デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

わたしのシベリア体験から

2020-04-11 11:52:08 | 買った本・読んだ本
書名 「わたしのシベリア体験から」
著者 加藤九祚 出版社 関記念財団 出版年 2015

2014年2月石巻に90年ぶりの大雪が降った翌々日に、石巻若宮丸漂流民の会で、加藤九祚さんをお呼びして講演会を開いた。これが素晴らしい内容の講演で、大雪のあとで交通の便がよくないにも関わらず、集まった50人ほどの聴衆を感動させた。中には兵庫・京都から来られた方もいらした。前半がレザーノフの愛と死をテーマにしたものだったが、皆さんを感動させたのは、おもむろに語り始めた後半のご自分の半生を振り返るお話だった。石巻は加藤さんにとっては、陸軍の兵隊として入隊し、訓練を受けたところで、その時の思い出話からはじまり、シベリア時代の話、そしてシベリアから帰ってからの話と続いた。本を読むことの大切さ、学問はニューでなければという話が印象に残っている。その加藤さんがおもにシベリアでの体験を振り返ったブックレットのようなものを出されていたことを知り、出版した関記念財団に問い合わせをしたら、すぐに送ってくれた。加藤さんが出したいということで持ち込まれた企画だったという。内容は『高研』という雑誌に掲載されたインタビュー「シベリア抑留はフィールドワーク」と、『シベリア記』の4章にある「わたしのシベリア抑留記から」を朗読したものを採録したもので、聴衆からと加藤さんの質疑応答も掲載されている。それに『ユーラシア野帳』からシベリアにちなんだ短いエッセイを加えている。インタビューはご自身の人生を振り返って語ったもので、ご自身が朝鮮人であることからはじまり、宇部にいる兄を頼って日本に来てからの話をなさっている。NHKの教育テレビで未見ではあるが、韓国まで出かけて自分の生まれた町というか村まで行ったときに、この出自については明らかになさっているが、お父さんが熱心な読書家であったとかいろいろなエピソードを自由に語っている。あの石巻の講演会でもおっしゃっていたゲーテの言葉Des Leben ist gut(the life is good)の言葉の意味をかみしめること、それは「ほんとうに死ぬほどの苦労をして、あらゆる悲しみを生き抜いて、なお「人生はいい」と言うことにこそ意味がある」ということを90過ぎて言える加藤さんは素晴らしいとつくづく思う。加藤さんのこうした生き方は多くの人たちに勇気を与え、希望を与えてくれるはずだ、石巻での講演会の話やこのブックレットなども含めて一冊の本したらとてもいいと思うのだが、いかがなものであろうか?
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