その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

西永 良成 『「レ・ミゼラブル」の世界』 (岩波新書、2017)

2017-05-06 08:00:00 | 


 「今日のフランスでも、聖書の次に読まれている」というヴィクトール・ユゴーの小説『レ・ミゼラブル』について、あらすじ、物語の時代設定、執筆時のユゴーの状況、作者の思想などを解説した一冊。

 小説は学生時代に1回読んだきりだが、ミュージカルや映画では何度も見ている「レ・ミゼラブル」について理解が深まり、世界史と物語がつながるなど、知的な好奇心をくすぐられる。

 私としては、物語のクライマックスに、1832年のパリの民衆蜂起という歴史の教科書ではメジャーとは言えない事件が取り上げられているのかがいつも不思議だったのだが、その疑問も解けた。共和制主義者ユゴーは、32年の6月蜂起に共和制の理想を見たのだ。

 また、ジャン・ヴァルジャンの誕生年がナポレオン1世と同じであり、両ナポレオン(ナポレオン1世と3世)との関係性が物語の形成に大きな影響を与えていること、自らの青年時代をマリウスに投影させていることなども初めて知った。巻末に、当時の実世界での出来事、ユゴーの人生、物語の出来事が並列して年表で整理してあるのはとっても嬉しい。

 近年にちくま書房から新訳を発表した著者ならではの知見、見識が披露されており、レ・ミゼ好きにはたまらない一冊だ。

《目次》
第1章 『レ・ミゼラブル』とはどんな小説か
第2章 ふたりのナポレオンと『レ・ミゼラブル』
第3章 再執筆とナポレオンとの訣別
第4章 ジャン・ヴァルジャンとはどういう人物か
第5章 「哲学的な部分」とユゴーの思想

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第4回 UP RUN稲毛海浜公園マ... | トップ | ユネスコ無形文化遺産のある... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。