元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」

2011-06-07 06:40:05 | 映画の感想(さ行)

 (原題:SCOTT PILGRIM VS. THE WORLD)ファンタジー映画(?)の何たるかを、送り手が全く分かっていないような凡作だ。いくら設定と展開がデタラメでも、そのデタラメぶりを観客に納得させるようなドラマツルギーが必要である。そうしないと本作のように話が宙に浮いたまま、文字通りの絵空事にしかならない。

 トロントに住むスコット・ピルグリムは22歳の若造。仕事はそこそこにアマチュアバンドでベースをかき鳴らし、あとは仲間との他愛ないお遊びで日々を送っているという、要するにヘタレ野郎である。そんな彼が最近中国人の女子高生ナイブスと付き合うようになり、幾分生活に張りが出てきたと思ったら、いきなり運命の女性ラモーナに出会ってゾッコンになってしまう。

 ところがラモーナと付き合うためには、彼女の邪悪な元カレ7人を倒さなければならないというのだ。かくしてスコットはラモーナのため、次々に現れる元カレと対決することになる。もちろん、本人が二股かけているといういい加減さは思いっ切り棚に上げたままだ(爆)。

 観ていて困ったのは、次々と現れるおかしな元カレ(女の子も含む)とのバトルで、絵に描いたような草食系のスコットがクンフーの達人みたいな立ち回りで暴れ回ること。しかも敵方の出で立ちや技の数々が超現実的で、いくら殴り合いを繰り返しても双方傷一つ負わない。そして相手を倒したら、点数をあらわすテロップと共にコインがあたりに散乱するという奇天烈ぶり。

 これはつまり昔のテレビゲームのノリでおちゃらけをカマしてやろうという魂胆なのだが、それならそうとドラマ設定を吟味すべきだ。たとえば、主人公が電脳世界に迷い込んだとか(そりゃ「トロン」だな)、何かのはずみで超能力を身につけたとか(「スパイダーマン」みたいに)、そんな段取りを整えておかないとただの与太話にしかならない。

 加えて、この映画は不必要に長い。112分も引っ張るようなネタではないだろう。代わり映えのしない戦闘シーンの繰り返しには、いい加減飽きてくる。こういうイロモノはボロの出ないうちにサッと切り上げるべきだ(まあ、本作は最初からボロは出ているのだが ^^;)。随所に散りばめられているギャグも、タイミングが悪いせいかほとんど笑えない。

 主演のマイケル・セラは“良くも悪くもなし”といったレベルだし、ラモーナ役のメアリー・エリザベス・ウィンステッドもあまり魅力がない。それよりもナイブスに扮したエレン・ウォンや、スコットのゲイの友人役のキーラン・カルキンの方がまだ見ていて楽しい。そしてスコットの妹を演じるアナ・ケンドリックも「マイレージ、マイライフ」の時とは一味違った可愛らしさを見せている。だが、エドガー・ライトの演出が斯様に腰砕けなので、脇のキャストが面白いぐらいでは評価出来ないのだ。一部のゲームマニア以外は観なくてもよろしい。
コメント
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