鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1362~伊藤熊太郎

2017-05-12 12:22:16 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、伊藤熊太郎です。

芸術と科学が交わった博物図版を鑑賞することが大好きです。
その鑑賞方法は、博物館などで鑑賞するのもいいですが、たくさんの図版が1冊にまとめられた出版物でくり返し鑑賞することが特にお気に入りです。
当然ながら、その図版はできるだけ大判で載っている方がいい。
先日も新たな出会いを求めてネットオークションをチェックしていました。
そこに、まさにこれ!というものが出品されていました。

「戦前 昭和6年 日本水産動植物図集 上下編揃い 魚類図鑑 幻の魚類博物画家 伊藤熊太郎 鮫 鯨 深海魚 甲骨類 大型本」
というタイトルで出品されている博物画集です。
掲載されているサンプル図版は、とにかく見事。

この伊藤熊太郎って一体何者?
これまで、多くの博物画家の名を目にしてきましたが全く知りません。
随分そろえた手元資料にも名が出てきません。
最終手段はやっぱりネット検索。
検索のトップに出てきたのは、東京海洋大学の「幻の魚類博物画家 伊藤熊太郎」という企画展の展示目録です。
そしてそこには荒俣宏氏の名が・・・。
伊藤が描いたスケッチ帳6冊、原画1261枚を荒俣氏が発見したことが、きっかけで企画展が開催されることになったそうです。
またアメリカのアルバドロス号の博物探検航海に参加した経験がある絵師であり、多数の図版がスミソニアン博物館に残されていることも紹介されていました。

出品者のコメントによると
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日本水産動植物図集 上下編揃いです。
昭和6年5月15日に上編 昭和7年3月15日に下編が発行されました。
図は幻の魚類博物画家 伊藤熊太郎氏です。
見開き左に解説、右に図です。
キラキラ反射するラメ?のような塗料も使用された凝った作りの図鑑です。
大きさは縦36cm×横52cmです。
=====

荒俣宏先生が肩入れしている博物画家の大判の図版と言っても、1万円を超えたところでビビりました。
並行して復刻版があることも判りました。
ただ復刻版はサイズが小さい上、下巻だけ。
せめて上下巻だったら良かったのに、と恨み言を言いつつ、何とか落札することができました。

そしてついに到着。
縦36cm×横52cmは、とにかくデカい!
これまで一番大きかった「複製 近代文学手稿100選」より一回り大きいです。
重さも半端ではありません。

いよいよ図版鑑賞です。
図版は厚手の紙に美しく印刷され、保存状態も素晴らしいです。
照りのある魚は、キラ刷りで仕上げられています。
魚以外の海生動植物も網羅しています。
オットセイ、ラッコ、クジラ、エビ、カニ、ナマコ、ウニ、ヒトデ、貝類、サンゴ、海藻など。
こりゃ見応え十分。
最近、貝類図鑑が欲しくてチェックしていたのでちょうど良かった!
と軽く言うには高価な買物でしたが、大判の図版をたっぷり鑑賞しています。

魚、甲殻類、貝類は絶品ですが、哺乳類と海藻は余り上手ではありません。
本棚に仕舞うと出すのが面倒になりそうなので、今のところは食卓の脇に立てかけて、頻繁に鑑賞しています。

最後に、本書の刊行動機を知りたくて、序文を現代風に訳してみたのでご紹介します。
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序文
大日本水産会は、明治15年に創立し、本年、創立50周年を迎えた。
これを記念して水産動植物図集を刊行し、頒布することにした。
本会は明治25年に日本重要魚介を類集する魚介図を刊行し、同33年及び43年増補重版を行ったが、収録する種類は300余種に過ぎなかった。
当時この文献が学会の研究資料として、また美術工芸の参考資料として社会に好影響を及ぼした事実を考え、今回刊行するものは全て原図を新たにし、600余種に増加して我が国の重要な水産動植物をほとんど網羅し、かつ和英文の解説を付し、その完成に最善の注意を払った。
本図集は、魚介写生の大家・伊藤熊太郎が描写し、生物学の権威数氏が監修した、科学的に正確な原色版であり、国内では例のない書籍と考える。
近年の水産業興隆の機運に際し、本図集の刊行により水産業界の発展に貢献することができれば、この記念事業が意義あるものとなり幸いである。
昭和6年5月
大日本水産会長 伊谷以知二郎
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