Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

バンコックにてロンドン世代発進 !!

2007-11-21 | 五輪 U-20, U-17

五輪チームが北京行きに大きく1歩前進した地、ハノイからヴェトナム航空機でやく2時間弱。予定より10分程遅れてバンコックの Suvarnabh 空港に到着した。前に来たのはアジアカップ期間中の7月でジャカルタからのバンコック入り。今回はハノイから。ヴェトナム訪問は今回が初めてでインドネシアも数回足を運んだだけなので8年間に渡って何度も来ているバンコックは空港に到着した時から“ホームゲーム”に向かうような感覚だ。最近は世界中からこの地を目指す観光客が爆発的に増えているのでパスポートコントロールでの待ち時間が長くなった。ようやく入国スタンプを押して貰い現地通貨に両替をと思うも受付のお姉さんに “ ドン!ノー !、タイランド、ドン!ノー!“と言われてしまった。アララ知らなかった、Vietnam Don がここでは両替できないのか?まだ日本円で数千円分残っていたのだけど。次のマレーシアで替えられるかなぁ…...

ホテルにチェックインをしてから AFC U-19 予選の行われている Thai Japanese Stadium に向かおうとするが一抹の不安が。タクシーの運転手が解るかな?? ホテルの受付のお姉さんにタイ語で行き先を書いてもらおうと頼んだが、彼女がこの競技場を全く知らない上に英語も少し怪しいので全く通じなかった。しかしホテルの前にいたタクシーの運転手はすぐにわかってくれた。訊けば彼もサッカーが好きでアジアカップは観にいったらしい。競技場は繁華街のスックンビットから約20分程度のところ。日曜日のせいか幸運にも交通渋滞には捕まらなかった。
なぜ Thai-Japanese Stadium と言うのだろう? 日本が資金援助をしたのかな?もしそうだとしたらさすがタイと褒めてあげたい。中国政府なんてあれだけ日本にたかっていながら何一つ“日本の援助で”とは国民に教えない。ある時中国人に言われた。“日本は中国を侵略したのに戦後補償は何もしていない。インドネシアやフィリピンには資金援助しているのに。” “はい。おめでとう。貴方のとこの最近完成した空港は日本の援助なしでは建てられなかったのですよ。他にも沢山あるよ。” 彼の信じられないと言った硬直した表情が印象的だった。

競技場はあまり大規模でなく競技場の外ではジョギングをする人やバドミントンそして遊んでいる子供達も。50バーツの入場券を購入して中に入る、西ヶ丘競技場に陸上競技場のトラックが付いているって感じ。試合は既に始まっている。熱心に太鼓を叩いて応援するサポーター達も。ハノイから今朝入って来たのかな?在留邦人らしき人々も。この予選では既に日タイ両国共に来年サウジアラビアで開催されるアジアユース(U-19 )選手権への進出を決めているが両国共に勝利を目指しての一戦と期待をしていた。着席した時は既に試合が始まっていた。両チームのフォーメーションは…とピッチ上を目で追っているとタイのカウンター攻撃が始まり最後は14番の Jaroensuk が左サイドからドリブルシュートを決めてタイが先制点を挙げた。開始11分の事であった。タイの2トップは10番のK.Thawikan と24番の S.Ramkularbsk 。Ramkularbsk は長身で彼がボールを持つと2人、3人掛でなければ容易に止められない。 14分には左サイドを先制ゴールの Jaroensuk に突破され入れられたクロスをK.Thawikan に押し込まれ追加点を喫する。 GK 権田修一も一旦は手に当てたのだが弾き出す事が出来なかった。



地元サポーターからは歓声と拍手が。しかし日本のサポーターも声援を送り選手達を鼓舞する。日本のスタメンはGK権田修一(FC東京)DFは4バックで左サイドが中田健太郎(名古屋U-18) CB が鈴木大輔(星稜)須崎恭平(磐田Y)右サイドバックが金井貢史(横浜FM Y )。ボランチには山本康祐(磐田 Y ) と金崎夢生(大分)。2列目左が鈴木惇(福岡U-18 ) 右が 比嘉厚平(柏U-18 ) そして2トップが白谷建人( 国見 ) と宮澤裕樹(室蘭大谷 ) 。立ち上がりのタイの攻勢に気圧されているのを見ると日本代表とは言え彼らは19歳以下で高校生が多く、現地入りして10日以上が経っているので子を持つ親の立場としては“現地で飯はきちんと食えているか?替わった気候で体調は崩していないか?洗濯はどうしているのか?”などと心配をしてしまう。 
タイの出だしが良いので日本はボールがつながらずなかなかタイゴールに迫れない。FKのチャンスも壁に当たってしまう。一方でJaroensuk, Thawikan そしてSrichaloung らに右サイドを崩されてピンチを招く。



