鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその2136~ゴールデンカムイ

2022-09-20 12:49:27 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ゴールデンカムイです。

「ゴールデンカムイ」が完結したという噂が耳に入りました。
周りで読んでいる人がいないためAMAZONで確認したところ確かに31巻で完結していました。
手元にあるのは24巻まで。
その発行日を調べたら2020年12月でしたので、最後に読んでから2年近くも経っていたようです。
久しぶりのため話がつながるかが不安でしたが、とりあえず最終巻までの7巻をまとめ買いして一気読みしました。
心配はご無用でした。
オリジナリティ溢れるストーリーと毎度インパクトある人物がインパクトある出来事を起こすため、2年くらいでは忘れるものではなく、物語の世界にすんなり入り込めました。

読後の感想についてはまだ未読の方がいらっしゃると思いますのでネタバレを避けて書きたいと思います。

27巻でようやく「ゴールデンカムイ」というタイトルの意味が分かったときはナルホド!と大いに腑に落ちました。
アイヌはたくさんのカムイを崇めていますが、黄金のカムイはいませんでした。
本書ではアイヌが隠した黄金を狙ってたくさんの人々が争うことで多くの血が流れました。
作中の「黄金はアイヌに災いをもたらすカムイ、ゴールデンカムイではないのか?」という言葉には説得力がありました。
(ゴールデンがアイヌ語でないというツッコミどころはありますが・・・)

その後も、読者だけでなく登場人物たちをも失望させない見事な展開が続き、大いなる結末を迎えます。
アイヌが北海道を取り戻すために大量の黄金を隠したことや、そのありかを示す地図を分割して囚人たちの体に入れ墨として残したという荒唐無稽なスタートをしたにもかかわらず、こんなにきれいな終わり方をするのか!と感動さえ覚えました。
登場するいろいろな民族の文化や歴史に精通しつつ、そこに壮大なストーリーを織り込み展開させる手腕の見事さは圧巻でした。
ただ常識の範疇を大きく外れる極端な人物を数多く登場させているため読者層が青年男子に限られたのは実に残念でした。
ということで成年男子諸君! 
本書を未読ならぜひ読んで欲しい。
民族文化・歴史を学びつつ冒険心を満たすことができる素晴らしい作品でした。

なおこの作品には第七師団の軍人たちが主要人物として最初から最後まで登場します。
私は北海道で生まれ育ち還暦を過ぎましたが、この作品を読むまで第七師団という名前さえ知りませんでした。
明治時代、政府はロシアの脅威から北海道を守るため、旭川に師団本部を置いていました。
娘が旭川勤務の頃によく通っていた旭橋は戦車が通るため幅広くがっちりした作りにしたと聞いたことがあります。
第七師団はもともと北海道開拓と北方警備を兼ねた屯田兵として組織され、後に拡大発展した師団で、札幌に駐屯していましたが、旭川に鉄道が延伸するのを待ち、旭川に移ったそうです。
その後、日露戦争が勃発し、第七師団から多くの兵士が従軍しました。
そして日露戦争の終戦後がまさにゴールデンカムイの物語がスタートする時代です。
日露戦争では日本が勝ったにもかかわらず有利な戦勝特権を引き出せなかったため、外務大臣・小村寿太郎に対して国民から強い不満が向けられました。
それと同様に第七師団にも国民の厳しい目が向けられました。
命を懸けて戦ったにもかかわらず報われなかった軍人たちの中には本書のように屈折した者たちが出てもおかしくなかったことと思います。
そんな学びも得られた素晴らしい作品でした。


コメント
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