mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

なんとも丁寧な事前診療

2022-07-02 07:20:08 | 日記
 半月後に手の平の手術を受ける。手の平はふつう漢字で「掌」と書くが、医師たちは「手掌」と呼んでいるようだ。
 診断名はデュピュイトラン拘縮。何とも日本語では発音しにくい病名が付いているが、この病気の発見者の名前というから、致し方ない。手掌の小指を動かす腱が引き攣って小指が曲がったままになる症状。もう七、八年も前に発症したが、傷みがあるわけでもなく、さしたる不都合はないと思ってきた。ただ、ロープなどを握ったときに力が入らない。小指が握力にかなり決定的な作用をしているのだと、人生七十何年ではじめて気づいた。でも、そうロープを使うような山歩きはしないと思って放置してきた。
 ところが、同じ症状が右の手掌にも発症した。3年くらい前か。こちらは、小指と薬指の両方が引き攣っている。むろん痛みはない。ま、いいか。寿命と日常生活に不都合が生じるのとどっちが先かだなというふうに考えて、放っておいた。だが去年末くらいか、左手で握った茶碗を落とすようなことがあった。湯飲みを取り落としたことが続いて、こりゃあちょっと困ったぞと思った。ちょうど整形外科のリハビリに通っていたから、医師に相談した。専門医が市立病院にいるから紹介状を書きましょうと応じてくれた。
 3月だったか、市立病院へ行ってみて貰う。手術をしましょうという。二ヶ月先だったので、こちらが「ぶらり遍路」を考えていたのとぶつかる。じゃあ、6月に来て、そこから細かい相談をしましょうとなった。手掌の手術なのに、レントゲンをとるだけでなく、心電図を取ったり血液検査、尿検査をしたり、事前検査が細かい。その結果を見て、心臓にちょっと不安があると分かり、同じ病院の循環器医に診察してもらって、もう一度相談しましょうとなった。これが、6月の半日で行われた。
 先月下旬にその診断を受けた。不整脈と右心房の肥大があるが、手掌の手術には支障がないと判断してくれた。だが、そのついでに、5年前の秋にこの循環器科でカテーテルを入れたことも記録に残っていて、私のかかちつけ医が循環器系の専門医だということも関知して、エコー検査を受けたことはあるか、それは折を見てやっておいた方が良いと手術とは別にアドバイス。是非と申し込むと、さかさかと手術などの日程を配慮して、7月末のエコー検査とその結果の診断の日程を入れてくれた。
 その後の、その同じ日の手術医の診察。手術間前日に入院、退院は様子を見なければならないから、週明けの退院を考えておけという。連休になっている。5泊6日にもなる。これは長い。と言うと、早ければ術後一泊して退院できるがねと、それ程こだわりをもっていない。なんだろう、この医師の感触は。「あなたの手掌の様子を見る限りでは、縫合が上手くいくと思いますが」と付け加えた。医師にそれ以上を聞いたわけではないが、推察するに、拘縮がひどく手の皮に弾力がないと縫合しても切開部に亀裂が残り、そこが自然治癒的に皮膚が形成されて行くには時間がかかるということのようだ。またそのときに医師は私の左手掌を細かく触って、「この拘縮は突然に起こる。親指と人差し指の間にも、ちょっと痼りがあるようだから、この際、ついでにみておきましょう」と、事もなげに言う。えい、もう、まな板の上の鯉だと観念した。
 さてその後が、何とも驚くほど丁寧であった。入院手続きの方法が整形外科の担当者から説明を受ける。会計係へ行く。まず入院事前相談の窓口へ行けと言われる。看護師が面接、これまでの入院歴、手術歴、日頃のかかりつけ医、服用薬、身支度、持ち物とか来院方法とか、付き添いはあるか、緊急時の連絡先などを聞かれ、確認する。その後に栄養士が面接。アレルギーとかいればとか固いものをかめるかなど子細をチェックする。その後事務職員が手続きの連帯保証人などについて説明を受けて終わった。朝9時の診療開始から、4時間が経っていた。
 手術なるものをしてみんとてするなりとどこかに書いたが、初めての手術。これほど事前のチェックが細かかったとは思いもよらなかった。手渡されたパンフレットには、「セカンドオピニオンが必要なときは、いつでも担当医にお話し下さい」とゴチックで大書してある。ぱっと見には「責任回避」の常態化かと思ったりするが、それは偏見というものか。システム化されているから煩わしさは感じないが、なんとも「ご念のはいったことで」と挨拶をしたような、丁寧な手続きであった。
 おおそうだ、それだけではない。入院のまえにコロナのPCR検査を受けて陰性でなくてはならない。その日程も聞き取って、検査医時刻、場所なども決まっていた。この病院の仕組みたるや見事というほかない。
 こうして、じつは来週初めからちょっと遠方へ遊びに行く予定も含めて、退院後の前後まで予定がビッシリと入ってしまった。暑い夏、酷暑に耐えながら亜熱帯化する日本の年寄りは、結構忙しない日々を送るのでした。


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