25分には長身の Ramkularbsuk が強烈なミドルを放ち、その直後には Jaroensuk の左からのクロスから Ramkularbsuk がゴールを狙うがマークに入った鈴木を倒したとホイッスルが鳴り助かる。29分には Srichaloung に左サイド突破を許し、須崎がマークに入るがゴール前のシュート気味のクロスは鈴木の足に当たって正面でフリーの Ramkularbuk に。危ない!!と思わず立ち上がるが、金井が身を挺して Ramkularbuk のシュートコースに入ってブロック。3点目が先に入ってしまえば本当に苦しくなるだけに金井のナイスブロックであった。
劣勢の日本は37分にようやく宮澤が右サイドをドリブルで上がってクロスを入れるが中にいた白谷の前でクリアーされる。そしてそこからカウンターをくらい Srichaloung にシュートまで持ち込まれるがゴールには至らなかった。何とか現状を打開したい日本は37分に宮澤が Kaewsookate に倒されてPAの右側でFKを得る。鈴木惇がファーサイドに上げたFKを金井がダイビングヘッドでタイゴールを割り1点を返した。



相手の攻勢を凌いぎ追加点を決められる前に得点を挙げたのでこれから同点、逆点が期待されそうな展開となった。40分にはその右サイドバックの金井が逆サイドの金崎に大きく振り、金崎はクロスを入れるが僅かに宮澤には届かない。金崎が左サイドによって鈴木惇が中に入って来た。
しばし攻撃の手が緩んでいたタイだが、41分には Ramkularbsuk から Srichalong に渡りチャンスとなりかけるがマークに入った須崎を倒してファール。42分には日本ゴール前で Thawikan が倒されるがノ-ファール。そいてロスタイムに入った46分には比嘉がJaroensuk にタイゴール前で倒されたがこれもPKにはならずに前半が終わった。立ちあがり、タイは攻勢を見せたが同じ選手で攻撃を形成していたでの日本ベンチもそれに対する指示がハーフタイム中に出されるであろう。

ロスタイム中にすぐ後ろに座っていた人と話す。訊けばバンコックの日本人学校の先生とか。私が持参していた専門誌を見せてあげると喜んでくれた。福岡出身との事でアビスパのサポーターらしい。今シーズンは昇格出来なかったけど福岡は若手選手の育成に力を入れているのでよしとしているとの事だった。横断幕も福岡のサポーターらしき人が掲げたものがあった。前半途中から増えて来た在留邦人の少年達の為にもこの試合を勝利で終わってほしい、と節に思った。



そしてこの試合のメンバーリストを求めて競技場内をうろつく。タイ人報道関係者らしき人がメンバーリストを持っていたので英語で書き写させてほしいと頼むと彼は2枚持っているのでと、気前よくリストをくれた。これは助かり有難かった。英語が話せたのでしばしサッカー談議を。先日 Manchester City とタイの3選手が契約した事を話すと“あれは選挙の為だ。”と。12月に選挙があるのだがタクシン前首相がいた政党の人気取りのためだ、と冷ややかに思う人が多いらしい。彼も日本のサッカーは素晴らしいと言ってくれたけど..

後半に入っても両チームメンバー交代は無かった。開始20秒。Srichaloung が右サイドを突破してシュートを放つがGK権田がパンチングで弾き出す。タイ側席に移って来て分かったのだが、熱心に声援を送るのは女の子達だった。羨ましいなぁ…



51分には Srichaliong が鈴木大輔を交わして日本ゴールに迫る。女の子達の声援が飛ぶ、そしてPA内で倒されたがノーホイッスル。彼女達が一斉に立ち上がってなにか審判に叫んでいた。53分に左サイドから何度から突破して来た Jaroensuk が下がってDF登録のSrisaiが投入され、右サイドバックに入った。これは左サイドに回って来た金崎への対策か?しかし金崎が左サイドに入ってから日本のチャンスが増えだしたのだ。その金崎は56分に Madputeh を交わしてゴール前に迫ったところをCB の Cumsokcheak に倒されてFKを得る。そのFKから金崎が飛び込むがGK Cunnigham がブロック。おしいチャンスだったが63分、金井のスルーパスが宮澤に通り、更に鈴木惇へ。鈴木惇はやや距離があったがそのまま放ったシュートがタイゴールネットを揺らし、同点ゴールが生まれた。この右からの崩しは見事だった。



