デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

シャンハイムーン

2010-02-23 13:01:43 | 観覧雑記帳
公演名 『シャンハイムーン』
作・井上ひさし 演出 丹野郁弓 出演 村井国夫、小島尚樹、梨本謙次郎、土屋良太、増子倭文江、有森也実

上海の内山書店に国民党の追求から逃れるために避難していた魯迅と妻、このふたりを必死で守ろうとする内山夫妻とふたりの日本人医師の物語である。現実の中国に対して非難しつづけ、中国の人々に勇気を与えていた魯迅をヒーローとするのではなく、いつもぎりぎりのところになると自分は逃げているのではないかという不信を抱き、自殺願望を抱えて生きる、ふつうの人間として描くところはまさに井上的、そしてこの作家を守るためにまさに命を賭ける4人の日本人たちのそれぞれの物語が織りこまれている。舞台が1930年代の上海というのも効いている。初演ということもあるのだろうが、台詞のまちがいがずいぶんあった、これはいままで見たこまつ座の芝居ではほとんど見られなかったこと。この芝居が一番盛り上がるのは、失語症になった魯迅が、自分が言おうということがいえず他の似た言葉にいい間違えるというシーン、魯迅に扮した村井がこのあたりを軽妙に演じてはいるのだが、次第に自分が現実から逃げようとすることがこの失語症の原因であることを知り、いいちがいをするなかで、段々失語症を克服していくところの転換のところがある意味この芝居の一番の見どころなのだが、転換するところがよく見えなかった。難しいところではあるが、井上らしいボードビル的なところと最もシリアスなところが混じり合う一番いいところで、演じ甲斐もあるところだろう、ここをやはりきっちりやってもらいたかったと思った。


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