元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「片翼だけの天使」

2013-11-08 06:37:32 | 映画の感想(か行)
 86年作品。生島治郎原作の同名小説の映画化。出来としては大したことはないが、主演男優・二谷英明の渋いダンディズムを堪能する意味で、決して観て損は無い(笑)。

 離婚歴のある中年のミステリー作家・越路玄一郎は惚れた腫れたの色恋沙汰はもうたくさんとばかりに、禁欲的な生活に徹していた。ある日、船越は友人のカメラマンに無理矢理誘われて川崎の堀之内のソープランドに足を踏み入れる。そこで出会った韓国籍のソープ嬢・岡野景子に、年甲斐も無く恋心を抱いてしまう。

 何度も店に通う彼だが、その度に彼女に対する想いは募るばかり。一方の景子も彼のことを憎からず思うようになるが、彼女にはヤクザな旦那がいた。果たして船越と景子の恋は成就するのであろうか。

 原作者である生島の体験を元にした作品だが、いくらインテリ人種とはいえ、主人公の風俗店における振る舞いは“紳士的”過ぎて笑ってしまう。各所に御都合主義的な展開が施されて鼻白む思いだが、いくら“実録物”といってもかなりの脚色があるのだろう。

 ただ、これを二谷が演じると“まあ、いいんじゃないの”という気分にもなってくる。知っての通り、二谷は往年の日活スターの中でも突出してモテた(有名ハリウッド女優にまで手を出したらしい)。そのスマートな物腰はトシを取っても健在で、こんな一種浮き世離れした役をやらせても違和感が無い。

 舛田利雄の演出は可も無く不可も無しだが、雑味が無いので安心して観ていられる。三枝成彰の音楽も良い。また、ヒロイン役の秋野暢子は好演で、本作でキネマ旬報の主演女優賞を獲得している。脇の面子では景子の夫に扮するケーシー高峰と調子の良いカメラマンを演じたタモリが儲け役だ。
コメント
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