人類学のススメ

人類学の世界をご紹介します。OCNの「人類学のすすめ」から、サービス終了に伴い2014年11月から移動しました。

民俗学の本3.食生活の歴史

2013年01月31日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

食生活の歴史 (講談社学術文庫) 食生活の歴史 (講談社学術文庫)
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2001-10

 この本は、元大妻女子大学の民俗学者・瀬川清子[1895-1984]さんが、日本の食物を民俗学的に書いたものです。1968年に講談社から単行本として出版され、2001年に講談社学術文庫1517として講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全6章からなります。

  1. 主食料
  2. 主食料の食べ方(粒食と粉食)
  3. 副食物
  4. 調味料
  5. 食具
  6. 食制

 著者の瀬川清子さんは、1895年10月20日に秋田県鹿角市で岩船キヨとして生まれました。その後、教員資格試験を取得し1922年まで尋常高等小学校で教師として勤務しています。1917年には、同僚の瀬川三郎さんと結婚しました。

 1922年に小学校を退職後上京して東洋大学専門部倫理学東洋文学科に入学し、1924年と1925年に国語科及び漢文科の免許を取得しました。当時、女子大学以外の大学では女性に門戸を開いていませんでしたが、東洋大学は女性に門戸を開いていた数少ない大学だったそうです。この東洋大学には、1921年に夫の瀬川三郎さんも入学していたそうで、その影響が大きかったと言われています。その後、川村学院教諭を経て、1926年から1944年にかけて第一東京市立中学校(東京都立九段高校から千代田区立九段中等教育学校)で教鞭をとります。

 この間、瀬川清子さんに大きな転機が訪れます。1933年に石川県の能登半島舳倉島の海女の調査を行い、雑誌『嶋』に「舳倉の海女」を投稿すると、民俗学の泰斗・柳田国男[1875-1962]さんの目にとまったのです。柳田国男さんは、瀬川清子さんを自宅で開催していた「木曜会」という研究会に招き、1947年には柳田さんの自宅書庫の隣に開設された民俗学研究所研究員にも就任しました。

 瀬川清子さんは、1944年に大妻女子専門学校の非常勤講師に就任し、1950年に大妻女子大学非常勤講師、1955年に大妻女子大学専任講師、1960年に教授に昇任して1974年に退職しました。60歳で専任講師となり、65歳で教授に昇任し、78歳までその職に留まったことになるという点で大器晩成の民俗学者でした。瀬川清子さんは、1984年2月20日に、88歳の生涯を閉じています。

Segawa2001


民俗学の本2.民俗学の方法

2013年01月30日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Inokuchi1977

民俗学の方法 (1977年) (講談社学術文庫)
価格:¥ 336(税込)
発売日:1977-11

 この本は、元杏林大学の民俗学者・井之口章次さんが書いた民俗学の入門書です。1970年に岩崎美術社から出版されたものが、1977年に講談社学術文庫201として講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全9章からなります。

  1. 伝承文化研究の態度
  2. 民俗学の位置
  3. 研究対象と観点
  4. 野外作業
  5. 資料の活用
  6. 研究法
  7. 柳田民俗学と折口民俗学
  8. 民俗学研究の歩み

 巻末には、「調査要項」と倉石忠彦さんによる「解説」が掲載されています。特に、「調査要項」は民俗学調査の項目が列挙されており、大変、参考になります。


文化人類学の本17.狩猟と遊牧の世界

2013年01月29日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of
狩猟と遊牧の世界―自然社会の進化 (講談社学術文庫 24) 狩猟と遊牧の世界―自然社会の進化 (講談社学術文庫 24)
価格:¥ 630(税込)
発売日:1976-06

 この本は、元国立民族学博物館館長の梅棹忠夫[1920-2010]さんが、狩猟採集民と牧畜民について書いたものです。1976年に、講談社学術文庫24として、講談社から出版されました。1964年から1965年にかけて出版された、4つの論考が元になっています。

