Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

Waitakere, Adelaide ガンバへの挑戦権を競って…..

2008-12-16 | Aussie & Kiwi

12月11日、国立競技場で行われたFIFA Club World Cup 2008 の開幕戦。対戦カードは オセアニア地区代表ニュージーランドの Waitakere United vs ACL 準優勝のオーストラリア A-League の Adelaide United 。 ACL の準決勝戦が終わって以来、この試合を私は楽しみに待っていた。ニュージーランドにオーストラリア。共に商用でよく訪れる国だ。そしてその度に現地のサッカー事情に出来るだけ触れようとして来た。試合日が近づくにつれてわくわくして来た。専門誌を見ても“サッカージャーナリスト”と自負する輩達からは両チームの情報は伝わってこない。たまに漏れて来るものは全く的を得ていなかった。それがこの試合に“臨む”私を余計に嬉しくさせてくれた…..

国立競技場はJSL時代を彷彿させる空席の数。そんななか試合開始15分程度前に突然照明が落ちて FIFA Club World Cup の開幕セレモニーが始まった。“世界大会”のセレモニーにしては地味な感じがしたが….. この日の東京地方は前日に引き続き最高気温が18度程度にあがる“暖冬”。キックオフの午後7時45分頃になっても屋外にいながらあまり寒さは感じなかった。どちらかと言えば観戦し易い気候だった。

  

2年連続出場のWaitakere United は11月に開幕した New Zealand Football Championship では2勝1分で8チーム中2位につけている。来日前には中国に遠征し12月6日に地元浙江Greentown に Allan Pearce, Roy Krishna, Jeff Campbell のゴールで3-1 で勝ち翌日、当地からバスで3時間半揺られて上海空港に到着。空路日本にやって来た。

一方 ACLで鹿島、ガンバと対戦した事で日本でも馴染みが深くなって来たA-League の Adelaide United 。8月に開幕した今シーズンのA-League では現在首位を行く。12月5日にはアウェーでそれまで3連勝中だった Wellington Phoenix を 6-1 と粉砕して日本に乗り込んで来た。対戦相手の Waitakere United は11月15日に このWellington Phoenix に 0-7 で大敗してしまっている。それを見てもこの両者間の力の差が少なからず測り知れる。

Waitakere のスタメンは GK が188cm の Richard Gillesie 。CBは188cmの England 人でコーチ兼任の Neil Emblen と183cm の Jonathan Perry 。左サイドバックは England 人の Neil Sykes 。右サイドは Jason Rowly. Rowly 以外は昨年に引き続いてのスタメンで Sykes と Gillesie は2006年は Auckland City FC のメンバーとして岩元輝夫と共に来日。 Rowly は昨年ベンチにいて出番がなかっただけにうれしいスタメン出場だ。ボランチには 左が185cm の Jake Butler と右が 182cm の Christphere Bale 。Bale は昨年に続いてのスタメン。MFは左がウェールズ人の Paul Seaman 右に ニュージーランド代表の Allan Pearce 。そして FW がクロアチア人の Daniel Koprivicic と フィジーの Roy Krishana 。 Koprivicic は昨年はロスタイムから投入された。この試合では Krishana が1トップ気味で Koprivicic は少し下がり目。そしてMFはどちらか一人が常に下がり気味でDFラインの前にさらにもう一つDFラインがあるという感じであった。浙江Greentown 戦でスタメンだったニュージーランド北京五輪メンバーの Aaron Scott と 日系人選手ケイン高木こと Kayne Vincent はベンチスタートで、ソロモン諸島の英雄 Benjamin Totori そして北京五輪メンバーの Daniel Ellensohn もベンチスタート。 Totori は浙江Greentown戦も59分からの投入だった。最初は守って時期をみて攻撃的選手を...何とかニュージーランドのチームに1勝を...と目論む Christopher Milicich 監督のゲームプランが良く解かる布陣だ。ただ重鎮 Danny Hay はついに怪我が完治せずベンチに入れなかった。浙江Greentownでもプレーをしなかったがこの試合には出てこれるかと期待していたが……..

