mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

酷暑の白馬、「あずさ」も熱気に満ちていた

2019-08-08 15:52:28 | 日記
 
 三日間、白馬を遊んできました。私のカミサンの師匠筋で、植物や鳥や昆虫の自然観察を案内しながら白馬でペンションを経営なさっている方がいて、そこへ鳥の達人や植物に関心の深い方々をともなってカミサンがコーディネートするツアー。私は退職した16年前の春にそのペンションを訪れ、雪の中の鳥たちをたっぷりと見せていただき、ああ、こういう世界があるのだと感心したものでした。その後、ときどきカミサンのお供をして足を運び、白馬を根城に、新潟や上高地近辺にも足を運んで、自然観察の愉しみを味わわせてもらってきました。
 
 今回の鳥の達人たちは、このペンションのオーナーとは何十年ぶりも含めて旧知の方々。「どこへ行きたい?」と聞いて、そちらこちらへ三日間、車を回すオプショナルツアーだ。だが、暑い。異常に暑い。白馬が朝早くから、軽く30度を超えている。こんなことは近年にないが、これが常態化する気配もあって、それが白馬の自然を変えつつあるようでもあった。
 
 一日目、栂池。ロープウェイとゴンドラで1800m余まで上り、自然園を経めぐる。これまでも山の途次に乗ったことはあるが、こんなふうに山の稜線に応じて屈曲しているとは思わなかった。全体で20分ほどの乗り心地も圧巻であったし、標高差1000mほどを稼いでくれるのは、文字通り別天地に行くようであった。たしかに標高差に応じて気温は低くなったのであろうが、陽ざしが当たるところでは、やはり容赦ない暑さがつきまとう。
 
 植物観察は、あるく歩度が違う。ほんの200mほどのところを20分も30分も掛けて進む。ひとつひとつこれぞという植物を指さして、しゃがみ込み、葉を裏返してどこがどうと詮議している。彼のオーナーは私より一つ年上だが、「いや、とぼけているわけじゃなくて、ぼけてるんです」と嬉しそうに話す。植物の名がすぐに思い浮かばないらしい。「え-~っと、これはですねえ……、思い出してから言えばよかったなあ」と悔やむほど、喉元まできているのにことばにならない。振る向くとカミサンが「○○の仲間ですよね」と口を挟む。「そうそう、エゾの○○です」と思い出す。つまり彼は、昔日の成果の抽斗はいくつももっているが、その抽斗口の引鉄が欠けてしまっている。そうして弟子筋のカミサンがインデックスの役を果たし、引き出しを開ける手掛かりになっている。ただ、抽斗が開くと、とめどもなく次から次へと話しが飛び出す。植生の新しく入り込んできたものが、もう何年になるとか、だんだん標高が上がっているとか、気候変動に応じて、植物が懸命に山登りをしている様子が思い浮かぶ。これもまさに、地元ならではの知見情報。彼はこれまでに1000回以上も、このロープウェイを使って栂池自然公園を経めぐって来たらしいから、文字通り掌を指すように知っている。と同時に、「たしかこの辺りにあったのだが……」と消えてなくなったものの消息にも通じているわけである。
 
 二日目には、参加者の希望もあって、雨飾山の方へ向かった。登山口を入って二合目辺りまで足を運んで植物のあれやこれやを見て回るのだが、皆さん鳥観の達人たちとあって、耳が良い。ほんの小さな声を聞いて、周囲を見回し、双眼鏡を目に当てて、小鳥をみつける。目の周りの様子からニューナイスズメだといったり、コサメビタキだと見分けたり、声だけで「クロツグミだよ、きっと!」とみていると、道路に出てきて餌を啄ばみながら、右に左に動き回る。空を飛ぶワシタカをみて、一羽はハチクマ、ほかの二羽はサシバだとみてとる。そう口にすると、オーナーは「イレバも、ほらっ」と口を指さして笑う。
 
 鳥に関しては、やはり早朝の探鳥が見事であった。毎日4時半に起床し、5時から3時間、「朝探」を開始する。初日は落倉自然園、二日目はご近所のシエラリゾートホテルの近くと、場所を換える。やはり5時から7時ころまでの日が昇り暑くなる手前くらいが鳥にとっても活動の最適時間になる。前日声を聞いてはいたが目にすることができなかったのをふくめて、しっかりと姿を収める。3日間で47種。「この暑いのに、そんなに!」とオーナーが驚くほどであった。私も、スコープに入れてもらって、とっくりと見ることができた。
 
 三日目には、深空の田んぼと姫川の源流部とその脇の親海湿原を見て回る。白馬の山並みから滲み下ったり流れ下る細流が集まって水路を流れてくる。深空の田んぼには流れ下ってきた高山植物が、流れに沿って根を下ろし、少しずつ繁茂している。その気配をみせようというのがオーナーの狙い。行ってみると、との植物のあるところに、黄色の細いひもが張って立入禁止のようにしてある。「踏み込むな。保護しているぞ」と主張しているようであった。彼のオーナーは「こういうことをする人がいてくれると、(ほとんど名も知られていない)植物にも関心が向けられる」とうれしそうであった。
 
 毎日1万数千歩歩いている。暑い埼玉を逃れて涼しい白馬に来たつもりが、白馬も連日の30度越え。合宿をしている高校生や大学生が、早朝には声をあげてランニングをしている。昼間はグラウンドを使って競技をやっていたりする。タイムを計るコーチのような人たちが、道路のところどころに立って計測をしている。道路にはカラーコーンがいくつも置いてあって、ランナーと車との端境をきっちりとして、安全確保をしている。車の観光客もまた、家族を連れて涼しい高原へと向かっている。皆さん、暑い白馬を想定しておらず、涼を求めてどんどん標高を上げる。まるでアキアカネの避暑のような様子であった。
 
 何より驚いたのは、往復に使った「あずさ」の混みっぷり。あずさは、この四月から全席指定になった。「未指定席」という特急券もあるが、それは空席になったときだけランプがついて表示するからそこに座ってよいという指定料金と同じ自由席。往きも満席、帰りもところどころでは「赤ランプ」の空席も見られたが、甲府辺りから新宿へは、全席「緑ランプ」がついて空席がなくなった。たぶんその人たちが、車両と車輛のあいだの出入り口付近に立ったり座ったりして、乗っている。このころに山の帰りに使った「自由席」は、ひとつやふたつ空席を見つけることができた。デジタルで合理化がきっちり進んで、ある区間にはまったく空席が見られなくなった。梅雨明けの夏休みということもあろう。JR中央線はほくほくしているのかもしれないが、電車のなかもまた、熱気に満ちて、暑い空気が一杯であった。

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