元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「オン・ザ・ロード」

2013-11-17 06:46:20 | 映画の感想(あ行)
 82年作品。製作は独立プロのジョイパックフィルム・ムービー・ブラザーズだが、配給は松竹が担当し、大林宣彦監督の「転校生」との二本立として公開された。

 白バイ警官である哲郎は、飲酒運転の車を追いかけている途中に、若い女の乗っていたスクーターに接触して転倒させる事故を起こしてしまう。哲郎の上司は相手は軽傷で大したことは無いと言うが、後に彼は相手の女性・礼子が実は重傷であり、退院後も歩行障害が残るためにファッションモデルの仕事を辞めざるを得なくなっていたことを知る。

 姉に付き添われて車で故郷に帰る礼子を、哲郎は謝罪するためにバイクで追いかける。ただそれは警察官としては越権行為であり、警察当局は哲郎を職務違反として追跡する。



 低予算映画ではあるが、展開はスピーディで退屈させない。映像面でも見せ場が多く、特に関門橋で検問を突破するあたりのキレ味はかなりのものだ。しかし、残念ながらあまり脚本が練られていない。

 職場を離脱した警察官が勝手に追いかけてきて、しかもそいつは“謝りたい”としか言わないというのは、どう見たってストーカーの一種だろう。映画は後半になると哲郎と礼子の間にロマンスらしきものが漂い始めるのだが、その背景がまったく描かれていない。こんな調子でラストに大立ち回りを演じてもらっても、観る方は納得しないのだ。

 なお、監督はピンク映画出身で本作が一般映画のデビューとなった和泉聖治。現在は「相棒」シリーズなどを手掛けていて、この頃に世に出た映画作家の中では成功した部類だろう。主演もこれが映画初出演だった渡辺裕之で、無骨ながら演技は及第点だ。

 ちなみに、彼が2007年に高速道路上で人命救助を行った際、駆けつけた警官に“「オン・ザ・ロード」を見てました”と言われたという(笑)。ヒロイン役の藤島くみはあまり印象に残らないが、姉に扮した秋川リサが女傑的な存在感を見せつける。
コメント
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