その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

桐野夏生 『バラカ』 集英社 2016

2016-05-06 00:00:30 | 


 現代テーマを扱ったミステリー。原発被災者の棄民化、権力による情報操作、世界中で行われている子供の売買市場等、ニュースで知る、私には日常の向こう側の出来事がよりリアルに感じられる。緊張感あり、テンポよしで、一気に読める。

 難点は、小説とは言え、登場人物が現実的でないほど相互に関連して、ストーリー展開が上手くできすぎている感じがするところだろうか。リアリティーがあるようで、リアリティーが感じられないもどかしさは残る。

 現代的で骨太なテーマを扱った作者の問題意識には、大いに共感するだけに、やや不完全燃焼感があったのは残念だが、力作であり、十分一読に値する。


コメント
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