デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

水族館劇場さすらい姉妹「反魂魔球」

2024-01-02 10:22:23 | 観覧雑記帳
観覧日 2024年1月1日
会場  横浜市寿町
桃山亡きあと、新生水族館劇場の真の意味でのスタートとなるさすらい姉妹の新作公演を見た。あれだけの男がいなくなったのだから、よれよれになってもしかたないとは思うが、役者たちもスタッフも懸命になって、新たな道を切り拓こうとしているそんな手応えを感じさせた公演だった。
まず前座を見て、びっくり、そしてうれしくなった。今回は休演という告知のあった看板女優のふたり、千代次と風兄宇内がなんとかピーナツに扮して、昭和歌謡をたっぷりと歌い、客席をあっためてくれたのだ。千代次がもっていた看板がなんとも素敵だったし、二番目に歌った曲「胸の振り子」が胸に沁みるいい曲だった。聞きほれてしまった。このふたりは桃山の書く台詞が染みついている(桃山もこのふたりにあわせて台詞を書いていたはず)ので、やはり新たな戯作者の言葉は肉体的に受け付けないのかもしれない。でも前座ピーナツはありなのだと思った。できればこまどり姉妹でいって欲しいが・・・まじめにワンマンショーが見たいと思った。

さて本編、千葉大二郎戯作・演出による「反魂魔球」、見応えのあった芝居になっていた。随所に、ライ患者療養所での差別や伊藤裕作へのイジリ、ムッソリーニの登場など桃山的なエッセンスも詰め込まれ、八犬伝とポンペイ爆発のエピソードをくっつけるなどなかなか破天荒な展開に、役者たちもその台詞がようやくなじんできた感じがした。そしてセットも水族館らしく、路上芝居でもいつも以上に凝ったものになっていた。特に火山の爆発の場面には驚かされた。音楽、特にラストの歌もよかった。ただ物語がなかったように思える。これは結構肝心な話なので、そのあたりのことをよく戯作者・演出家・役者たちで話合うといいのではないかと思う。例えば物語は北上川のような大河であり、さまざまなエピソード(白虎隊や野球、八犬伝、ライ患者療養所の話など)はその川にそそぐ支流のようなものではないかと思う。この大河がこの芝居には流れていなかったように思える。支流のエピソードについては千葉はかなり異彩を放つものを次々に生み出していると思う。ただそれが大河に注がれていないのだ。これから野戦攻城をつくるときに、これはもっとも大事な骨格となる部分で、それをつくること、それはもしかしたら千葉だけの問題ではなく、秋浜がもう少し関わっていくなかで、共同でつくられていくものではないかという気がした。まだお互い遠慮している部分があるのではないか。役者たちはずいぶんよく(うまくではなく、うまくなってはダメ)なってきたと思う。発せられる言葉が弾んでいた。すぐに新生水族館劇場の道筋は明らかにはならないであろう、いろいろ場数を踏みながら、それをやりながら、道を見つけていくしかないと思う。そのひとつの切り口が今回の公演でできたのではないだろうか。次作をとても期待している。

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