今回のお気に入りは、「PIHOTEK」です。
新聞で紹介していた「PIHOTEK 北極を風と歩く」という絵本を取り寄せて読みました。
AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
「植村直己冒険賞」受賞の極地冒険家、荻田泰永×「世界で最も美しい本コンクール」銀賞受賞の井上奈奈による絵本。
北極をたった一人で歩く“僕”の一日を描く。
頬を叩く風、北極での生き方を知る動物たち、空から降りる暗闇、そして……。
北極を歩く“僕”を追体験できる、命と死を感じる美しい絵本。
たった一人、北極を歩いている。
命を支える道具
食料を積んだソリを引きながら、進んでいく。
氷のきしむ音が遠くでひびく。
揺れ動く氷の海。
歩けども、歩けども、足元はながされていく。(本文より)
「環境問題とは数字の問題ではない。命の問題だ。自分の命はもちろん、隣にいる大切な人の命であり、会ったこともない遠い土地の誰かの命であり、時代も異なる動物の命のことだ。
-中略-
北極を冒険することは、生きることだ。そして、死を感じることだ。その死とは、誰かの命であり、いつの日か自分の体も分解されて、空に舞い、風に吹かれて誰かの命にたどり着く。」(巻末エッセイより)
=====
タイトルの「PIHOTEK」はピヒュッティと読みます。
親しくなったイヌイットがつけてくれたイヌイットネームで"Snow Walker"という意味だそうです。
著者は現地の人々でさえやることのない単独徒歩の北極行を17度も行ったそうです。
現地の人々が著者に付けたあだ名には、尊敬の念が込められているように感じます。
著者はイヌイットの暮らしと北極行について次のように考えました。
=====
その土地で生きるということは、その土地から命を得ることだ。
自分の体を構成する物質がこの土地全体である。
常に生まれ変わり死に変わりしながら、誰かを構成していた物質が次の誰かを構成する物質となる。
=====
とても哲学的で詩的にも読めますが、言っていることは単純で私たちは自然の一部でしかないということです。
著者は北極で一人そりを曳きながらそういうことを考えていたのですね。
巻末エッセイを含めて、たった一人の北極行がどんなものかをその空気感を含めて追体験できる作品でした。
本書の絵についても北極の世界を実感できる表現で気に入りました。
銀色のクレヨンで輪郭を描き、銀色の水彩絵の具を塗り込んで仕上げています。
角度によりグレーに見えたり輝いて見えたりして、いかにも全てが真っ白な雪の世界をよく表現できています。
ホッキョクグマやライチョウ、ホッキョクウサギは黒目以外を背景と同色で描いています。
保護色なのだから実際にこういう風に見えるのでしょうね。
興味深かったのは表紙カバーを外すと北極行の地図に行程メモを記載したものが全面にプリントされていることです。
大きな地図の一部のようで、行程順と思われる10番から21番までが書き加えられています。
カナダ北部、クイーンエリザベス諸島にあるバサースト島付近の地図で書き込みの最初と最後の位置は次の通り。
10番 N75°17.217′ W97°29.543′
21番 N76°05.019′ W100°16.143′
ちょっと計算してみました。
南北に1.2033°、東西に0.7767°移動しており、直線で159km移動しています。
平均すると1日当たり14.5kmになります。
実際は高低差があったりう回したり、悪天候で歩けない日があったりで2倍近くになったのではないでしょうか。
何より極寒の地ということを考えると想像を超えた体力に驚かされました。
なおテント内で眠りに就く絵には、著者の横にライフル銃が描かれていました。
ホッキョクグマに襲撃されることもあることがさりげなく伝わり、星野道夫さんの事件を思い出しました。
何一つ真似したいと思わない冒険です。
本書を読むだけで充分追体験させていただきました。
新聞で紹介していた「PIHOTEK 北極を風と歩く」という絵本を取り寄せて読みました。
AMAZONの内容紹介を引用します。
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「植村直己冒険賞」受賞の極地冒険家、荻田泰永×「世界で最も美しい本コンクール」銀賞受賞の井上奈奈による絵本。
北極をたった一人で歩く“僕”の一日を描く。
頬を叩く風、北極での生き方を知る動物たち、空から降りる暗闇、そして……。
北極を歩く“僕”を追体験できる、命と死を感じる美しい絵本。
たった一人、北極を歩いている。
命を支える道具
食料を積んだソリを引きながら、進んでいく。
氷のきしむ音が遠くでひびく。
揺れ動く氷の海。
歩けども、歩けども、足元はながされていく。(本文より)
「環境問題とは数字の問題ではない。命の問題だ。自分の命はもちろん、隣にいる大切な人の命であり、会ったこともない遠い土地の誰かの命であり、時代も異なる動物の命のことだ。
-中略-
北極を冒険することは、生きることだ。そして、死を感じることだ。その死とは、誰かの命であり、いつの日か自分の体も分解されて、空に舞い、風に吹かれて誰かの命にたどり着く。」(巻末エッセイより)
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タイトルの「PIHOTEK」はピヒュッティと読みます。
親しくなったイヌイットがつけてくれたイヌイットネームで"Snow Walker"という意味だそうです。
著者は現地の人々でさえやることのない単独徒歩の北極行を17度も行ったそうです。
現地の人々が著者に付けたあだ名には、尊敬の念が込められているように感じます。
著者はイヌイットの暮らしと北極行について次のように考えました。
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その土地で生きるということは、その土地から命を得ることだ。
自分の体を構成する物質がこの土地全体である。
常に生まれ変わり死に変わりしながら、誰かを構成していた物質が次の誰かを構成する物質となる。
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とても哲学的で詩的にも読めますが、言っていることは単純で私たちは自然の一部でしかないということです。
著者は北極で一人そりを曳きながらそういうことを考えていたのですね。
巻末エッセイを含めて、たった一人の北極行がどんなものかをその空気感を含めて追体験できる作品でした。
本書の絵についても北極の世界を実感できる表現で気に入りました。
銀色のクレヨンで輪郭を描き、銀色の水彩絵の具を塗り込んで仕上げています。
角度によりグレーに見えたり輝いて見えたりして、いかにも全てが真っ白な雪の世界をよく表現できています。
ホッキョクグマやライチョウ、ホッキョクウサギは黒目以外を背景と同色で描いています。
保護色なのだから実際にこういう風に見えるのでしょうね。
興味深かったのは表紙カバーを外すと北極行の地図に行程メモを記載したものが全面にプリントされていることです。
大きな地図の一部のようで、行程順と思われる10番から21番までが書き加えられています。
カナダ北部、クイーンエリザベス諸島にあるバサースト島付近の地図で書き込みの最初と最後の位置は次の通り。
10番 N75°17.217′ W97°29.543′
21番 N76°05.019′ W100°16.143′
ちょっと計算してみました。
南北に1.2033°、東西に0.7767°移動しており、直線で159km移動しています。
平均すると1日当たり14.5kmになります。
実際は高低差があったりう回したり、悪天候で歩けない日があったりで2倍近くになったのではないでしょうか。
何より極寒の地ということを考えると想像を超えた体力に驚かされました。
なおテント内で眠りに就く絵には、著者の横にライフル銃が描かれていました。
ホッキョクグマに襲撃されることもあることがさりげなく伝わり、星野道夫さんの事件を思い出しました。
何一つ真似したいと思わない冒険です。
本書を読むだけで充分追体験させていただきました。