(原題:All or Nothing)2002年作品。「秘密と嘘」のマイク・リー監督が描く家族劇。ロンドン郊外の公営団地に住むしがないタクシー運転手の一家を中心に、日々を怠惰に送る住民たちの生活を描く。
カンヌ映画祭で大賞を獲得した「秘密と嘘」と同じく「家族の再生」をテーマにしているが、設定がかなり「特殊なケース(白人の母親と黒人の娘)」であった「秘密と嘘」と違い、どこにでもありそうなシチュエーションを採用したこの作品において、果たして主人公一家とは別に二組の家族を登場させてそれぞれ描写に時間を割く必要性があったのかどうか疑問の残るところである。ありふれた設定だからこそ、素材に対して集中的な作劇をするべきではなかったか。
しかも、別の二家族のエピソードは映画として起承転結を付けておらず、最初から「脇役」としての扱いしかする気がなかったことがミエミエであり、これなら完全にカットしてしまった方がよかった。脚本のもう一歩の詰めが欲しいところである。
とはいえ、メインのタクシー運転手一家の描写は見事だ。妻だけが気丈に振る舞っているが、一家の主人は生活に疲れ、息子と娘は生きる気力もない。四人でテレビを見ながら食事するシーンは「形骸化した家族」の空虚感を如実にあらわして出色である。
そんな彼らが息子の急病を機に自らの生き方を問い直そうとする終盤の展開はリー監督の独擅場。苦しい胸の内をさらけ出すような台詞の応酬は、まさに目もくらむ心理サスペンスだ。特に、家庭における自分の居場所を見出せない主人公の独白は、本音と建前の板挟みに苦しむ我々の胸中を代弁しているようでもあり、観ていてたまらない気持ちになる。それをまた作者が肯定的に捉えているところも素晴らしい。
我々も邦題の通り「辛い人生にも、時々晴れ間は覗く」ことを信じて生きたいものだ。主人公役のティモシー・スポールをはじめ、一家に扮するキャストは全て好演。欠点もあるが、観て決して損はしない。
カンヌ映画祭で大賞を獲得した「秘密と嘘」と同じく「家族の再生」をテーマにしているが、設定がかなり「特殊なケース(白人の母親と黒人の娘)」であった「秘密と嘘」と違い、どこにでもありそうなシチュエーションを採用したこの作品において、果たして主人公一家とは別に二組の家族を登場させてそれぞれ描写に時間を割く必要性があったのかどうか疑問の残るところである。ありふれた設定だからこそ、素材に対して集中的な作劇をするべきではなかったか。
しかも、別の二家族のエピソードは映画として起承転結を付けておらず、最初から「脇役」としての扱いしかする気がなかったことがミエミエであり、これなら完全にカットしてしまった方がよかった。脚本のもう一歩の詰めが欲しいところである。
とはいえ、メインのタクシー運転手一家の描写は見事だ。妻だけが気丈に振る舞っているが、一家の主人は生活に疲れ、息子と娘は生きる気力もない。四人でテレビを見ながら食事するシーンは「形骸化した家族」の空虚感を如実にあらわして出色である。
そんな彼らが息子の急病を機に自らの生き方を問い直そうとする終盤の展開はリー監督の独擅場。苦しい胸の内をさらけ出すような台詞の応酬は、まさに目もくらむ心理サスペンスだ。特に、家庭における自分の居場所を見出せない主人公の独白は、本音と建前の板挟みに苦しむ我々の胸中を代弁しているようでもあり、観ていてたまらない気持ちになる。それをまた作者が肯定的に捉えているところも素晴らしい。
我々も邦題の通り「辛い人生にも、時々晴れ間は覗く」ことを信じて生きたいものだ。主人公役のティモシー・スポールをはじめ、一家に扮するキャストは全て好演。欠点もあるが、観て決して損はしない。