 本書の内容は、以下のように全24章からなります。

  1. 狩猟と遊牧
  2. 生活様式の諸類型
  3. 生活様式の進化
  4. 研究の方法
  5. 自然社会
  6. ほろびゆく社会
  7. 狩猟・採集民の生活
  8. 狩猟・採集民の生活(つづき)
  9. 採集から狩猟への進化
  10. むれから家族へ
  11. 生活様式の進化における精神の役わり
  12. 牧畜がさきか、農耕がさきか
  13. 牧畜的家畜と非牧畜的家畜
  14. 原始農耕と家畜飼養
  15. 牧畜の起源についての諸学説
  16. 諸学説の批判
  17. 乳しぼりと去勢
  18. 牧畜民の四類型
  19. ステップと砂漠・オアシス
  20. 牧畜民の生活
  21. 多元的起源の可能性
  22. 歴史における牧畜社会
  23. 牧畜革命
  24. 牧畜社会の運命

 なお、巻末には、谷 泰さんによる解説が掲載されています。

Umesao1976


文化人類学の本16.文化人類学読本

2013年01月28日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Yoshida1975

文化人類学読本 (1975年)
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:1975

 この本は、元東京大学の文化人類学者・吉田禎吾さんによる編で書かれた文化人類学の教科書です。1975年に、東洋経済読本シリーズ32として、東洋経済新報社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全9章からなります。

  1. 文化人類学の目的と方法(吉田禎吾)
  2. 環境と人間(岡田宏明)
  3. 親族(末成道男)
  4. 政治組織(丸山孝一)
  5. 農民社会(松永和人)
  6. 宗教と世界観(波平恵美子)
  7. 文化とパーソナリティ(江淵一公)
  8. 言語と文化(池上嘉彦)
  9. シンボルと構造(吉田禎吾)

 本書は、それぞれの分野の専門家が分担執筆しており、大変、参考になります。


世界の人類学者40.フランシス・クラーク・ハウエル(Francis Clark HOWELL)[1925-2007]

2013年01月27日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

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フランシス・クラーク・ハウエル(Francis Clark HOWELL)[1925-2007][リーキー財団(The Leakey Foundation)のウェブサイトより引用]

 フランシス・クラーク・ハウエルは、1925年11月27日に、アメリカのミズーリ州カンザス市で生まれました。しかし、1944年から1946年にかけて、米海軍の通信兵として第二次世界大戦の戦線の内、太平洋戦線に従軍しています。

 戦後、ハウエルはシカゴ大学に入学し、人類学の分野で1949年に学士号・1951年に修士号を取得しました。大学入学前には、ニューヨークのアメリカ自然史博物館を訪問し、当時、北京協和医学院から博物館に移籍していた、フランツ・ワイデンライヒ(Franz WEIDENREICH)[1873-1948]やワイデンライヒを訪問していたグスタフ・ハインリッヒ・ラルフ・フォン・ケーニヒスワルト(Gustav Heinrich Ralph von KOENIGSWALD)[1902-1982]と会い、人類学を志したと言われています。特に、ワイデンライヒにはネアンデルタール人を研究したいと述べたそうです。

 やがて、ハウエルに大きな転機が訪れました。当時のシカゴ大学には、著名な法医人類学者のウィルトン・マリオン・クロッグマン(Wilton Marion KROGMAN)[1903-1987]が教鞭をとっていましたが、クロッグマンはペンシルヴァニア大学に移籍したのです。このクロッグマンの後任となったのが、シャーウッド・ラーンド・ウォッシュバーン(Sherwood Larned WASHBURN)[1911-2000]でした。ハウエルは、ウォッシュバーンの一番弟子となり、人類進化を専門とすることになります。1953年には、「人類の頭蓋底部の構造」により博士号を取得しました。

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人骨を研究中のクラーク・ハウエル[カリフォルニア大学バークレー校のアーカイヴより引用]

 シカゴ大学卒業後、ハウエルは1953年から1955年にかけて、ミズーリ州にあるワシントン大学セントルイス校医学部解剖学教室で解剖学を教えます。ここには、法医人類学者のミルドレッド・トロッター(Mildred TROTTER)[1899-1991]がいました。トロッターは、1948年と1949年にハワイの中央鑑識研究所で、太平洋戦争で戦死した米兵の遺体鑑定を行っており、もし、クロッグマンが移籍しなければ法医人類学を専門としたかもしれない従軍経験者のハウエルにとっては骨を学ぶ良い機会でした。

