元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「東京ファンタ」の思い出(笑)。

2014-07-13 07:10:15 | 映画周辺のネタ
 「東京ファンタ」とは何かというと、85年から2005年まで毎年秋に東京で開催されていた映画祭のことで、正式名称は東京国際ファンタスティック映画祭といった。もともと「東京国際映画祭」のイベントの一つであったが、好評につき毎年開かれるようになったものだ(ちなみに東京国際映画祭は発足当初は一年おきの開催だった)。ホラー・SF映画を中心に組まれたプログラムはそのテのファンを数多く集め、ひとつの名物になった感があったが、2006年以降は開かれていない。

 原因としては不景気によるスポンサー不足が挙げられるが、配給会社がいい作品を出し惜しみして、プログラムの質が落ちていることもあったという。そして当時の雑誌記事によると、衰退の最大の理由は映画祭に集まる観客の質であるということだった。あまりにもマニアックな連中ばかりがやってきて一般のファンを遠ざけている、ということだ。

 これを読んで“なるほどな”と思った。私は87年と89年に「東京ファンタ」に足を伸ばしたことがある。とにかく観客の異様なノリにびっくりした。特にひどかったのが89年である。

 最前列に大学のサークルらしい若い連中がずらっと十数人ばかり並んで座っていたのだが、上映前に彼らの一人がきったないカバンから「バットマン」のコミック(アメリカ版)を取り出してストーリーについて講釈を始めた。



 “この巻ではさぁー、前のと作者が違うんだよね。だからロビンのキャラクターがちょっと変わってるんだ”するともう一人が、“そうそう、だから次の巻ではロビンは死んで新しいロビンが登場するんだぜ”“何言ってんだい、オレの持っている○○年版じゃロビンが女になってるんだぞっ、すげーだろっ”“キミの持ってるのは復刻版だろ。僕はオリジナル版を3冊持ってるぞ”“甘い甘い、オレの持ってるのはもっと古いぞ”“僕なんて絵見ただけで何年の作品か分かっちゃうんだぞー。そうそう、その絵は○○年前のだ。主人公の腰のあたりのデッサンが・・・・(以下略)”などという会話を大声で始めたではないか。

 その状態に呆れているうち、本編が始まる前に「バットマン」(ティム・バートン監督版)の予告編が上映された。すると彼らはどこから取り出したのか、タンバリンや鈴やカスタネット等をテーマ音楽に合わせてジャンジャン鳴らし始めたではないか。まわりの迷惑などまったくお構いなしだ(あっけにとられて、注意するのも忘れてしまった)。そして本編上映中は、連中はほとんど居眠りである。いったい何しに来たんだろう(まあ、本編のナントカっていう映画は眠たくなるほど退屈だったってのは事実だが ^^;)。

 こういうオタクな奴らといっしょに見られたくない、とフツーの映画ファンだったら思うだろう(私もそう思った)。だから一般ピープルは「東京ファンタ」を敬遠する。よって採算が取れなくなるのも道理だ。

 「東京ファンタ」のコンセプトは2006年に開催された東京国際シネシティフェスティバルに引き継がれたらしいが、その映画祭も2007年で終わっている。映画観て鐘や太鼓で大騒ぎする連中が集まるイベントというのは、(少なくとも国内では)不釣り合いなのだろう。とはいえ、ホラー・SF映画中心の特集上映というのは企画としては悪くない。マナーの周知を徹底させた上で(ここ九州でも)開催しても面白いだろう。
コメント (2)
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