“アウェー”で2点のビハインドを追い付くあたりは日本サッカーの成長の証明だろう。残り時間はまだ30分弱。引き分けでも1位通過だけど、来年のアジアユースを勝ち抜いて再来年のFIFA U-20を考えればやはり逆転勝利は収めてほしいところだ。それはタイも同じだろう。特にホームであるので。
66分には CB Kaewsookate が強烈なミドルを放つ。最近では東南アジアの選手のシュートレンジも長くなって来た。そして周囲が暗くなって来たので照明に明かりが灯り出した。タイはボールキープの出来る Thawikan にボールを集める様になる。日本は70分宮澤に替えて福岡大の永井建祐が投入される。がんばれ大学生。そう言えばこの試合には出ていないがGKの松本拓也も順天堂大学生だ。バンコックに来てお金足りているかな???
タイベンチも72分。運動量の落ちた巨漢FW Ramkularsuk を下げて Namuengrak を投入し Srichaloung と2トップを組む。11月のタイは4月の地獄の様な高温多湿では無く過ごしやすいほうだがそれでもピッチの選手達の消耗も止められない。試合が中断するたびに水分補給にいそしむ選手が少なくない。 77分にはタイの2トップ Namuengrak とSrichaloung で左サイドを突破してくるが金井、須崎が踏ん張る。女の子達は“ Thailand !! Thailand !! “ の大声援を送る。日本のサポーター達も負けていない。金崎が下がって山崎亮平(磐田)が投入される。しかし、その直前に比嘉が相手選手のチャージにあって立てない。牧内監督も山崎に一旦下がる様に命じるが、結局最初の届出通りに金崎が下がり山崎が入った。その直後に水沼がピッチサイドに出て来る。水沼と言えば私はむしろユース、日本代表で活躍した彼の父親の方を思い出す。もし彼が FIFA U-20 でゴールを決めるような事になれば親子2代に渡っての得点者となる。あぁなんて親孝行なのだろう…. その前に私がもっと家族の事を考えないとなぁ…. メンバー表をくれた地元の記者に、“あの28番の父親は有名で日本代表でもプレーをした。20年前には日本代表メンバーとしてバンコックに来てタイ代表と五輪予選の試合に出場した。その試合は 0-0 だったけど、後日東京で行われたタイ戦でゴールを決めた。”と教えてあげたら頷きながら何かメモっていたけど活字になったかな?
その水沼が痛んだ比嘉に替ってピッチにはいる。時間が少なくなり、どちらも負けて失うものは何もないので勝利を目指してプレーが激しくなる。87分 Thanwikan が鈴木大輔を振り切りシュートに持ち込むが枠を捉えられない。ロスタイムの表示が4分と出る。まだまだ両チームにチャンスはある。91分には途中出場の Namueangrak が下がってDF登録のSompittayanurak が投入される。
時間が過ぎ、このまま引き分けかと思われた93分にドラマが起こった。右サイドで水沼からボールを受けた永井が中にクロスを入れる。そのまま逆サイドに流れたところには山崎がおり、山崎が持ち込んで放ったシュートはタイゴールに突き刺さりこの試合日本が初めてリードを奪った。
狂喜するピッチの選手達。そして観客席の日本人達。しかしタイの選手達は諦めてはいない様に見えた。すぐにボールをセットしキックオフに備える。そのリスタート後にFKを得るがそれを巡って日本選手と小競り合いを。日本ゴール前に一旦は迫るがそこでタイムアップ。観客席では在留邦人を始め、日本人が勝利の拍手を送るが、ピッチ上では文字通り激しい乱闘が始まった。



日本が逆転ゴールを決めた時にすでにブチ切れていたのだろう。GK権田が頭を叩かれたりしたらしい。 しかし選手達が自軍ベンチ前に戻って来るとそこで歓喜の輪が広がり、スタンドからは再び大きな拍手が彼らに送られる。

“アウェーゲーム”で2点のビハインドを引っくり返した事は今後の自信に繋がるだろう。しかし来年のアジアユースではタイよりも強い相手と戦わねばならない。彼らが更にレベルアップし、5年後のロンドン五輪にも出場してくれる事を祈っている。
帰りにメンバー表をくれた記者と握手をして別れ、タイサポーターの女の子達に声をかける。最後の乱闘を表現すると彼女達は “ムエタイ!タイボクシング!!”と言ってファイティングポーズを取った。ポンサクレックを破ったのは日本の内藤だぞ、とタイ語が話せれば言い返したのだけど…..




この試合は著名なサポーターやジャーナリストも観戦していたらしい。あぁ、良く見てあいさつしとけば良かったなぁ..

そして私は競技場の外に小走りで出た。タクシーがすぐに拾えることを祈りながら……