 1955年、ハウエルは母校のシカゴ大学に移籍します。1962年には、教授に昇任しました。ハウエルは、ここで25年間在籍し、1970年にはカリフォルニア大学バークレー校の教授として移籍します。ここには、かつての師・ウォッシュバーンが1958年から教授として勤務していました。ハウエルは、このカリフォルニア大学に1991年まで在籍しています。

 ハウエルは、エチオピア・ケニア・タンザニア・トルコ・スペイン・中国等で発掘調査を実施しています。ところが、不幸なことに古人類学の分野で著名な化石人類を発見することはできませんでした。しかし、ハウエルが発掘調査で手がけた様々な分野の専門家を使って行う学際的方法は、現在ではスタンダードになっています。また、幅広い知識を持つハウエルは、多くの弟子を育て現在ではその弟子達が活躍しています。

 クラーク・ハウエルは、2007年3月10日、81歳で死去しました。

 私は、ハウエルさんとは留学中に何度かお会いしたことがあります。また、1990年代にハウエルさんがシンポジウムに招待されて来日された際にも再会しました。

*クラーク・ハウエルに関する資料として、以下の文献を参考にしました。

  • Tim D. WHITE(2007)'F. Clark Howell (1925-2007)', "Nature", Vol.447, p.52
  • Susan C. ANTON(2007)'Of Burnt Coffee and Pecan Pie: Recollections of F. Clark Howell on his Birthday November 27, 1925 - March 10, 2007', "PaleoAnthropology2007", pp.36-52
  • Mary C. STUNER & Steven L, KUHN(2008)'Early Man: a tribute to the late career of F. Clark Howell',"Journal of Human Evolution", 55: 758-760
  • Elwyn L. SIMONS(2011)''Francis Clark HOWELL', "Proceedings of the American Philosophical Society", 355(2): 205-209

人類進化の本56.原始人

2013年01月26日 | E5.人類進化の本[Human Evolution:Jap

Howell1965

原始人 (1975年) (ライフネーチュア ライブラリー)
価格:¥ 1,029(税込)
発売日:1975

 この本は、元カリフォルニア大学バークレー校の人類学者、クラーク・ハウエル(Clark HOWELL)[1925-2007]さんが書いた人類学の教科書です。原題は『Early Man』で、直訳すると「原人」となるでしょうか。1965年にタイムライフ社から出版され、1969年に改訂版が出版されました。日本語版は、元東京大学の人類学者、寺田和夫[1928-1987]さんによる翻訳でタイムライフブック社から1970年と1976年に出版されています。

 本書の内容は、以下のように、全8章からなります。

  1. 古代人類の研究
  2. 類人猿のかなたに
  3. 人類をめざして
  4. 真の人類の登場
  5. 石器時代人の道具
  6. ネアンデルタール人
  7. 現生人類の誕生
  8. 原始人と現代人との関係

 本書は、当時、タイムライフ社の副編集長、メイトランド・イーディー(Maitland EDEY)さんとの共著になっています。このイーディーさんは、後に、エチオピアでのアウストラロピテクス・アファレンシスの発見物語が書かれた『ルーシー(Lucy)』を、ドナルド・ジョハンソン(Donald JOHANSON)さんと一緒に出版しています。本書は、出版されてからかなりの年月が経っており内容も古いのですが、私が学生時代には数少ない人類進化の教科書でした。多くの写真や復元図が掲載されており、アメリカの教科書は良くできているなと感心したことを思い出します。


文化人類学の本15.新版文化人類学序説

2013年01月25日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Oba1968

文化人類学序説 (1968年)
価格:¥ 735(税込)
発売日:1968

 この本は、元茨城大学及び茨城キリスト教大学の文化人類学者、大場千秋さんが書いた文化人類学の教科書です。1957年に出版した『文化人類学序説』の新版として、1968年に東京教学社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全2部全6章からなります。

第Ⅰ部.文化人類学

  1. 文化人類学の輪廓
  2. 文化の特性
  3. 文化の諸相

第Ⅱ部.文化人類学とその周辺

  1. 人類学と心理学
  2. 文化人類学と心理学の諸方向
  3. 人類学と児童研究

 本書が類書と異なるのは、著者の専門である心理学の成果が多く取り入れられている点です。

 本書の著者・大場千秋さんは、1902年11月18日に北海道で生まれました。早稲田中学・水戸高等学校を経て、1928年に東京帝国大学文学部心理学科を卒業します。その後、東京帝国大学文学部副手・水戸高等学校教授・茨城大学教授を経て、茨城キリスト教大学教授を歴任しました。特に、1971年から1975年にかけては茨城キリスト教大学の学長に就任しています。大場千秋さんが書いた主な本は、以下の通りです。

