元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「トゥームストーン」

2007-01-19 06:52:47 | 映画の感想(た行)
 (原題:Tombstone)93年作品。“OK牧場の決闘事件”を扱った西部劇だが、同じネタで同時期に封切られた「ワイアット・アープ」よりはるかに面白い。理由は明らかで、「ワイアット・アープ」みたいに暴力がはびこるアメリカ社会への警告だとか、主人公の内面的葛藤とか(しかも結果として描ききれていない)、大河ドラマ的風格とか、そういう評論家受けしそうな二次的ファクターに全然色目を使っていないことである。

 冒頭、当時のフィルムをバックに、南北戦争直後の西部はならず者の天下となり、犯罪発生率は現代のニューヨークの比ではなかったことが語られる。そして観客に向かってズドンと一発。コンセプトとしては現在の大都市を舞台にした刑事アクションものと変わらないオープニングであり、最初から“これは純然たる娯楽作品だよ。虚構の話なんだよ(史実だけど)”と宣言しているようなものだ。それならそれで構えて観る必要はないわけで、単純な娯楽活劇としての評価しか出てこない。この選択は正解だった。

 ワイアット・アープにカート・ラッセル、ドク・ホリデイにバル・キルマー、ジョニー・リンゴにマイケル・ビーン。貫禄はないかわりに、若々しい無鉄砲さがみなぎるキャスティングで、ひょっとして実際のアープたちに近い造形なのかもしれない。悪党どもも見るからに悪人で、「ワイアット・アープ」のように“悪人にも必然性がある”などと思わせぶりな姿勢は微塵も見せない。ワイアットとドクの友情は青春映画のそれで、女性関係もサラリと流す。

 加えて監督は「ランボー/怒りの脱出」(85年)のジョージ・P・コスマトスだから、痛快アクション劇としての面白さは十分だ。OKコラルの決闘は史実では2分少々の出来事らしいが、使われた弾丸は40発以上。いかに激しい戦いだったかわかるが、これをコスマトスは見事に再現。たたみかける演出でイッキに見せる。その後のアープ一派と悪党どもの追撃戦も手を抜かない。草原を駆ける馬をバックに、次々と悪党を血祭りにあげる疾走感はなかなかだ。

 ラストは本編では描かれなかった、OKコラルに向かうアープたちの雄姿をスローモーションで再現するファン・サービスまである。娯楽映画のツボを押さえた快作。西部劇に文芸路線や社会派ドラマはやっばり似合わないことを実感する(ま、例外もあるが)おススメの一本である。
コメント
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