元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「キャッシュトラック」

2021-11-05 06:23:58 | 映画の感想(か行)
 (原題:WRATH OF MAN)ガイ・リッチー監督作としては、先日観た「ジェントルメン」と同程度のクォリティ(つまり、あまり上等ではない)。しかも、元ネタは2003年製作のフランス映画「ブルー・レクイエム」であり、彼のオリジナルでもない。筋書きも、凝っているようであまり練り上げられておらず、鑑賞後の印象は芳しいものではない。

 ロスアンジェルスの現金輸送専門の警備会社フォルティコ・セキュリティ社の従業員が、業務遂行中に強盗に襲われて死亡する事件が発生。同社は欠員を補充するため新人を募集するが、採用されたのがパトリック・ヒル、通称“H”である。英国人である彼はヨーロッパでも同様の仕事をしていたらしく、入社試験の成績はギリギリながらも合格。



 さっそく任務に就いた彼だが、またしても強盗団が襲来。だが“H”はアッという間に悪者どもを片付けてしまう。実は彼には“別の顔”があり、フォルティコ社に入ったのもある目的のためだった。そんな折、強盗団は最も現金が動くブラック・フライデーに同社に集まる大金を強奪する計画を立てていた。

 主人公の“H”は実は地元のシンジケートのボスなのだが、なぜかフォルティコ社の誰も彼のことを知らず、FBIすら“H”を野放しにしている。中盤に“H”が警備会社に入った動機が明らかにされるが、入社前に彼はターゲットを探すものの見つからないという謎な御膳立てが提示される。地域を仕切る大物ならば、スグに相手は特定出来ると思うのだが、そうならない理由も分からない。

 リッチー監督得意の“時制を前後させる作劇”も、元々の筋書きが単純なのであまり効果無し。クライマックスの激闘も、強盗団の手筈と現実の事件が同時進行するという一見トリッキィな仕掛けが用意されるが、大して意味のあることだとは思えない。そもそもこの計画自体が強盗団側もかなりの犠牲を伴うことが十分に予想されるシロモノなので、観ていて面倒臭くなってくる。

 主役のジェイソン・ステイサムは頑張っているが、活劇場面がガン・ファイト中心で、持ち味の肉体アクションが見られなかったのは残念。ホルト・マッキャラニーにジェフリー・ドノバン、ジョシュ・ハートネット、スコット・イーストウッド、ニアム・アルガー等の他の面子は可も無く不可も無し。ただ、アラン・スチュワートのカメラによる西海岸らしくない(?)暗鬱な映像や、クリストファー・ベンステッドの迫力ある音楽は及第点だった。
コメント
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