一方の Adelaide United は GK 186cm の Euginen Galekovic , CBは 197cm の Robert Cornthwaite と 183cm の Angelo Constanzo。 左サイドバックは Scott Jamieson 右サイドはオーストラリア U-19 代表の Daniel Mullen 。ボランチ的なポジションには右が Farbian Barbiero 左に Jason Spagnuolo 。 Spagnuolo は10月15日のワールドカップ予選カタール戦の代表合宿にも招集され来年のAsian Cup 予選ではメンバー入りするのではと期待される選手。ワントップにはブラジル人でFC Basel 所属時代には UEFA Cup出場経験もある Cristiano 。2列目には右に 主将の Travis Dodd 左に北京五輪メンバーの Kristian Sarkies。その後ろにゲームメーカーの Paul Reid がひかえる。 左サイドの Cassio, CB のSasa Ognenovski そして 攻撃的 MF の Diego が病気で欠場。その病だがインフルエンザだと思っていたのだがオーストラリア紙によるとそれは“ヴィールス性”のものらしく同じ病気でかつての Socceroos でワールドカップ予選にも出場した Paul Agostino が来日前に同じ病で来日出来なかった事からオーストラリアで流行していたインフルエンザかもしれない。私も2度貰った事がある……  Paul Agostino の欠場は残念だった。
Adelaide United に就いては日本のマスコミ、専門家は判で押した様にフィジカルと体格ばかり強調するがこのチームは“オーストラリアらしくない”ショートパスを繋いだりロングパスでサイドチェンジを行ったりするチーム。9月にアデレードで行われたACL準々決勝の鹿島戦はロング、ショートパスを繋ぐ戦術でスコアーこそ 1-0 だったが決定機の数も多く演出し後にJリーグ王者となった鹿島を圧倒した。 

  

試合は開始から自力に勝る Adelaide が押しまくる展開。 Waitakere は昨年立ち上がり5分で2失点したせいか7人から8人でラインを引いて守備をするのでAdelaide の中盤、右から Spagnuolo, 左から Barbiero が、両サイドバックの Jamieson, Mullen も高い位置にポジションをとれる。そして最前線ではCristiano を真ん中に右に Dadd, 左に Sarkies とほぼ3トップの様な形で前線からプレスを掛ける。
それでも Waitakere は CB のEmblen と Perry が体格を使ってしっかりとAdelaide 攻撃陣を抑え、シュートが枠に飛んでも GK Gillesie が素晴らしい反応を披露する。11分44秒と18分25秒には共に Jamieson のミドルシュートをファインセーブで凌いだ。そして周りの観客達は Gillesie のファインセーブを楽しみにする様な雰囲気になる。それに応えて? Adelaide は攻撃の手を緩めない。26分40秒にはFKのチャンスから Barbiero が上げたクロスに Cristiano がフリーでヘッドを放つがこれはクロスバーを越えて行った。 

Waitakere はラインコントロールが遅いのでオフサイドを取れない。そして攻撃に転じても最前線とは完全に分断されるので全くに Krishna と Koprivicic のドリブル頼り。DF陣はなるべく1対1の状態を避け、タッチライン、ゴールラインにボールを出そうとする。開始後しばらくは緊張からかわざわざ蹴りだして相手ボールにしてしまうシーンも何度かありCKを献上する事も。最も Waitakere はオフサイドを取る気などさっぱり無いのかも知れない。最終ラインを引いて人を集めて泥臭く相手攻撃に対抗する、古典的なそのやりかたにむしろ新鮮味を感じる。
その Waitakere が先制ゴールを挙げるのだからサッカーは解からない。32分35秒 Krishna が右サイドで倒されて得たFKをPearce がゴール前に蹴り込む。そこに Seaman が飛び込み Adelaide GK の Galekovic と競り合う。 Galekovic は一旦はボールを掴むがファンブルをして落球するとそのこぼれた所を Seaman が体を反転させ Reid がマークに入り前に Adelaide ゴールに蹴り込んだ。 このプレー、キーパーチャージか?とも思ったがアルジェリア人の Benouza主審はセンターサークルを指しゴールインを認めた。 Adelaide の選手達もまったく抗議はしなかった。
ニュージーランドのチームが自ら挙げた歴史的なゴールであった。 そしてこれでゲームが俄然面白くなると確信した。先制ゴールを許した Adelaide は Dodd を最前線に上げ Cristiano と2トップを Sarkies が左に Barbiero が右に開き Reid がやや下がり Spagnuolo と共に中に入り押し上げる。失点直後には連続でCKのチャンスを掴むなど更に総攻撃をかける。Waitakere としても少しでも長くリードは保ちたい、見ているこちらもその方が試合が面白い….と考えていた38分5秒、CKをファーサイドでフリーで待ち構えていた Mullen が見事なヘッドでねじ込み Adelaide が同点に追い付いた。

  


