Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

夏の甲子園もうすぐ開幕。だけど県大会も面白かった。

2013-08-04 | Weblog

最終回。スコアは 1-16 。どう考えても、奇跡が起こっても逆転は考えられない。 それでもスタンドからは熱心な声援が送られる。前の打席でヒットを放っている中村航太君が先頭打者のボックスに入る。たちまち 0-2 と追い込まれるが3球目を打ち返した打球はショート竹村君の頭上を越えて左翼手服部君の前に落ちた。マウンド上の小島君が先頭打者を出すのはこの試合4回目だ。川越東ベンチはここで途中からセンターに入っていた2年生の堀川君に替わって背番号17番、3年生の関口君を代打に送る。 今大会3度目の打席だ。 初球のインコースのやや低めをうまく上から叩いて続く。 打った瞬間に手応えを感じたのだろう、関口君は走り出した途端に右手を高く上げた。代打で出た高校生活最後の打席で小島君からヒットを放ち、良い思い出になっただろう。そして人生の支えになるに違い無い…こう思った。 



川越東ベンチは更に2塁走者中村に3塁ベースコーチをしていた3年生の兵頭君を代走に送り、打席には8回からマウンドに上がったエースナンバーを付けた3年生の渡邉大樹君に3年生の染野君を代打に送る。 4番手として登板した背番号1番の渡邉大樹君は2イニングを無失点に抑えた。 
染野君は初球を引っ張るもサード高田君の正面。ベースを踏んでセカンド津田君に送球しファーストの木暮君に送られる。トリプルプレー、というよりもゲームセットと思ったけど間一髪染野君の脚が早かく2死にはなったけどランナーが一人残った。
大量リードされ、先頭打者が出塁したのでじっくりと投球を見るという手もあったのだけど、代打で出た3年生の関口、染野の両選手の初球打ちはここでは攻められないなぁ~と思った。 
そこが高校野球なのかもしれない。

打順が1番に戻り前の打席でライト前ヒットを打っている2年生の渡部君が打席に入り、ここも1,2塁間を抜き小島君からこの試合2本目のヒットを奪った。 浦和学院の小島君との対戦は来年も続く。より強くリベンジを誓うのは2安打を喫した小島君か、決勝戦で勝てなかった渡部君だろうか….
2死ながらランナーを二人塁上に置きこの試合最初のヒットを初回に放った3年生の高梨君が打席に入る。最後の打者になりたくないだろう、次の3年生の小寺君に回したいだろう、それともまだ出番がないベンチにいる3年生に act bat のチャンスを創りたいか…. しかし0-1 から打った打球はセカンド津田君の前に転がり万事休す。 浦和学院が春夏連覇に向けて1歩前進した。

決勝戦がこんなに大差がつくとは想像できなかったなぁ~。
やはり準決勝戦が一番の山場だったんだろうなあ~…….

7月下旬、取引先の方から携帯に連絡が入った。“土曜日、大宮に行かれますか?” その方は聖望学園野球部OB。現役時代は残念ながら甲子園の土を踏む事は出来なかったけど御嬢さんがマネージャーとして甲子園にチームと帯同し、ベンチ入りをされたらしい。 事実上の決勝戦になるかもしれないですね、ご一緒させてくださいと答えた。 でも選抜優勝を果たした浦和学院相手に自信は無かったらしい……

7月26日、この日も埼玉県は暑かった。 運動公園内に入り県営大宮球技場に近づくにつれて人通りが多くなる。そして球場の切符売り場の前は長蛇の列。 さすが準決勝戦ともなると違うなぁ、と思う。さらに真夏の球宴という大会プログラムも販売されていた。 




球場内に入ると観客席はほぼ満席。 ここでも準決勝戦と2回戦の違いを感じさせられる。 取引先のKさんに電話を入れると放送席の横の日陰のところで立ってみているとのことでそこに向かう。 球場全体が見渡せ、直射日光も避けられるのでなかなかいい場所だった。 
“スポーツ御宅”の私はさっそく両チームのこれまでの戦績をまとめたものを見せる。まぁ仕事だとここまで下調べなんかしないけど、好きなことは…

“やっぱり、寺田、田畑はよく打っていますね~。“前の市立川越戦で本塁打を放った二人を指して言った。 
そしてこの日の先発は準々決勝で完投した川畑君でなくて長谷川君だった。それをKさんに尋ねてみると
”小島は対浦学戦連敗中なんでよ。“と教えて貰った。 昨年の選手権埼玉県大会決勝戦、そして昨年埼玉県秋季大会準決勝でも両校は対決しいずれも浦和学院が勝利を収めている。 その時の聖望学園の先発投手は小島君。いつも全国大会一歩手前でたちはだかった浦和学院相手に今年こそとの思いは小島君をはじめ聖望の選手達は強かっただろう。
ベンチ入りメンバーの中でもサードの中村郁人君以外はみな3年生との事だった。
対する浦和学院はベンチ入りメンバー20人のうち1,2年生が3人ずつ入っている。
投手の小島君もその一人だ。