  • 1941年:『民族心理学』
  • 1943年:『原始民族の文化と宗教』
  • 1948年:『原始民族の実験心理学』
  • 1950年:『文化人類学』
  • 1957年:『文化人類学序説』
  • 1968年:『新版・文化人類学序説』

文化人類学の本14.文化人類学の世界・人間の鏡

2013年01月24日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

文化人類学の世界―人間の鏡 (講談社現代新書 255) 文化人類学の世界―人間の鏡 (講談社現代新書 255)
価格:¥ 714(税込)
発売日:1971-01

 この本は、元ハーヴァード大学の文化人類学者、クライド・クラックホーン(Clyde KLUCKHOHN)[1905-1960]さんが書いた文化人類学の教科書です。原題は『Mirror for Man』で、本書の副題にある通り「人間の鏡」となります。外山滋比古さんと金丸由雄さんによる翻訳で、1971年に講談社現代新書255として講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全5章からなります。

  1. 人類学とは何か:奇習と土器と頭骨と
  2. 奇妙な習慣:文化とは何か
  3. 人類:現代の神話
  4. 言語と人間
  5. 文化と性格:習慣の層のつくる建築物

 本書の著者のクライド・クラックホーンは、1905年1月11日にアメリカのアイオワ州で生まれました。成長して、クラックホーンはプリンストン大学に入学しますが、病気になったためニューメキシコ州の牧場で静養せざるを得なくなりました。ここで、クラックホーンは生涯の研究テーマに出会います。この牧場で、ナヴァホ族と知り合いになったのです。後に、クラックホーンは、ナヴァホ族の言語や文化を専門に研究しました。

 病気療養から回復したクラックホーンは、ウィスコンシン大学マディソン校を1928年に卒業しました。卒業後の1928年から1930年にかけてローズ基金奨学生としてオックスフォード大学に留学し古典を学び、1930年から1932年にかけてウィーン大学で人類学を学びました。

 帰国後、1932年から1934年にかけてニューメキシコ大学で人類学の教鞭をとり、1936年にはハーヴァード大学で博士号を取得しました。クラックホーンは、博士号を取得したハーヴァード大学でそのまま社会人類学の教鞭をとり、ロシア研究センターの所長に就任しています。また、1947年にはアメリカ人類学会の会長にも就任しました。しかし、1960年7月28日に、心臓発作により55歳の若さで急逝しています。

Kluckhohn1971


文化人類学の本13.文化人類学の考え方

2013年01月23日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Yoneyama1968

文化人類学の考え方 (講談社現代新書 152)
価格:¥ 663(税込)
発売日:1968-06

 この本は、元京都大学の文化人類学者・米山俊直[1930-2006]さんが書いた文化人類学の入門書です。1968年に、講談社現代新書152として、講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全6章からなります。

  1. 文化人類学とは
  2. フィールドワークの話
  3. 人間関係の幾何学:親族名称と親族組織
  4. 文化のしくみ
  5. 文化の進化
  6. 現代の研究

 なお、巻末には附録として、「読書ガイド」が掲載されています。

 著者の米山俊直さんは、1930年9月29日に奈良県で生まれ、1954年に三重大学農学部農学科を卒業し、1956年に京都大学大学院農学研究科修士課程を修了します。京都大学大学院では、農林経済学を専攻しました。1956年には、イリノイ大学社会人類学部助手に就任し、1960年には京都大学に復学して1961年に京都大学大学院農学研究科博士課程を修了しました。

 1961年に京都大学農学部助手・1965年に甲南大学文学部助教授と移籍しますが、1971年に母校・京都大学教養学部助教授に就任し、1981年には京都大学教養部教授・1992年に京都大学総合人間学部教授に就任しますが、1994年に京都大学を定年退官します。

 その後、1997年に大手前女子大学学長・2000年に大手前大学学長に就任しますが、2004年に退職しました。2006年3月9日に死去しています。


文化人類学の本12.現代文化人類学入門(4)

