元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

LUXMANのセパレート型アンプを試聴した。

2012-11-05 06:53:05 | プア・オーディオへの招待
 我が国の代表的なオーディオメーカーであるLUXMANの製品を試聴できたのでリポートしたい。先日も同社の新型プリメインアンプのL-305を聴いた印象をアップしたが、今回の試聴会の主役は上級機のセパレート型である。

 ラインナップはプリアンプがC-600fC-800f、メインアンプがM-600AM-800A、CDプレーヤーがD-08D-05である。600シリーズが100万円で、800シリーズが200万円。この上に1000シリーズというのがあり、そっちは400万円なのだが、展示されていた製品でも十分高価であることは間違いない。なお、スピーカーは英国MONITOR AUDIO社のPL300が採用されていた。



 聴いた感じは、整然としたアキュレートな音であるとの印象を持った。高音から低音までほどよく出て、不自然な強調感はない。音像の捉え方や音場の広がりも申し分の無いレベルだ。600シリーズと800シリーズとではやはり情報量に差が出るが、一般的な認識からすれば、600シリーズでも十分な高音質だと言える。

 しかし、しばらく聴いているうちに以前同社のDAC(デジタル・アナログコンバーター)のDA-200に接したときのような、猛烈な違和感を覚えた。これは作為的な音だ。PL300は前に(他社のアンプで駆動した音を)何回も試聴していたが、こんなにワザとらしい音を出しているのに接したのは初めてなので、これはアンプのキャラクターによるものと考えて差し支えないだろう。

 これはまるで、マーケティング調査によって“オーディオファンが喜ぶ音造り”の何たるかを探り、それを手練れの営業マン達が合議制で練り上げたようなサウンドではないか。



 要するに、製品の送り手の“こういう音を聴かせたい”というポリシーがまるで伝わらないような音作りなのだ。確かに店頭効果は高く、この音が好きだというユーザーが多いことは分かる。しかし、少なくとも私には“血の通った音楽”は感じられなかった。聴いていて面白くないのである。

 前に聴いた同社のL-305の素晴らしさと、今回の高級セパレート機の低評価との“違い”は、ポリシーの有無によるところが大きいと思う。もちろん、600シリーズ等の製作コンセプトであろう“顧客の好みの最小公倍数を目指そう”というのも、まあポリシーの一つには違いない。しかし、そんな(ある意味)下世話な思惑は、高級オーディオに対するセンス・オブ・ワンダーとは程遠いものだ。

 対してL-305をはじめとする“ヴィンテージ路線”の製品には、エンジニアが考える“良い音”に対するポリシーが滲み出ている。やはり社長個人が手掛けた製品と、営業サイドの意向が大きく反映される(おそらくは)合議制によるプロダクツとは、根本から出来が違うと思わせる。

 ともあれ、もしも私がLUXMANのモデルを買うとしたら、L-305やセパレートアンプのCL-38uMQ-88uといった古くからの“ラックストーン”を踏襲したとモデルになると思う。アキュレートな方向性を目指したいと思えば、(国内メーカーならば)LUXMANではなくACCUPHASEの製品を選ぶだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする