元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

田原総一朗、姜尚中、西部邁「愛国心」

2011-06-14 06:44:14 | 読書感想文
 題名こそ「愛国心」だが、中身はイラク戦争をはじめとした昨今の時事ネタに言及した部分が多いため“「愛国心とは何か」を論じた本だろう”と思って本書を手にした読者は期待を裏切られる。少なくとも、最初から論をキッチリと練り上げたような書物ではないのは確か。しかも対談集という体裁を取っていて“司会”が田原総一朗だったりするものだから、いよいよ印象は「朝まで生テレビ」か「サンデープロジェクト」だ(笑)。

 でも、これはこれで楽しめる。特に面白いのは思想が正反対と思われた西部と姜との間に、意外と共通点が多いこと。その最たるものが、世相に異議を唱えるというスタンスだ。

 ヘタすれば“単なるヘソ曲がり”と受け取られる場合もあろう。だが、世論が単一方向にブレることが多い我が国では、彼らの主張は貴重だとも言える。文中の「現在サヨク叩きをやっている人達の多くは、左翼全盛のときには左翼だったんだよね(笑)。左翼が滅びてからなぜか右翼になっちゃった」というセリフが代表するように、現在のトレンドである「右」は「うす甘い左」がシフトしてきたにものに過ぎない。右だろうが左だろうが、それが「うす甘い」だけの風潮であれば、いっぱしの識者なら異議を唱えて当然であろう。うす甘くても「右」ならいいのだ・・・・といった感じで時代に迎合するエセ保守論客とは最も遠い位置にいる。そういう態度は評価されても良いかもしれない。

 それと、我が国に於ける愛国心の議論が「親米か、反米か」といった次元で停滞していることを姜が指摘しているが、そのあたりを読者が考えるのも無駄ではないだろう。
コメント
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