元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「寄生獣」

2015-01-07 06:27:57 | 映画の感想(か行)

 退屈せずに終わりまで観ることが出来た。もっとも、本作は“パート1”であることは鑑賞前から承知していたので、これ一本で完結していなくても腹は立たない(まあ、それを知らなかったら少しはムカついたかもしれないが ^^;)。時間潰しにフラリと映画館に入って向き合うには(グロ描写が苦手な観客を除けば)適当なシャシンであると思う。

 ある日どこからか謎の寄生生物が来襲し、多くの人間の脳を乗っ取り、宿主を異形のものに変化させる。そしてその並外れた戦闘能力で人間を捕食していくのだった。平凡な高校生である泉新一もその生物に乗っ取られそうになるが、とっさの判断により脳への侵入は防ぐ。ところがパラサイトは右手に宿ってしまい、とりあえず“ミギー”と名乗ったその生物と彼は奇妙な共同生活を送るハメになる。他のパラサイトは、そんな特異な状態にある新一とミギーを危険分子と見なし、両者の間で激しいバトルが展開。さらに新一の通う高校に、新任教師の田宮良子と転校生の島田秀雄という、二体の寄生生物の化身が乗り込んでくる。

 よく考えると設定には随分と無理がある。寄生生物の出自が分からないのには目をつぶるとしても、何のために人間世界に侵入してきたのか不明だ。繁殖や生命維持が目的ではないようで、劇中で“とにかく人間の数を減らす”というような存在意義も示されるみたいだが、何やら取って付けたようである。

 ミギーにしても、脳ではなく右手に寄生したからああなったと説明されるが、ならば他の個体も脳以外に取り憑いて様子を見るという方法もあったのではないかという疑問も残る(笑)。同じような題材ならば、ロバート・ロドリゲス監督の「パラサイト」の方が、まだ筋が通っていたのではないだろうか。

 しかしながら、山崎貴のリズミカルな演出と効果的な映像処理は、多少の作劇の不備もカバーしてくれるほど達者である。新一がミギーの影響を受けて(ダーク)ヒーローとして脱皮するという、いわばシンプルな図式を押さえておき、あとは筋書きを滞りなくサクサクと進めておけば、観る側にとってのストレスは少ないという計算だ。SFXは(もちろんハリウッド作品ほどカネを掛けられないが)なかなか頑張っており、格闘場面のスピード感と段取りの上手さは高いレベルを達成している。

 主演の染谷将太は独特のふてぶてしさが活きており、当初はイレギュラーな状況に戸惑うも、やがて開き直って戦いに身を投じるようになるあたりが違和感なく表現されている。田宮良子に扮する深津絵里も、珍しく回ってきた悪役を楽しんでいるようだ。

 しかし、一番印象に残ったのは島田秀雄を演じる東出昌大である。典型的な大根である彼の持ち味を逆手に取り、棒読みセリフも映えるパラサイトの不気味な雰囲気を醸し出していて絶品だ(爆)。

 続きはパート2で確認することになるが、観てみたい気になる。なお、断っておくが、私は有名な元ネタのマンガを読んでいないし今後読む予定も無い。だから“原作と比べてどうのこうの”という感想は述べられないが、そもそも映画化作品を原作との比較を中心にして批評することにあまり意味があるとも思えない(まあ、やるのは自由だが)。映画は、それ自体が独立した表現物として取り扱うべきである。

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