元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「クルックリン」

2014-07-03 06:58:55 | 映画の感想(か行)
 (原題:Crooklyn)94年作品。スパイク・リー監督による、ブルックリンを舞台に自らの少年時代を描くファミリー・ドラマ。売れないミュージシャンの父、口うるさい母とわんぱく盛りの5人の子供たちを、当時の風俗と音楽をからめてにぎやかに綴る。

 で、観た印象だが、退屈な映画である。単に微笑ましいだけの家庭の様子を、別にドラマティックな出来事もなくスケッチ風に追ったに過ぎない。断っておくが、起伏もなく淡々とした展開だからダメというわけではない(抑えたストーリーでも傑作になる例はいくらでもある)。しかしここには作者の気合いというか、覇気というか、ドラマの方向性が全然ないのだ。



 紹介されるエピソードは、どれもこれも毒にも薬にもならない、観てる側にはどうでもいいものばっかり。“はぁ、それは楽しい少年時代でしたねぇ。よかったよかった、ははは・・・・”という時点に留まっていて、何ら問題意識やトンがった主張もなし。例えるなら、赤の他人の自家製ホーム・ビデオを無理矢理見せられている居心地の悪さがある。

 ドッと白けたのは中盤。ゴミゴミしたブルックリンの自宅から、郊外に住む金持ちの親戚に夏の間だけ預けられた末娘のエピソードだ。なんとこの部分だけシネスコで撮っている(それ以外のパートはビスタサイズ)。スクリーン・サイズは変更しないので、ここだけ縦長のおかしな画面になる。つまり、小ぎれいな郊外の生活より埃っぽいけど明るいブルックリンの方がいい、という心情の吐露なのだが、まさにミエミエの比較論でガッカリした。

 考えてみれば、リーはこの映画で描かれているように、黒人としてはフツーの家庭に育ったのであり、ブラック・カルチャーの旗手でも何でもない。平均的なハリウッドの監督なのだ。それが「ドゥ・ザ・ライト・シング」という突出した映画を撮ってしまったため、評価がヘンな方向に行っただけかもしれない。

 「マルコムX」「モ’ベター・ブルース」などはハリウッド製娯楽劇の典型だし、一方「ジャングル・フィーバー」みたいに社会派好みの事象を扱っても、パターン化されたエピソードの羅列になってしまう。そういえば公開当時に観た際、居眠りしている観客も目立った(^_^;)。
コメント
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