元・副会長のCinema Days

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「DUNE デューン 砂の惑星」

2021-11-14 06:56:08 | 映画の感想(た行)
 (原題:DUNE PART ONE )ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作としては、出来は悪くない。もっとも、これは定評のある原作(フランク・ハーバートによるSF小説)があり、しかもそれがかなりの長編であるため、今回は割り切って“パート1”として製作されたことが大きい。無理矢理に2時間強に押し込めたデイヴィッド・リンチ監督版(84年)よりも、作劇面では有利だ。少なくとも次回作を観てみたいと思わせるだけでも、及第点に達している。

 遥か未来、人類は居住地域を他の星々に広げ、宇宙帝国を築いていた。ただし社会構造は歴史的に“退行”してしまい、皇帝を中心とする絶対主義制が敷かれていた。そんな中、アトレイデス公爵家は通称デューンと呼ばれる沙漠の惑星アラキスを治めていた。アラキスは大きなエネルギー源となる香料メランジの唯一の生産地だ。



 しかし、利益を横取りしようとするハルコンネン男爵家は皇帝と結託。アラキスに大軍を送り込み、占拠する。アトレイデスの当主レトは殺され、側室のジェシカと息子のポールは命からがら逃げ延びる。ポールはアラキスの原住民であるフレーメンと接触するため、広大な沙漠を彷徨う。

 帝国軍とそれに対抗する勢力との戦いや、主人公たちが使う超能力めいたもの等、一連の「スター・ウォーズ」シリーズとよく似たモチーフが登場するが、“元祖”はこちらなので気にならない(笑)。それどころか、バトルの背景にメランジをめぐる利権の争奪という明快なファクターを置いている分、ストーリーラインが混濁し質的に低迷している「スター・ウォーズ」シリーズよりも平易で好感が持てる。

 ヴィルヌーヴの演出は重々しいが、ドラマが停滞することは無い。活劇場面もソツなくこなしている。特筆すべきは映像の喚起力で、グレイグ・フレイザーのカメラによる彩度を抑えた暗めの絵作りが独特の世界観を創出。衣装やメカニック・デザインは実に非凡だ。羽ばたき式の飛行体などは、造形のユニークさに感心した。そして本作の売り物である巨大なサンドワームの扱いには圧倒された。D・リンチ監督版から相当の年数が経っている関係上、技術の進歩には驚くしかない。

 主演のティモシー・シャラメは好演ながら、彼の姿かたちを捉えたショットがとても多いのには苦笑した。多数いると思われるシャラメのファンに対するサービスだろうか。レベッカ・ファーガソンにオスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン、シャーロット・ランプリング、ジェイソン・モモア、ハビエル・バルデムなど、脇のキャストも良い。ただし、ハンス・ジマーの音楽はいささか大仰。もっとポピュラーな展開の方が好ましい。
コメント
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