恥ずかしながら、筆者の梨木 香歩という作家のことはほとんど知りませんでしたが、とっても有名な児童文学作家とのことです。家族が読んだままテーブルに置き放しになっていたので、なんとなくページをめくっていたら、引き込まれるように読み切ってしまいました。
本書は、筆者が学生時代に下宿していたイギリス、エセックス州のS・ワーデン(検索してみたけど、綴りが違うのか、場所は特定できず)の大家さんウェスト夫人と取り巻く人たちについて描いたノン・フィクッション(随筆?)です。スマートに切り取った夫人との交流エピソードは、とても読みやすく、微笑ましいものですが、筆者の思考の射程は異文化・異民族理解、差別、コミュニティ、人について注がれ、読む者にいろんな事を考えさせます。
全編を通じて、人に対する筆者の温かい眼差しと高い感受性、そして、洗練された文章が印象的です。古き良きともいえるような市井のイギリス人ウェスト夫人を通して、イギリス人の懐の広さも上手く表現されています。
作者の文章を通じてウェスト夫人の行動や筆者の考えを追っていくと、異文化、異民族というものは簡単に理解できるものではない(むしろわかることはない)ということを理解し、それを受け入れることが、如何に大切であり、難しい事であるかということに改めて気付かされれます。3年半ばかしイギリスで生活したぐらいで、「イギリス人はさあ・・・」とか「イギリスはねえ・・・」と分かったような顔をして語る自分を恥じ入ること大でした。
読みやすい本ですが、味わい深い一冊です。
>S・ワーデン
Saffron Waldenかもしれないですね。
Saffron Waldenで間違えないと思います。本の記述とも符合しますので。SはSouthだとばっかり思ってました。
早速、読んで頂き、紹介した者としては嬉しい限りです。エストニア紀行、読まれたら感想を教えてください。