2013年01月22日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Bock19774

現代文化人類学入門〈4〉 (1977年) (講談社学術文庫)
価格:¥ 294(税込)
発売日:1977-02

 この本は、元ニューメキシコ大学の文化人類学者、フィリップ・ボック(Philip BOCK)さんが書いた文化人類学の教科書です。全4冊の内の第4冊になります。1977年に、元九州大学の文化人類学者・江淵一公[1933-2007]さんによる翻訳で、講談社学術文庫105として講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下の通りです。

第6部.文化人類学の方法

・第12章.野外調査の方法

・第13章.比較法

エピローグ.人類についての正しい研究


文化人類学の本11.現代文化人類学入門(3)

2013年01月21日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Bock19773

現代文化人類学入門〈3〉 (1977年) (講談社学術文庫)
価格:¥ 399(税込)
発売日:1977-02

 この本は、元ニューメキシコ大学の文化人類学者、フィリップ・ボック(Philip BOCK)さんが書いた文化人類学の教科書です。全4冊の内の第3冊になります。1977年に、元九州大学の文化人類学者・江淵一公[1933-2007]さんによる翻訳で、講談社学術文庫104として講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下の通りです。

第4部.技術体系

・第8章.道具と人間の必要

・第9章.技術と技能

第5部.思想体系

・第10章.信仰体系

・第11章.価値体系


世界の人類学者39.フィリップ・ヴァレンティン・トバイアス(Phillip Vallentine T

2013年01月20日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

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フィリップ・ヴァレンティン・トバイアス(Phillip Vallentine TOBIAS)[1925-2012]

 フィリップ・トバイアスは、1925年10月14日に、南アフリカのダーバンで生まれました。トバイアスは、この生まれた国で生涯を過ごしています。教育は、一貫してウィットウォータースランド大学で受けており、1946年に組織学と生理学で理学士号を、1947年に理学士号の優等学位を、1950年に医学士号を、1953年には博士号を取得しました。また、後になりますが1967年には、理学博士号を取得しています。このウィットウォータースランド大学医学部の解剖学教室には、アウストラロピテクス・アフリカヌスを記載した、レイモンド・ダート(Raymond DART)[1893-1988]が教授として勤務しており、トバイアスはこのダートの弟子となり、後に後継者として人類学を研究しました。

 トバイアスは、すでに、学生時代から発掘調査を行っており、1945年~1946年にかけて、スタルクフォンテイン、クロムドラーイ、マカパンスガット等、南アフリカの著名な遺跡を手がけています。1951年には母校医学部の解剖学教室講師に就任し、その後1959年には恩師のレイモンド・ダートの後継者として解剖学教室教授に就任しました。また、1980年から1982年には学部長も務めています。

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フィリップ・トバイアス(Phillip TOBIAS)[左]と恩師のレイモンド・ダート(Raymond DART)[右]

 トバイアスは、1955年にイギリスのケンブリッジ大学に、また1956年にはアメリカのミシガン大学とシカゴ大学で、人類学を研究しました。トバイアスは初期に、染色体や遺伝の研究を行っていました。また、生体学の研究も行っています。やがて、トバイアスに大きな転機が訪れました。

 タンザニアやケニアで古人類学の研究を行っていた、ルイス・リーキー(Louis B. LEAKEY)[1903-1972]とメアリー・リーキー(Mary LEAKEY)[1913-1996]夫妻が、1959年8月15日に発見したアウストラロピテクス・ボイセイ(パラントロプス・ボイセイ)の形態記載をトバイアスに依頼したのです。この研究は、1967年に『オルデュヴァイ峡谷2』としてケンブリッジ大学出版から出版されました。この研究過程で、トバイアスはボイセイとは異なる種であるホモ・ハビリスの存在を確信し、1964年に、ルイス・リーキー(Louis LEAKEY)[1903-1972]、フィリップ・トバイアス、ジョン・ネイピア(John NAPIER)[1917-1987]の3人の共著で、科学雑誌『Nature』に発表しました。このホモ・ハビリスの集大成は、1991年に『オルデュヴァイ峡谷4』としてケンブリッジ大学出版から出版されています。

