元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「太陽の誘い」

2012-11-18 07:01:05 | 映画の感想(た行)
 (原題:Under Solen )98年作品。50年代のスウェーデンの農村。一人暮らしの中年の農夫オロフは、結婚も出来ないまま日々農作業に追われていた。遅ればせながら婚活に乗り出そうと、手始めに新聞にメイド募集の広告を出してみると、30代前半で都会育ちのエレンが応募してきた。二人きりの生活が始まり、オロフは彼女に恋心を抱くが、これまで女性と付き合ったことが無い彼は、勝手が分からず苦悩する。

 田舎暮らし、デブ、おっさん、文盲、恋愛経験ナシという“五重苦”の主人公が突然あらわれた女性との恋に邁進する姿を描くアカデミー外国語映画賞候補作。人物描写が的確で、奥手だった主人公が恋することによってみるみるうちにたくましい男に変身してゆく過程が丹念に示される。



 コリン・ナトリーの演出は丁寧で、主人公はもちろん、後ろ暗い過去を持ったヒロインの微妙な屈託や、友人ヅラして実は主人公を見下すことによってしかアイデンティティを確認できない若い男の扱いなどに感心させられる。ラストの処理など“人間、愛して信じれば生きる価値はある”という作者のポジティヴなスタンスが感じられて好ましい。

 主役のロルフ・ラスゴードとヘレーナ・ベリーストロムはもちろん日本では馴染みが無いが、キャラクターの内面を的確に表現していて好演だ。脇役のユーハン・ヴィーデルベリもイイ味を出している。

 そしてスウェーデンの田園風景の悩ましいほどの美しさ。特に白夜の神秘的な描写(低い太陽に照らされて外の風景が黄金色に輝くなか、ベッドに入って眠る)にはシビれた。少し上映時間が長いけど、まずは必見の秀作といえよう。原作者のH・E・ベイツは、「旅情」の脚本家としても知られている。
コメント
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