書名 「ソ連・コミンテルンとスペイン内戦」
著者 島田顕 出版社 れんが書房新社 出版年 2011
桑野塾の優秀な塾生島田氏のたいへんな労作である。島田氏からメールをいただき私がずっと追いかけていた海を渡ったサーカス芸人パントシ・シマダが日本人ではなく朝鮮人だったと教えていただいてからのつき合いなのだが、ソ連時代のいままで闇の中に埋もれていた史料を丹念に掘り起こし、それを読解していくその研究のすすめかたは、師匠加藤哲郎譲りのバイタリティーがあって頼もしい限りである。
この著書も、そうした地道な史料分析からソ連から見たスペイン内戦の一面を描き出している。正月明けお屠蘇飲み過ぎのふやふやの頭には、かなりハードな読書となったが、そのバイタリティーにひきずられてしまった。
スペイン内戦にソ連がどう関わっていったかということを、ソ連ではないがソ連の意向を与しながら対応していたコミンテルンとの関係を軸に追いかけていく。こうした重い課題に、当時の会議録を中心に分析していくという重たい作業で正面からぶつかっている。このアプローチが自分にはとてもスリリングであった。
「インスタンツァ」というスターリンの側近たちのカビネットの密談の様子が、この地味な史料、誰がいついつの会議に出席していた、会議には誰々が何回出席していたとかということから、浮かびあがってくる。ここで出される決定が、スペイン内戦をどう左右していったのか。まだ結論まではだせないかもしれないが、この過程についてはかなり具体的に描き出されている。これにはぞくぞくとなった。そしてコミンテルの書記長で、粛清された日本人問題にも大きく関わってくるディミトロワの日記の引用も非常に効果的であった。
スペイン内戦に面していたソ連スターリン、そしてコミンテルンは、国内では粛清という問題の真っ只中にいた。この連関はかなり重要な問題を秘めていると思う。著者はその連関について確かになにかをつかんでいると思う。その連関を有機的に明らかにすることこれはとても大事なテーマである。
そしてここで分析しているさまざまな決定の過程が、戦後の東欧支配の政策と繋がっているということを、具体的に明らかにするなかで、失われたソ連時代の理想と破滅をきちんと分析することにもなるのではないだろうか。
ソ連を否定することは簡単だろう、この時代では。ただ平等という理念、平和という理念、富の分与という理念、その意義はいまもう一度再評価されるべきである。そのためにもスペイン内戦を共和国の敗北に導き、そして粛清を進行させていたこの時代のソ連、そして共産主義の理想形であったはずのコミンテルンの現状に真っ正面から対峙すること、これはとても大きな意義がある。
ふやけた頭に一撃を与えてくれた一書であった。
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著者 島田顕 出版社 れんが書房新社 出版年 2011
桑野塾の優秀な塾生島田氏のたいへんな労作である。島田氏からメールをいただき私がずっと追いかけていた海を渡ったサーカス芸人パントシ・シマダが日本人ではなく朝鮮人だったと教えていただいてからのつき合いなのだが、ソ連時代のいままで闇の中に埋もれていた史料を丹念に掘り起こし、それを読解していくその研究のすすめかたは、師匠加藤哲郎譲りのバイタリティーがあって頼もしい限りである。
この著書も、そうした地道な史料分析からソ連から見たスペイン内戦の一面を描き出している。正月明けお屠蘇飲み過ぎのふやふやの頭には、かなりハードな読書となったが、そのバイタリティーにひきずられてしまった。
スペイン内戦にソ連がどう関わっていったかということを、ソ連ではないがソ連の意向を与しながら対応していたコミンテルンとの関係を軸に追いかけていく。こうした重い課題に、当時の会議録を中心に分析していくという重たい作業で正面からぶつかっている。このアプローチが自分にはとてもスリリングであった。
「インスタンツァ」というスターリンの側近たちのカビネットの密談の様子が、この地味な史料、誰がいついつの会議に出席していた、会議には誰々が何回出席していたとかということから、浮かびあがってくる。ここで出される決定が、スペイン内戦をどう左右していったのか。まだ結論まではだせないかもしれないが、この過程についてはかなり具体的に描き出されている。これにはぞくぞくとなった。そしてコミンテルの書記長で、粛清された日本人問題にも大きく関わってくるディミトロワの日記の引用も非常に効果的であった。
スペイン内戦に面していたソ連スターリン、そしてコミンテルンは、国内では粛清という問題の真っ只中にいた。この連関はかなり重要な問題を秘めていると思う。著者はその連関について確かになにかをつかんでいると思う。その連関を有機的に明らかにすることこれはとても大事なテーマである。
そしてここで分析しているさまざまな決定の過程が、戦後の東欧支配の政策と繋がっているということを、具体的に明らかにするなかで、失われたソ連時代の理想と破滅をきちんと分析することにもなるのではないだろうか。
ソ連を否定することは簡単だろう、この時代では。ただ平等という理念、平和という理念、富の分与という理念、その意義はいまもう一度再評価されるべきである。そのためにもスペイン内戦を共和国の敗北に導き、そして粛清を進行させていたこの時代のソ連、そして共産主義の理想形であったはずのコミンテルンの現状に真っ正面から対峙すること、これはとても大きな意義がある。
ふやけた頭に一撃を与えてくれた一書であった。
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