元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「五線譜のラブレター DE-LOVELY」

2014-07-31 06:34:57 | 映画の感想(か行)

 (原題:De-Lovely )2004年作品。丁寧な作りで、感心した。アメリカの名作曲家コール・ポーターとその妻の実録映画である。

 映画は1964年、ニューヨークの広大なアパートで死の床にあったポーターの元に、ゲイブと名乗る怪しげな演出家が出現し、ポーターを観客とした彼の人生ショウが展開するという場面から始まる。主に描かれるのはポーターと妻リンダとの関係性だ。

 この二人の間柄は面白い。ダンナがゲイで、別に男の“愛人”がいることを知っていながら、夫の才能を伸ばし世に出すことに腐心する妻。パートナーのどちらかが強烈な異才でなかったらとても成立しないだろう。だが、映画はそのあたりを自然に描き観客を納得させてしまう。アーウィン・ウィンクラーの演出は努力賞もの。主演のケヴィン・クラインとアシュレイ・ジャッドの演技も良好だ。

 映画は晩年のポーターが自分の一生を舞台劇として鑑賞するという手の込んだ設定を取っているものの、これはそれほど効果的ではない。むしろポーターの業績を讃えるべく、豪華な顔ぶれのミュージシャンたちが彼のナンバーをカバーし、映像面ではそれを活かすためにミュージカル仕立てになっているところがポイント高い。

 特にミック・ハックネルが参加しているのは、かなり前にシンプリー・レッドのアルバムでポーターの「エヴリ・タイム・ウィ・セイ・グッバイ」をカバーしていたことを考え合わせると感慨深いものがある。ジャンティ・イェーツによる衣装デザインも素晴らしく、久々にリッチな気分に浸れる作品である。
コメント
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