世界一周タビスト、かじえいせいの『旅が人生の大切なことを教えてくれた』 

世界一周、2度の離婚、事業の失敗、大地震を乗り越え、コロナ禍でもしぶとく生き抜く『老春時代』の処世術

愛すればこそ

2015年11月19日 | 100の力
恋をしている。

しばらく忘れていた感覚。

今まで愛という名に疲れていたのかもしれない。


もっと知りたいという気持ちがふつふつと沸き上がる。

一方、深く知りたくないと気持ちが入り交じる。


愛することへの安らぎににも似た安堵感。

失うことへの恐怖感。


打算抜きで、

助けたい、幸せにしたいという純粋な気持ちがあるだけ。

労わる気持ち。

慈しむ。

慈愛心。

親が子供をいつくしみ、かわいがるような、深い愛情が心の奥底に横たわる。


ただ一緒にいたいと思わせる女(ひと)。

いつまでも抱いていたい。


二人は、一日ベッドの中で抱き合って過ごした。

交わりが終わると女は安心しきったように男の胸にかをうずめて眠った。

そして、目覚めては何度も愛を確かめあった。

こんな情熱が残っていたことが信じられないくらい。


雨が上がるの見計らって二人は屋上へと上がっていった。

ワイングラスを持って。


誰もいない二人だけの空間。

周りのビルのネオンが電飾のように夜空を照らす。

さっきまでの激しい雨が嘘のように、

ときたま雲の合間から三日月が恥ずかしそうに顔をのぞかせる。


二人はグラスを持ったまま唇を交わした。

彼女の体が小刻みに震え今にも崩れ落ちそうだ。

男はしっかりと彼女の体を抱きかかえる。


この時期にしては寒さを感じないのはお互いが燃えてるせいなのだろうか。

どちらかともなく体をゆすり、スローなリズムを奏でる。


恍惚に浸りながらもグラスのワインをこぼさないように手先だけは冷静さの中に器用なバランスを保っている。

弛緩の中に一部緊張感が残った奇妙な感覚。

今までに味わったことがない甘味な空気が二人を包む。


部屋に戻ると、また生まれたままの姿で愛を確かめ合った。