4回戦の途中まで出場していた1塁手の案随君に就いてKさんに尋ねた。草加西戦で怪我をしたらしい。以降は背番号17番の高橋君が1塁を守っている。 今のメンバーの特徴は地元“飯能市”の中学から4選手が入っている事らしい。他にも埼玉県下から9人。東京都から練馬、東村山の沿線組2人を含めて4人と強豪私学ながら“地元色”が強いメンバー構成だった。ただ投手の川畑君は滋賀県出身だけど。 
浦和学院は12人が県外選手。まぁ8人の埼玉県下選手の中でも朝霞、上尾、富士宮、東浦和といった通学県内の選手もいるけど…..

ここまでの5試合、聖望学園はのべ15選手を起用しているけど浦和学院は12人。
“けっこう浦学はがちがちで来ていますね。”とはKさんの印象。 聖望学園は3年生ばかりだからかなぁ…..
浦和学院の中心選手達は当然の様に選抜優勝メンバー。 贄君が怪我でスタメンから外れているけど、彼の穴埋めを担うのは何と1年生の津田君だ。 半年前まで中学生だった選手が….と感心してしまった。

今年の選抜では浦和学院が優勝を果たしたけど、平成20年は聖望学園が準優勝を果たしている。その年の選手権は第90回記念大会だったので埼玉県からは2校出場枠が与えられたけど、出場を果たしたのは浦和学院と本庄第一。

平成11年聖望学園が選手権に初出場を果たした時の埼玉県大会の決勝戦の相手が既に4回選手権に出場経験があった浦和学院だった。 そしてこの時の聖望学園に現在阪神タイガースの中心選手鳥谷がいた。両校は本当に良いライバルなんだなぁと改めて感じた。

先攻は浦和学院。準決勝の埼玉平成戦では2安打を放った先頭打者の竹村君がアンダースローの長谷川君から 3-2 までボールをよく見て右翼前にヒットを放ち出塁する。続く服部君は蕨戦から2番に入っている。
早くもバントの構えを見せるが1-2からバントを失敗し 2-2 後の5球目、エンドランがかかっていたのが外角低めを空振りし、スタートを切っていた竹村君が2塁で刺され、無死1塁から2死走者なしとなってしまった。 
背番号12番の捕手の岩本君が取ってから良い送球をセカンドに送った。 元々1塁手だったらしい。聖母学園としてはここは3人で終わらせたかっただろうけど平成埼玉戦では4打席無安打だった主将の3番山根君が 0-2 からライト前に打ち返してまたもランナーを出した。しかし4番高田君が3-2 から高めのストレートで空振り三振に討ち取られ初回先制は成らなかった。4番の高田君、蕨戦、埼玉平成戦とヒットが無いのが気になった。だけどさすが浦和学院打線は長谷川君に初回から20球投げさせた。

後攻めの聖望学園、マウンド上には浦和学院エースの小島君が。これまで連敗中の小島君相手に先制が奪えるか?準々決勝までのチーム打率は 0.348 これは浦和学院の 0.301 を上回ってはいるが。 

先頭の清水君が初球を打ってセカンドゴロに打ち取られ、2番笠原君が1-2 からレフト前に打ち返し出塁する。 これで笠原君は今大会6試合連続ヒットだ。 
“彼の構えを見ていると本当にぶっ飛ばしそうですね。”とKさんに話す。空振りが2回あったけど当たれば飛んでいきそうな空振りだった。 Kさんは“笠原はものすごいパワーヒッターで体格はすごくて筋肉隆々”と教えて貰った。
元々投手として入学したらしいけどバッティングを買われて野手に転向したとのこと。やはり、良い選手はみなエースで4番かぁ、と思った。そして笠原君も地元飯能出身の選手との事であった。

初回の小島君は笠原君にヒットを許したことに動揺したのか前日本塁打を打っている続く寺田君にはストライクが入らず 3-1からの4球目が高く外れ歩かせてしまう。 捕手の西川君がマウンドにより内野陣が集まる。そして浦和学院ベンチは早くも背番号9番、3年生の久保君を伝令に走らせる。

打席には4番中村君が入る。ここまで19打数7安打 .368 であるが前の市立川越戦はノーヒットだ。“送りますか?撃たせますかねぁ” Kさんは少し首をひねった。 初球、2球目とバントの構えから 1-1 となり3球目はバットを思い切り振り、打球は緩い投手ゴロになり結果的にランナーを送ったことになった。
2死ながら2,3塁となり打席には、 5番高橋君が入る。栄北戦、市立川越戦とまだヒットが無い。結局ショートゴロ守備妨害に倒れ絶好機を逸した。 2塁走者の寺田君とショート竹村君が交錯したけど、聖望学園にとってはちょっと不運な打球に見えた。