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Tobias(1991)『Olduvai Gorge 4』の表紙

 トバイアスは、ダートの古人類学の仕事を継承し、南アフリカで、スタルクフォンテイン、タウング、マカパンスガット等の遺跡で、アウストラロピテクス・アフリカヌス、パラントロプス・ロブストスのみならず、StW53というホモ・ハビリスの頭蓋骨の存在を認めています。ホモ・ハビリスは、東アフリカでしか発見されていませんでしたが、StW53の発見によりその分布域が南アフリカまで広がっていたことが確認されました。ただ、異論があることも付け加えておきます。

 トバイアスは、生涯で約1,000の論文及び著書を出版するほど多彩でした。また、国際的にも活躍した古人類学者でした。さらに、人種差別撤廃にも大きく貢献しています。

 フィリップ・トバイアスは、2012年6月7日に86歳で死去しました。生涯を独身で過ごしています。これは、アパルトヘイトに反対する政治活動も行う中で家族がいると標的にされると考えたためとも、解剖学教室での前任者2人が離婚経験者で大学から問題視されていたためとも言われています。

 私は、トバイアス先生とは留学中に何度かお会いしたことがあります。また、1990年か1991年に来日された際には、1日東京をご案内しました。その頃、すでに体調がすぐれないとのことでしたが、人類学の知識と経験が膨大で、非常に穏やかな研究者だという印象を持ちました。

*フィリップ・トバイアスに関する資料として、以下の文献を参考にしました。

  • Sperber, Geoffrey H.(1990)"From Apes to Angels: Essays in Anthropology in Honor of Phillip V. Tobias", Wiley-Liss
  • Sperber, Geoffrey H.(1997)'Tobias, Phillip V(allentine)',"History of Physical Anthropology: An Encyclopedia, Volume Two"[Frank Spencer ed.], Garland Publishing, pp.1036-1038

人類進化の洋書57.オルデュヴァイ峡谷4(Olduvai Gorge4)

2013年01月19日 | E6.人類進化の洋書[Human Evolution:F

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 この本は、南アフリカにある元ウィットウォタースランド大学の人類学者、フィリップ・トバイアス(Phillip TOBIAS)[1925-2012]さんが、アフリカのタンザニア、オルデュヴァイ峡谷出土古人骨の内、ホモ・ハビリス(Homo habilis)について記載したものです。原題は『Olduvai Gorge』で、直訳すると「オルデュヴァイ峡谷」となります。このシリーズの第4巻として、1991年にケンブリッジ大学出版から出版されました。アマゾンで検索しましたが、ヒットしませんでしたのでリンクさせていません。

 本書は、全2巻に分かれています。本書の内容は、以下の通りです。なお、1章~4章が1巻・5章~9章が2巻になっています。

  1. Prolegomena
  2. The cranium and dentition of 'Twiggy': Olduvai hominid 24
  3. The skull and dentition of 'Cinderella': Olduvai hominid 13
  4. The cranium and dentition of 'George': Olduvai hominid 16
  5. The skull and dentition of Olduvai hominid 7 and other hominid cranial and dental remains from FLK NMI
  6. Other Olduvai cranial and dental remains assigned to Homo habilis
  7. Dental morphology of Homi habilis
  8. The endocranial casts of Homo habilis
  9. Summary and Conclusions

 本書は、オルデュヴァイ峡谷出土のホモ・ハビリス[OH: Olduvai Hominid]について、記載がされており、全921ページにも及びます。特に、OH13・OH16・OH24について詳細に記載されています。古人類には、例えばエチオピアで発見されたアウストラロピテクス・アファレンシスの全身骨格には「ルーシー」というニックネームがつけられる場合が多いのですが、本書でも、「ツウィッギー:OH24」・「シンデレラ:OH13」・「ジョージ:OH16」とニックネームがつけられています。古人類学の必読書の1冊です。ちなみに、このホモ・ハビリスの最初の記載は、1964年に、ルイス・リーキー(Louis LEAKEY)[1903-1972]、フィリップ・トバイアス、ジョン・ネイピア(John NAPIER)[1917-1987]の3人の人類学者により、科学雑誌『Nature』に発表されています。但し、本書が出版された時は、すでに共著者2人は死去していました。


人類進化の洋書56.類人猿から天使へ(From Apes to Angels)