これまで右からのCKは Jamieson が蹴っていたのだがここは Reid が蹴りファーサイドに上げたのが良かった。そしてこのCKはゴールライン付近でボールを取り合いしていた Mullen が相手の Perry の足に上手く当ててゴールに出して取ったもの。このあたりはプロとアマチュアの差か?? 
追い付かれた Waitakere は42分56秒、 Sykes が Dodd に倒されて得たFKを今度は左から Pearce がゴール前に入れるとまたも Seaman が飛び込むが肩に当たったボールはゴール枠を捉えられなかった。終了直前に Adelaide は波状攻撃を見せたが最後の Cornthwaite のシュートは Gillesie がファインセーブでストップ。大歓声が上がりその余韻が残るなか前半が終わった。ベンチに引き揚げる GK Gillesie の背中に拍手が送られた。

  

ハーフタイム中に後半も Adelaide が一方的に攻めるだろうと見込んで座席を反対側に移す事にした。国立競技場の通路には陸上競技用のタータンが敷かれている。学生時代にインカレに出場した時はこの通路を走ってアップをしたけど今でもそうなのかなぁ….  客席への入口では係員が丹念にチケットのチェックをしている最安価のカテゴリー4でも全席指定だけど入口でチケットを見せて“カテゴリー4だから良いでしょ?”と半ば強引に頼むと係りの女の子は素直に“どうぞ”と言ってくれた。 やっぱり女の子は素直が一番??
こちら “ Adelaide “ 側はオーストラリアからやって来たという熱心なサポーターと話が出来た。日本にはあと2週間滞在する予定とか。あと3か月早ければ為替が 40% 近く良かったのに….てな話や A-League の話を10分程度だけどできた事は嬉しかった。


後半は両軍ともにメンバーチェンジは無かった。Waitakere は自信を持ったのか開始5分で3度ほど相手ゴール付近まで攻め込む。49分15秒には Koprivicic のドリブル突破から送られたスルーパスに Krishna が走り込むがGK Galekovic がキャッチ。観客席から歓声が上がる。2列目から2トップに縦パスが連続して通った。しかし総じてゴール前に攻めん込んでくるのは Adelaide 。53分にはゴールまで細かいパスが通る。Spagnuolo から Sarkies , Cristiano と繋がり一旦は Emblen がクリアーするも Seaman に当たって Barbiero の前に転がりそのまま放たれたショットはまたも Gillesie がストップ。ゴールがなかなか決まらない Adelaide ベンチは 57分Spagnuolo を下げてブラジル人の Alemao を投入し2列目の左サイドに据える。59分44秒にはゴール正面で得たFKを Sarkies が直接狙うがクロスバーをわずかに越えた。

  

劣勢の Waitakere は66分59秒に Koprivcic を下げてケイン高木こと Kayne Vincent を投入し前線の運動量を強化する。 そのVincent は投入された直後に Jamieson に激しいタックルを入れチームに活を入れる。 
すると Adelaide ベンチは70分 Sarkies を下げて 186 cm の Robert Younis を入れて2列目右に。Younis は登場直後に Alemao のスルーパスから抜け出し Emblen をかわしてシュートを放ちCKを得る。そのCKから Mullen がヘッドを放つが惜しくもゴール枠を外す。その直後、Waitakere はこの試合両軍通じてベストといって良いほど素晴らしい攻撃を披露する。 Krishna がドリブルで前線に上がり右の Seamanにボールを出すがSeaman はこのボールをスルー。流れたボールに Pearce が走り込むが後ろから Jamieson がタックルを入れボールはゴールラインを割る。後ろからのチャージなのでPK かと思われたが Benouza主審はCKを与えただけであった。後にリプレーを見ると Jamieson の足はしっかりとボールを捉えていた。しかしこのプレーで Pearce は足を痛め Primenta との交替を余儀なくされ75分にベンチに下がった。無念そうな表情が映し出されると少し気の毒に思った。
Waitakere は時間を追って運動量が落ちて相手をファールで止めざるを得なくなりFKを与えるシーンが続く様になる。このスタミナの持続こそプロとアマの差だったのだろう。 そのFKが Adelaide に逆転ゴールをもたらす。82分8秒 ゴール正面やや左でFK を貰うと Reid の入れたFKに Tavias Dodd が頭でコースを変えるとボールはそのまま Waitakere ゴールに飛び込んだ。

  

ファインセーブを連発していた GK Gillesie もこの弾道は防げなかった。
スクリーンには Vidmar 監督の安心した表情が映しだされる。本来ならもっとリードすべき相手だったか…….

