ロシア文化の方舟

書名　「ロシア文化の方舟－ソ連崩壊から二十年」
編　野中進　三浦清美　ヴァレリー・グレチュコ　井上まどか
出版社　東洋書店　出版年　２０１１

ソ連崩壊から２０年ということでいろいろな記事は目にしながら、もうそんなになるんだと思ったのだが、まだまだこれからどうなるのかわからない、それがいまのロシアではなかろうか。下院選挙をめぐっての反プーチンデモが起こったというのを見ると、そんな気がしてくる。
そんないまのロシアの文化とその状況を多方面から若い研究者たちが書いた論文集。崩壊から２０年、インターネットの普及という要素が加わったことで、ロシア文化の多様性その根っこの深さというものを概観することができる。
ペレストロイカが言われた頃井桁氏が中心となって「ロシアンカルチャーウォッチング」みたいなタイトルの本が出て、束縛から解放されたロシア文化のさまざまな可能性があふれ出てきたさまを、同じように若い研究者が書いていたことを思い出す。あの時はまさにあふれでる文化の新しい潮流のほとばしりが感じられたのだが、今回のこの論集を読んでいると、さらに多様性に満ちたものになり、そしてさらに深化されているのだなという気がしてきた。
民族性の問題、宗教の問題というロシア精神の根っこになっている部分へのアプローチがいくつかあったが、より根源的なものに問いかけしていかないといけないということもあるのではないだろうか。
これからのロシア文化の大きなキーワードは消費文化とどう対峙するのかということなのかもしれない。そんなことも感じた。ソ連邦という枠内ではありえなかったこと、それが消費文化。それにどう対峙するのかというなかで宗教や民族的アイディンティティの問題が問われているのかもしれない。
概観するにはとても内容が詰まったいい本だと思うが、ひとつひとつの論文に切れ味があるものが少なかったのは、字数が限られていたからなのか。
建築の話とか写真の話はほとんど知らなかったので、そのあたりもっと突っ込んだものが読みたかったかも。
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ニコライ遭難

書名　「ニコライ遭難」
著者　吉村昭　　　出版社　岩波書店　　出版年　１９９３

前半は皇太子ニコライが長崎に到着して、大津で津田に襲撃されるまで、後半はこの犯人津田の裁判をめぐって、ロシアとの関係悪化を危惧した内閣が死刑を要求するのに対して、あくまでも司法にのっとり裁判しようとした大審院や判事たちとの対立、葛藤を描く。意外だったのは吉村さんがこの事件をとりあげたきっかけとしているのが、津田三蔵の死の周辺という網走で発行された地方誌に発表された記事だということ。こんな小さな論文に目を留めるというのもすごいけど、それをもとに調べ尽くしているのには完全に脱帽。長崎に着いてからのニコライの小さなエピソードのビビットな積み重ね、刺青を彫ったこと、一晩ロシア人相手の料理屋で女性と共に過ごしたことなどがあとあと生きてくる。
ニコライは長崎に来航したとき、予備知識としてレザーノフ長崎来航のことはインプットされていたのだろうか、ちょっとそんなことも気になった。

意志の弱い奴

ちょっと寝坊。電車に乗っていると同僚ふたりから人身事故のため遅れるというメール。こういうもんだよなあ。それでも１０分ぐらいの遅れで会社着。
朝日のタイアップ広告でカレ・キュリユーの招待を募集したのだが、そのハガキがとんでもなく来ている。いままでの中では最高なのではないか。
明後日申請しようと思っているリトル春のサーカスの査証申請用の書類をつくり、そのあとチケット関係の仕事。苦手とする書類作成にチケット。完璧に頭の中は疲労困憊。つくづく向いていないのだと思う。もちろんそんなこと言ってられないのは知っている、でもほんとうに向いていない。
昨日結構飲んだので、今日は休肝日と決めて、帰りノンアルコールビールを買って帰ったのに、晩飯が鍋とわかって、酒をお燗する自分がどんだけ情けないか。なんたる意志薄弱。
でも美味しく飲め食べられたのだから、それが一番だと思う。