くだらない。映画的センスが微塵も感じられない狂騒的映像を、飽きもせずに垂れ流しているだけだ。画面上はガチャガチャとうるさいのだが、観ている間に眠気さえ催してくる。中島哲也監督もヤキが回ったようだ。
突然失踪した高校生の娘・加奈子を探すため、父親で元刑事の藤島は形振り構わぬ暴走を開始する。学級担任やクラスメート、警察時代の部下などの関係者を訪ね歩き、時には暴力に訴えて加奈子の行動を問いただすが、やがて品行方正だと思っていた娘の“裏の顔”が浮かび上がり、藤島は愕然とする。深町秋生の小説「果てしなき渇き」(私は未読)の映画化だ。
マジメそうに見えた加奈子がどうしてアバズレに変じたのか、藤島はなぜ常軌を逸した行動を取るのか、そもそも娘探しのプロセスが観る者を納得させるだけのプロットを積み重ねていたのか・・・・そういった作劇上の重要ポイントはハナから捨象されている。支離滅裂の展開に、取って付けたような結末が用意されているのみ。
別に“まずはドラマの根幹を固めるべきだ”などと言い募る気はないのだが、ドラマツルギーを無視して外観上の奇態さに作品価値を丸投げすることが可能になるほど、この映画のエクステリアが上出来であるとはとても思えない。
どこかで見たような過激さ、既視感のある映像処理、凡庸なグロ描写、弛緩したバイオレンス場面、作っている本人だけが“先鋭的だろ? 面白いだろ?”と得意がっているような構成画面を延々と見せられるだけの本作に、既存のドラマ作りをブチ壊せるパワーなんかない。
主役の役所広司をはじめ、妻夫木聡や二階堂ふみ、橋本愛、國村隼、オダギリジョー、中谷美紀など、なぜかキャストは豪華だ。しかしながら、それぞれの出番が存在感を発揮することはなく、単なる顔見世興行のごとく泡沫的に通り過ぎてしまうのには脱力してしまった。特に加奈子に扮した新人の小松菜奈はヒドい。台詞回しも怪しい大根で、作品の価値を下げるのに大いに貢献している。当初の予定通り有村架純が演じるか、あるいは二階堂ふみと役柄を交代させた方が少しはマシになったかもしれない。
それにしても、この軽薄で無価値なシャシンを売り込むに当たって“学生早割1,000円キャンペーン”なるマーケティングを安易に採用した興行側の思慮の無さは如何ともし難い。いったい、何を考えて仕事をしているのか。