2回表、浦和学院は先頭の木暮君が 1-1 からライトにライナーのヒットを放つ。 6番斉藤君がボックスに入り、一旦長谷川君がセットポジションにはいろうとするとベンチからタイムが掛かった。 “替えるのかな? 替えますね。” K さんが呟く。エースの川畑君が早くも登板となった。“長谷川君はベンチに下がりましたね。” “川畑で大丈夫かな?浦学に勝っていないから。” K さんが少し不安顔になる。 しかし川畑君は後続を3人で打ち取る。圧巻は斉藤君のバントを投手フライに打ち取ったストレートだった。

浦和学院が2回まで得点を上げられなかったのは今大会初めてだった。

2回裏、マウンド上の小島君はまだ調子が上がらないのか先頭打者の田畑君に 1-2 からの外角高目をライトに運ばれる。 
田畑君は市立川越戦では本塁打を放っている。“彼は色々な大学が狙っているんですよ。” Kさんがそういう逸材だと教えてくれた。 7番の吉田君は初球をきちんとバントを決めて田畑君を2塁に送る。だけどこのバント処理、ちょっと小島君とサードの高田君がお見合いをしそうで危なかった。小島君は後続の岩本君と川畑君を打ち取り得点を許さなかった。 しかしけっこうきつい打球を飛ばされていた。 

両校序盤は無得点ながらもランナーをスコアリングポジションに進めていたけど、打者が2巡目になると途端にヒットが出なくなった。
長谷川君が3,4回と死球でランナーを出すも内野陣が共に併殺打で後続を断てば、小島君はストレートが冴えて来て3回から6途中まで打者12人に対し無安打5三振の快投。 サウスポーが右打者に有効な“クロスファイヤー”が効果的に決まっていた。

そして外野席が解放された。



“これは次の1点が試合を左右しますかね。“ ”その1点が試合を動かすでしょうね。“と言う会話をKさんと交わすほどだった。 
6回裏聖望学園の攻撃は2死から4番中村君、5番高橋君が連打を放つ。そして中村君が3塁に進む。 高橋君は落ちる球を見逃してカーブをうまくレフト前に運んだ。その前にベンチから何やら指示が出たけどそのことだったのかなぁ?3塁にランナーを進めるのは3度目。 そして田畑君がバッターボックスに入った。
“ここは見どころですね。”   だけど軍配は小島君に。初球、2球目とストレートでストライクを取り、3球目外角の変化球に田畑君はバットが付いて行けず空振り三振に切って取った。

7回表、今度は浦和学院が好機を掴む。川畑君が先頭の高田君を歩かせると続く木暮君が初球送りバントを決め高田君が2塁に進む。 2回以来の2塁走者となったが川畑君が踏ん張る。 後続の斉藤君はストレートで、西川君は変化球でそれぞれ三振を奪い得点を許さなかった。 川畑君は斉藤君を迎える前にスパイクの紐を結びなおすなどして“主導権”を握り続けたのは見事だった。 

8回表、またも聖望学園がチャンスを掴む。 先頭の左打者吉田君が初球、内角高めのストレートを叩くと打球はぐんぐん伸びでライト斉藤君の頭を越えてワンバウンドでフェンスに。 吉田君の見事なスタンディングダブルであった。 そして8番岩本君が初球、送りバントを決めて1死3塁とチャンスを広げ打席に投手川畑君を迎えた。 最初の打席では打ち取られたがセカンドライナーの打球は鋭かった。 
“スクイズありますかねぇ?” K さんは“小島君から点を取るのは難しいから….”と言われた。

小島君はサウスポー。3塁走者の動きは見えない。 浦学バッテリーはバントの構えから入る川畑君に初球は内角にボール球。2球目はアウトローにストレートでストライク。 よくこの場面、アウトローでストライクを取れたなと思った。3球目は釣り玉の様な高いストレートだけど川畑君は振らない。4球目のストレートを川畑君は強振して1塁後方にファール。これで2ストライクになりスクイズはやりにくくなった。そして5球目、バントの構えから強振すると鋭い打球が快音を残して飛ぶが前進守備のセカンド津田君の正面に。 観客席から溜息が漏れた。 



2死となったがまだランナーは3塁にいる。そして打順が1番の清水君に戻る。 清水君はこの日そして市立川越戦でもヒットが出ていない。
小島君の初球、ストレートはファール、2球目もストレートで空振り、たちまち追い込まれる。サードランナーの吉田君がスパイクの紐を結びなおして間を開ける。 3球目アウトコースのスライダーは見送り、4球目インコースの変化球も見送った。 浦学バッテリーとしては振って欲しかっただろう。 そして5球目。インコースのストレートを強振すると打球は詰まってセカンドの前に落ちる。 津田君がうまくさばいて何とかピンチを凌いだ。 清水君必死のヘッドスライディングだったんだけど…..