しかし時間はまだ10分程度残っていた。逆転を喫した直後の 83分52 秒についにソロモン諸島の英雄 Benjamin Totori が Seaman に替って投入された。できればリードされる前に投入して欲しかったが…… これでトップは左が Totori, 右が Krishna の2トップに。更に左サイドから Koprivicic 右サイドに Vincent が張る。89分17秒にはKrishna のドリブルシュートが GK Galekovic にセーブされる。ロスタイムは3分と表示され92分15秒には Krishna がドリブルで右サイドから切れ込み Jamieson がマークに入る前にセンタリングを入れる。そこに Vincent が飛び込むが寸でのところでConstanzo がカバーにはいる。ボールはゴールラインを割りBenouza主審はコーナーを指す。最後の Waitakere のチャンスに場内からは歓声が上がる。エリア内にはフィールド選手が殆ど全て入って来る。しかしゴール前に入れられたCKに合わせた Totori のヘッドは大きく枠を外れた。頭を抱える Totori 。真後ろにいた Emblen に撃たせた方が良かったか……..

  

そして試合終了のホイッスルが鳴った。 何人かの白色ユニフォームの Waitakere の選手達が座り込んでしまった。 
主力選手3人を欠く Adelaide に勝てるチャンスはあったと思ったのだろう。それだけに Danny Hay の欠場は痛かったか………

勝った Adelaide United はガンバとManchester United への挑戦権を巡って三度対決する事に。敗れた Waitakere は帰国の途に就くのだろうがピッチを去る選手達に場内から温かい拍手が送られる。私も精一杯の拍手を送った。

 

サッカーは世界中にある。今のサッカージャーナリスト、ライターと称する人達の殆どは単なる“欧州フォロアー”に過ぎない。しかし日本はアジア、オセアニアを勝ち抜いて初めて欧州勢に挑戦できるのだ。次に New Zealand に行った時は Waitakere の試合を観戦してみようかな…… そんな事を帰途に着く道中考えていた。 

そして Adelaideの次のゲームも楽しみでしかたがなかった。 翌日ある専門紙に掲載されたこの試合の論評を読んだ。 Adelaide United はガンバの敵にあらずと言った内容だ。しかしこの試合の Adelaide のメンバーにはレギュラー3選手が含まれていない。私は ACLの試合の様には簡単にいかないと思った。 

   

 



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2 コメント

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CWC (鍼灸)
2008-12-18 01:48:35
やはり行っておられましたか。
僕もこの試合行ってました。
26番ゲートの前方C列なので、最前列の席でした。
写真の感じだとコンティさんとかなり近くでしたね。

試合についてはイラつく場面も多かったですね、特に決定力に関しては(苦笑)。
ワイタケレのGKが素晴らしく当たってたというのもありますが。
一方、ガレコビッチは明らかに不調でした。

僕も試合後、自分のアデレードのマフラーを見せながら、アデレードのサポに声をかけ、挨拶程度ですが話をしました。
「ジテとジェイミーソンのファンだ」と言ったところ、「It's great!」と驚かれました。


ところで2月の横浜のオーストラリア戦ですが、発売から2日で完売したとのこと。
僕は発売日忘れてました。情けない。
最近、日本代表も観客動員落ちてるから、まさかすぐ売り切れることはないだろうと思ってましたが、予選最大のカードですからね。
アウエーまで売り切れてるのには驚きました。
恐らくアウエーエリアを買ったのはほとんど日本のサポだと思います。
いわば「甲子園のビジターゾーン状態」(甲子園はビジターゾーンにもホームのファンが押しかけます)でしょうか。
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Club World Cup (Mr コンティ)
2008-12-30 13:59:49
鍼灸様

返事が遅くなって済みません。11月から本当に忙しくてたまりませんでした....
私は前半24番ゲート近くの席で観ました。こういう試合もなかなか観戦する機会がないので試合前は本当に楽しみでした。後半は反対側の方で観戦しました。試合中ずっと熱心な Adeliade のサポーター達と話ができて嬉しかったです。ガンバ戦はもっと来ていたかも知れなかったですね。
2月のオーストラリア戦。どうなるでしょうか?
Jリーグがシーズンオフ中の試合というのが心配です。なぁ Socceroos もかなり脅威を感じているみたいですが。この試合が今の日本の世界の中での物差しとなるでしょう。
来年もよろしくお願いいたします。
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