元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「八つ墓村」

2007-01-11 08:41:58 | 映画の感想(や行)
 96年作品。「犬神家の一族」は未見だが、 市川崑監督は90年代にも横溝正史作品を一度映画化しており、それが本作。

 つまんない映画だ。まず、過去に2度映画化され何回もTVドラマになり、劇画にもなったこの題材を撮り直す必然がまるでない。だいたい原作は横溝正史の作品の中でもミステリーという観点ではランクが落ちる。しかも、今回は謎ときに何も新しい解釈が加えられておらず、元ネタをなぞるにとどまっているため、犯人は観る前から分かったも同然。原作読んでいなくてもカンの鋭い人なら始まって10分足らずで事件の概要がつかめてしまうだろう。

 それではこの題材のもう一つの興味である伝奇的おどろおどろしさは表現されていたか。これもダメだ。77年版(野村芳太郎監督)の敵ではなく、表面的なコケおどかしに終始するだけだ。

 ならばキャスティングは、演技面ではどうか。実はこれが一番面白くない。豊川悦司の金田一は誰が考えたか知らないが、こんな中身のないキャラクターが画面の真ん中にいること自体腹が立つ。アッと驚く推理も見せず、やることなすこと後手後手で(ま、原作がそうだからしょうがないが)、口に出るのは勿体ぶった講釈ばかり。見かけだけのデクノボーだ。重要なキャラクターである浅野ゆう子にいたっては“お前は単なる狂言廻しかっ!”と言いたくなるほど実体感がなく、説明的セリフの洪水には呆れ果ててしまう。一人三役の岸部一徳も本気で演技していないし、高橋和也や萬田久子は昼メロ程度の仕事しかやっていない。岸田今日子の一人二役ハイヴィジョン合成演技はただの“余興”としか思えず、加藤武の“よし、わかった!”も何を今さらという感じだ。まあまあ印象に残ったのは喜多嶋舞のパッパラ演技ぐらいか。

 公開中の「犬神家の一族」はいずれ観る予定だが、あれも本作と同じく昔ながらの手法を踏襲しているらしいし。あまり期待できないかもしれない・・・・。
コメント
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