元・副会長のCinema Days

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「クレオの夏休み」

2024-08-18 06:29:56 | 映画の感想(か行)
 (原題:AMA GLORIA)世評は高いようだが、個人的にはピンと来ないシャシンだった。とにかく、話に愛嬌が足りない。別に、子供を主人公にしたヒューマンドラマだからといって肌触りの良いハートウォーミングなストーリーに仕上げる必要は無いのだが、本作はイヤな面が目立つ割にリアリティが希薄であり、観ている間は違和感しか覚えない。まあ、上映時間が83分と短いのが救いだろうか。

 パリに父親アルノーと暮らす6歳のクレオは母親を早くに亡くし、彼女は何かと面倒を見てくれる乳母のグロリアに懐いていた。ところがある日、グロリアは身内に不幸があったため遠く離れた故郷アフリカへ帰ることになってしまう。突然の別れに戸惑うクレオだったが、グロリアは彼女をアフリカの実家に招待する。そしてクレオはアフリカでの夏休みを過ごすことになる。



 実は、クレオの旅は決して愉快なものではない。グロリアの娘のナンダには産まれたばかりの赤ん坊がいて、当然のことながらグロリアはそっちの世話で忙しく、クレオをあまり構ってやれない。ただでさえ言葉が通じずに、ヨソ者のクレオは現地では上手く振る舞えない。ついには彼女は赤ん坊がいなければグロリアがフランスに帰ってくると考えてしまうような、愉快にならざる展開にもなる。

 もちろん、これはクレオ自身の責任ではなく、子供の気持ちを十分考慮しなかった父親やグロリアら大人たちに落ち度があるのだが、いくら何でも理不尽過ぎないか。クレオが思い切った行動に出てグロリアの親類たちとの距離を縮めそうなエピソードもあるのだが、効果的に描かれているとは思えない。そもそもこのシチュエーションに普遍性が見出せず、観ているこちらには何ら迫ってくるものが無い。

 マリー・アマシュケリの演出は求心力に欠け、露悪的なテイストばかりが先行しているように思う。そもそも、グロリアの故国カーボベルデは火山列島らしい奇観が多いらしいが、それらがほとんどフィーチャーされていないのも失当だろう。クレオ役のルイーズ・モーロワ=パンザニは、役柄のせいもあって可愛さに乏しい子供である。グロリアに扮するイルサ・モレノ・ゼーゴも大した見せ場は無い。

 アルノーを演じるアルノー・ルボチーニは、確かに考えが足りない父親像を上手く演じていたとは思うが、映画的興趣を醸し出しているとは言えない。あと気になったのが、アリー・アマシュケリとピエール=エマニュエル・リエによる、時折挿入されるアニメーション。さほどキレイでも面白くもなく、何のために起用したのか不明だ。

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