8回表、今度は打者小島君がレフト前に弾き返し2回以来のヒットで出塁し、続く津田君の送りバントで2塁に進むが後続を川畑君に討ち取られれば、8回裏は小島君が2番から始まる聖望打線を三者凡退に打ち取り9回表を迎えた。

3番の山根君から始まる好打順。広島出身の山根君の母親がスタンドで応援している事を後で知った。その山根君は 0-1 から川畑君の 101球目をレフト前に打ち返し出塁をすると4番高田君をバッターボックスに迎える。 しかしここは手堅く送りバント。高田君は1度は失敗するも 1-1 から送りバントを決め山根君を2塁に送る。続く木暮君は最初はライト前ヒットを放っているが投手が川畑君に替わってからは、死球、送りバントだ。 2-1 から引っ張った打球は3塁線沿いに飛ぶがサード中村君の正面に。ランナーは進めずアウトカウントが1つ増えた。 2死2塁になり聖望ベンチは背番号2番、中島君を伝令に走らせる。 マウンド上に輪が出来る。 この回を凌げば9回裏サヨナラがあるかもしれない、後攻めが有利になってくる。

次打者の斉藤君はこの試合まだヒットが無い。初球は外に逃げる変化球をバットに当ててファールにした。そして2球目の構えに入るが2塁に疑投をして間を取る。浦和学院の応援団のボルテージが上がる。そして小島君が投げ込んだインコースの低めを斉藤君がしばき上げる様にバットを振ると打球は右中間に深々と飛ぶ。 
山根君が生還し待望の“先制点”が最終回に入った。

私が好きだった往年のジャイアンツとロッテで活躍した山本功司のバッティングを見ているみたいだった。

殊勲の斉藤君が3塁塁上でガッツポーズを取る。 浦和学院応援席は狂喜乱舞している。 隣のKさんが天を仰いだ。






“まだわかりませんよ。3塁ランナーをホームインさせないようにしないと。1点ではわかりませんよ。”と声を掛けた。
川畑君は次の西川君をショートゴロに打ち取り追加点を許さなかったけど、本当の痛恨の1球と感じただろうなぁ。

走って右翼の守備に就いた殊勲の斉藤君に浦和学院応援団から“リョースケ~!リョースケ~!”と歓声が飛ぶ。“プロ野球みたいですねと”Kさんに言うと苦笑いを。 “小島はまた浦学に負けるんですか…” いやいや、まだわかりませんよ….といったけど。

9回裏の聖望学園は前の打席でヒットを打った先頭の高橋君がセカンドフライに打ち取られ、続く田畑君が死球で出塁する。 そして前の打席で2塁打を放った吉田君がボックスに入る。吉田君はバントの構えからヒッティングに切り替えるが小島君はストレートで 1-2 と追い込む。それでも吉田君はバントの構えを崩さない。 
しかし 2-2 から小島君の投球を外野に飛ばすが服部君が左に走って打球を掴む。
2死となるがまだランナーは2塁に残っている。この日ノーヒットの岩本君に巡るがそのままボックスに。代打はいないのかなぁ…そしてマウンド上には内野陣が集まった。伝令も走ったのかな....

初球、2球目とアウトコースにストレートでストライクを取る。3球目の変化球はバットに当てる。そして最後は高めのストレートで空振りを誘い激闘に終止符が打たれた。 

“残念でしたね。” “いえいえ。お付き合いいただいてありがとうございました。” こう言い残してKさんは立ち去った。おそらくOB会の人達とこれから….. “月曜日に注文書を入れますから。” こういったときは仕事の顔に少し戻ったみたいだった。

グラウンドでは森監督のインタビューが始まっていた。 川畑君の投球内容をしっかりと称えていた。あぁ紳士なんだなぁと感じた。



暑さで第二試合を観戦する元気は無く、すぐに帰途に就いた。家に帰り、決勝戦の相手は川越東になったことを知った。

川越東かぁ…よく打つから今度は打線が奮起しないとなぁ, と思った。 そして試合内容はその通りになった。

決勝戦はテレビで見た。 表彰式を見ながら、甲子園だったら準優勝おめでとうだけど、県大会だったら優勝と準優勝は天と地ほどの差があるんだなぁ…..と思った。

だけどこれだけは言える。 これからの人生がもっと大事だ。 まだまだいろいろな事がある。 あの年の夏が良かったなぁ~と永遠に振り返るような人生にするなよ… と。



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