お気に入りその844～日本森林樹木図譜

今回のお気に入りは、日本森林樹木図譜です。

先日、ネットオークションに出品されていました。

明治３３年に農商務省山林局が発行したものの第１集です。
８８枚の石版彩色図版が揃っていると添え書きがありました。
オークションでは表紙から図版まで丁寧に写真で紹介していました。

図版１枚には１種類の樹木が通常の博物図プラス縦横に割った木目や色合いまで紹介されています。
とても丁寧に描かれており実に美しい図版です。
もともと木材資源を活用するための資料として制作されたものでしょうが、芸術性がとても高いと思います。

古本の市場で本書について調べると次のことが判りました。

・明治３３年～３４年に農商務省山林局が第１集と第２集を発行。
　第１集は表紙に「農務商技師　白沢保美編、農商務属　丸山宣光彩画」と書かれており、図版は８８枚
　第２集は表紙に「山林技師林学博士　白沢保美編、農商務属　大石栄雄彩画」と書かれており、図版は７４枚
　古本市場では第１集が３０万円弱で販売されていた（多色刷石版８８枚）

・明治４４年に成美堂が「複製　日本森林樹木図譜　上編・下編」を発行
　Ｂ５判　彩色７含石版１６２図
　古本の市場では上下揃いで１６０００円くらいから
　彩色７というのが気にかかる
　複製ならすべて彩色のはずなのに

・昭和５８年に講談社が「原色精密　日本森林樹木図譜（付日本竹類図譜）」を発行
　Ａ４判３９７ページ　定価３９０００円
　古本市場では竹類図譜も付いたものは１５０００円くらいから　
　本書と同じシリーズの「原色精密　日本鳥類写生大図譜」を所蔵しているが大型本で鑑賞に向く美しい仕上がり
　同じコンセプトで制作されているはずなのでその美しい仕上がりは想像に足る

３種類の「日本森林樹木図譜」があることを知りました。
できれば明治３３年の原本を入手し鑑賞したいものですが、高額なため複製や原色精密版でもいいと思いました。
複製は「彩色７含」が気になるので、入手するなら原色細密版でしょうか。

ただオークションが数千円で進行していたので、万が一にもチャンスはあると思い、とりあえず１万円上限で入札に参加しました。
当然のことですが、あっという間に更新され、翌日確認したら８５０００円くらいで終了していました。
古本の市場で３０万円弱もするものが１万円で入手できるはずもなく８５０００円は安いくらいだと思いました。
ただオークションサイトからメールが届いており、出品者が終了前にオークションを中止したと書かれていて驚きました。
こういうことって滅多にないことです。
きっとこんな安値で落札されることに耐えられなかったのではないでしょうか？

ちなみにこの手の図譜で一番のお気に入りは「北海道主要樹木図譜」。
古本で数万円もする復刻版には手が出ませんが、普及版でもとても美しく鑑賞するのに十分でした。
元図は１９年もの歳月をかけて描かれており、完成の２年後に画工が亡くなっているというエピソードにより、まさに命を懸けて描いた図版という思いでこちらも観てしまうのでより一層美しく観えるのかもしれませんが・・・。

さて「日本森林樹木図譜」はどうしましょう。
原色精密シリーズの鳥類図譜の美しさを知っているだけに、選ぶなら信頼感のある原色精密版に決まり。
その内、財布に余裕ができたら購入して手業の美しさを鑑賞したいです。