元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「おっぱいとお月さま」

2008-10-28 06:29:43 | 映画の感想(あ行)
 (原題:La Teta i la Lluna)94年スペイン=フランス合作。スペイン・カタロニア地方に住む9歳のテテ(ビエル・ドゥラーン)は、生まれたばかりの弟に母親のおっぱいを取られたことが気に入らない。自分専用のおっぱいが欲しいとお月様にお祈りしたら、巡業に来たフランス人の踊り子エストレリータ(マチルダ・メイ)という、理想的なおっぱいの持ち主に出会えた。しかし、彼女は性的不能者の“おなら芸人”の夫と、近所に住む青年ミゲルとの間でよろめいてばかり。果たしてテテは願望をかなえることができるのか・・・・。94年ヴェネチア映画祭の脚本賞受賞作で、監督はビガス・ルナ。

 こういう子供の激しい思い込みを素材として取り上げる場合、度を過ぎると「カルネ」みたいなグロテスクな怪作になるし、表面的に娯楽色を出して軽く片付けてしまうと「ノース」や「小さな恋人」のような凡作になる。「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」という傑作はあるものの、けっこう難しいジャンルではないかと思う。この映画はどうか。

 ルナの演出はその前作「ハモンハモン」よりアクが抜けて、スムーズに物語を展開させている。冒頭のカタロニア名物“人間タワー祭”でスペクタクル的に観客をノセたあと、古いシャンソンをバックに幻想的な場面で子供のイノセントな夢を綴る。見所は、エストレリータと“おなら芸人”のステージングで、キッチュなセットとチャーミングな振り付けはフェリーニを思わせる。ダメ男と巨乳美人の取り合わせも、もろフェリーニ。ただ、フェリーニの密室嗜好(?)と違ってルナはシネスコの画面いっぱいに映像空間を広げていて、風通しは格段にいい。

 もっとも、プラスアルファの作者の悪意は感じられず、ドキッとするような官能性やら屈折したニヒリズムはない。ただ“大きなおっぱいを見たいという子供の頃の願望を映像化したかっただけ”(監督のインタビュー記事)との率直な意思があるだけだ。これはこれでいいと思う。ラストはちゃんと子供から少年への主人公の“成長物語”という定石を押さえていて、爽やかな印象を残す。

 ドゥラーン坊やはラテン系の子役らしい実に達者な演技。マチルダ・メイは意外な好演で、初めて彼女を良いと思った。何でも撮影時には妊娠中で、おっぱいの大きさが変わってきてスタッフを慌てさせたという(笑)。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「しあわせのかおり」 | トップ | 「ぼくの大切なともだち」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画の感想(あ行)」カテゴリの最新記事