デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

ピエロよ永遠に(クラウン)

2020-05-16 07:51:45 | 買った本・読んだ本
書名 「ピエロよ永遠に」
著者 岡部文明  出版社 朝文社 出版年 1990

まとめて日本語で書かれたクラウン関係の本を読もうということで、この本を本棚から取り出して机の上に置いておいたら、その二日後に岡部夫人から岡部さん逝去のお手紙が届いた。去年横浜であれだけ大規模な展覧会を行い、あれをひとつの契機に、岡部クラウンの世界がどう広がっていくのかとても楽しみにしていたのに、あまりにも早い死であった。
ただ夫人も手紙のなかで書いておられたように、岡部さんの絵は残る、それはこの本のタイトルのように永遠に残る。
この書は高校の時ラグビーの選手として国体に出場するために岐阜に遠征、ここで社会人チームの八幡製鉄と練習試合中、スクラムを組むときに頸椎を骨折するという大事故にあい、その後車椅子生活を余儀なくされた岡部さんが、幼い頃から親しんでいた絵を描くことにめざめ(父の勧めもあった)、そしてサーカスと出会い、クラウンに魅了され、クラウンの絵を描き始め、さらにクラウンやサーカスに出会うため欧米を旅し、世界中の名だたるクラウンと交流、ロシアのサーカス場で展覧会を開くまでの半生を綴ったものである。青春真っ只中の16歳に頸椎損傷のため車椅子を余儀なくされるという過酷な運命に対して、とにかくひたむきに前向きに臨もうとするその生き方に圧倒される。何度にもわたる手術、手や指もうごかなかったところからリハビリで少しずつ身体を動かし、高校に復学、そして絵を描こうと決めて、自分からわずかなつてを頼りに絵の先生に直訴、そこで絵を習うというなかにどれだけの苦闘があったかと思う。おそらく何度も挫けそうになったのではないかと思う。でもかつてフォワードの第一列として前に前に突き進んだように、とにかく前だけを見て進んだからこそ絵描きという道が開けたのだと思う。
クラウンに出会い、クラウンを描き続けるなかでもその前へ前への姿勢は変わらない。自ら公演後クラウンの楽屋を訪ね、スケッチをさせてもらう、その飽くなき精神には感嘆するしかない。うれしいのはクラウンたちがそうした岡部さんの突進を愛情こめて受けとっていることである。ポポフ、ククラチョーフ、ルー・ジャコプ、ガレッティとまさにきら星のようなクラウンたちが岡部さんと心の底から交流していることがよくわかる。去年の展覧会でもポポフやククラチョーフ、ディミトリー、そして自分にはとても懐かしいDDR動物大サーカスに出演していたクラウン親子の絵があった。クラウン、そしてサーカスを求めてのヨーロッパ3ヶ月の旅の記録に描かれているその交流記には心底感動させられた。さまざまな出会い、その中には奇跡としか思えないような出会いもあるが、それを生み出していったのは、岡部さんのクラウンに会いたい、クラウンを見たいという熱情なのだろう。
あらためてご冥福をお祈りしたい。
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