2013年01月18日 | E6.人類進化の洋書[Human Evolution:F

From Apes to Angels: Essays in Anthropology in Honor of Phillip V. Tobias From Apes to Angels: Essays in Anthropology in Honor of Phillip V. Tobias
価格:¥ 17,898(税込)
発売日:1990-11-07

 この本は、アルバータ大学のジェフリー・スパーバー(Geoffrey H. SPERBER)さんによる編で、南アフリカの人類学者、フィリップ・トバイアス(Phillip V. TOBIAS)[1925-2012]さんを記念した論文集です。原題は『From Apes to Angels』で、直訳すると「類人猿から天使へ」となるでしょうか。1990年に、ウィリー・リスから出版されました。

 本書の内容は、以下のように、全24編からなります。

Cultural Anthropology

  • 1.The earliest cultural evidence of hominids in southern and south central afrika(J. Desmond Ckark)
  • 2.Some biological concomitants of sociocultural hierarchies in southern africa before the mfecane(G. T. Nurse)
  • 3.Kinanthropometric traditionsm approaches, and contributions(Bruce B. COPLEY)
  • 4.Anthropometry, undernutritionm and human movement science(P. J. Smit)
  • 5.The human form and architectural aesthetics(W. O. Servant)

Genetics, Pathology, and Methodology

  • 6.Blue-eyed blacks and the klein-waardenburg synovial articular surfaces(Peter W. Christie & James N. Ridley)
  • 7.The cornea in health and disease(Gordon K. Klintworth)
  • 8.Computer-aided technologies for imaging brain function(Evian Gordon)
  • 9.Classification and mathematical representation of synovial articular surfaces(Peter W. Christie & James N. Ridley)

Paleoanthropology

  • 10.Taung fossils in the university of california collections(H. B. S. Cooke)
  • 11.Observations on some restored hominid specimens in the transvaal museum, pretolia(R. J. Clarke)
  • 12.Deciduous dental features of the kalahari san: comparison of non-metrical traits(Frederick E. Grine)
  • 13.The precision grip in Australopithecus africanus: anatomical and behavioral correlates(D. E. Ricklan)
  • 14.Knuckling under: controversy over hominid origins(Adrienne L. Zihlman)
  • 15.The tuinplaas human skeleton from the springbok flats, transvaal(Alun R. Hughes)
  • 16.The phylogeny and ontogeny of dental morphology(Geoffrey H. Sperber)

Human Biology

  • 17.Sexual dimorphism in the human corpus callosum: its evolutionary and clinical implications(Ralph L. Holloway)
  • 18.Role of the thalamus in the evolution of speech and language in man(Robert M. T. Simmons)
  • 19.Aspects of the human cranial base: a multivariate approach(Julius A. Kieser & H. T. Groeneveld)
  • 20.Craniofacial growth studies and prediction in orthodontics(Alex Jacobson)
  • 21.A cephalometric study of the anatomy of the cranial base in a sample of black children(C. B. Preston & S. I. Chertkow)
  • 22.Patterns of skeletal maturity in a group of urban black south african children(Seymour Chertkow & C. Brian Preston)
  • 23.Dminance in the nasal air sinuses of south african blacks(William A. Kerr)
  • 24.Pnuematization of the skulls of southern african blacks(Brian L. Wolfowitz)

 本書には、フィリップ・トバイアスさんの経歴が巻頭に、また、巻末にはその業績目録が掲載されています。

Sperber1990


文化人類学の本10.現代文化人類学入門(2)

2013年01月17日 | H4.世界の人類学者[Anthropologist of

Bock19772

現代文化人類学入門〈2〉 (1977年) (講談社学術文庫)
価格:¥ 399(税込)
発売日:1977-01

 この本は、元ニューメキシコ大学の文化人類学者、フィリップ・ボック(Philip BOCK)さんが書いた文化人類学の教科書です。全4冊の内の第2冊になります。1977年に、元九州大学の文化人類学者・江淵一公[1933-2007]さんによる翻訳で、講談社学術文庫103として講談社から出版されました。

 本書の内容は、以下の通りです。

第3部.社会体系

・第4章.人間の種類

・第5章.集団の種類

・第6章.社会的空間と社会的時間

・第7章.安定と変化