アウシュビッツの死の天使
  9. 人事を尽くして真実に迫る
  10. 最後の疑問を解く
  11. 明るみに出た非道
  12. リリアナの話
  13. 情けあれど正義はあらず
  14. でも私たちは歌い続ける

 どれも、興味深いのですが、その中でも「第7章.カスター将軍、最期の陣地」は戦跡考古学と関連しています。これは、1876年6月25日、サウスダコタ州で起きたリトルビッグホーンの戦いで戦死した、ジョージ・アームストロング・カスター[1839-1876]将軍のエピソードです。

 ここで、スノーは、バラバラになった骨から死亡年齢や民族の特徴を読みとり、歴史的記録と照合していく作業を行います。意外だったのは、この戦いで戦死した兵士の40%以上が、外国生まれだったということでした。また、身長が高い者は、軍人としての階級が上だったという事実です。法医人類学を、考古学や人類学に応用した事例と言えるでしょう。

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法医人類学の本1.犯罪科学捜査

2009年08月17日 | I1.法医人類学の本[Forensic Anthropol

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犯罪科学捜査 (宝島社新書)
価格:¥ 714(税込)
発売日:2000-06

 この本は、東京歯科大学の法医人類学者・橋本正次先生が、身元不明死体からどのようにして個人識別をするのかを、様々な事例から解き明かした本です。橋本先生は、以前ご紹介した元東京歯科大学の鈴木和男先生のお弟子さんとして、長年、法歯学教室で勤務されてきた方です。日本航空機墜落事故や拉致被害者の鑑定で、有名な方です。

 本書の内容は、以下のように全3章からなります。

  1. 死者はこして分かり、犯人はこうして捕まえる
  2. 日航機墜落事故: 五百二十人の遺体が教えてくれたこと
  3. 法人類学概論: なぜ骨から読み取れるのか

 法医人類学の様々な事例を、豊富な写真で紹介しており、法医人類学の最前線がよくわかる本です。

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