元・副会長のCinema Days

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「NOPE/ノープ」

2022-09-19 06:22:21 | 映画の感想(英数)
 (原題:NOPE)ジョーダン・ピール監督はM・ナイト・シャマランの“後継者”になるのではないかと思った。しかし、出世作「シックス・センス」(99年)以外は芳しい結果を残せずにキワモノとしての評価が先行するようになったシャマランとは違い、最低限のエンタテインメント性を確保している点は、まあ認めて良いだろう。とはいえ、諸手を挙げて褒める余地はそれほど無い。

 ハリウッドから遠くない田舎町で広大な敷地の牧場を経営していたヘイウッド家の当主オーティスが、突然空から降り注いできた異物のために急死する。長男のOJは、父親が災難に遭う直前に雲の中から巨大な飛行物体が現れるのを目撃したと妹のエメラルドに話す。兄妹はその正体を突き止めようとするが、その間にも近くにあるテーマパークで入場客が多数行方不明になるなど、不穏な事件が頻発する。やがて脅威は、再びヘイウッド牧場に迫ってくる。



 単純なインベーダー物(?)と思わせて、これ見よがしで意味不明なモチーフを遠慮会釈無く挿入してくるあたりが、この作家の“個性”なのだろうか。テーマパークの経営者は元子役で有名な番組に出演していたこともあるのだが、撮影中に起きた悲惨な事件を切っ掛けに足を洗ったらしい。だが、それが本編にどうリンクしてくるのかというと、何も無いのだ。

 牧場では主に馬を飼っていて、撮影用にスタジオに貸し出したりするのだが、その際にOJが“映画史上初めて馬の映像が撮られた時は、黒人が調教師を務めていた”だの何だのというウンチクを披露するものの、“それがどうした”というレベルで片付けられる。兄妹がこの怪現象を駆逐することよりも、動画を撮影してネットでバズらせることを主目的にしているのも、何か違う気がする。

 斯様に御膳立てには不審な点はあるが、SF風ホラーとしてはそんなに出来は悪くない。くだんの飛行物体が潜んでいるらしい雲がまったく動かないというネタは効果的。終盤の畳み掛けるような展開も、一応は見せる。ただ、敵の造形の扱いにはもう少し工夫が必要だった(あまりにも荒唐無稽すぎる)。

 ダニエル・カルーヤにキキ・パーマー、ブランドン・ペレア、マイケル・ウィンコット、スティーヴン・ユァンといった顔ぶれには有名どころは見当たらないが(笑)、破綻の無い演技を披露してくれる。マイケル・エイブルズによる音楽も悪くない。

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