元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「シンプル・プラン」

2013-11-06 06:35:50 | 映画の感想(さ行)
 (原題:A Simple Plan )98年作品。スコット・スミスによる原作も読んだことがあり、その巧みな語り口を堪能したものだが、この映画化作品も出来が良い。

 雪に埋もれた山間の田舎町。小さな飼料店で働くハンクは妊娠中の妻サラと暮らしていたが、決して生活は楽ではなかった。クリスマスにハンクは兄のジェイコブとその友人ルーと共に両親の墓参りに出掛けるが、その際に森の中で墜落した小型飛行機を発見。中には操縦士の死体と400万ドルもの大金が転がっていた。

 幸か不幸か彼らの他には目撃者もおらず、ルーとジェイコブは金の着服を主張。最初は渋っていたハンクも、同意してしまう。彼はとりあえず大金を預かることにしたのだが、サラがそれを聞き及ぶに至り、事態は思わぬ方向に動き出す。



 金に目がくらんだ小市民達が引き起こすトラブルを、容赦なく描く。重量感のある演出、サスペンスフルな展開、火花を散らす演技合戦。どこをとっても一級の骨太人間ドラマだ。

 さて、問題はなぜこれを一見門外漢のようなサム・ライミ監督が撮ったかということ(笑)。

 もちろん真相は知らないが、私が思うに、ビリー・ボブ・ソーントン扮するジェイコブに自己投影し、撮らずにはおられなくなったのではないだろうか。メンタル部分に問題があり、仕事もできず、中年になっても女とキスしたことさえないオクテでオタクな人物は、たぶん“映画”という絶好の自己表現を持たなかった場合のライミ自身の“もうひとつの自分”をそこに見つけたのではないだろうか。

 ダニー・エルフマンの音楽とアラー・キヴィロの撮影は的確な仕事ぶり。ビル・パクストンやブリジット・フォンダ、ブレント・ブリスコーといった他のキャストも好調だ。
コメント
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