4つの楽曲がオール・シベリウス、そしてそのすべてに男声合唱が入るという、パーヴォさんらしいユニークな構成。N響、エストニア国立男性合唱団、そして後半の「クレルヴォ」で登場したヨハンナ・ルサネンとヴィッレ・ルサネンら夫々がレベルの高いパフォーマンスを発揮し、プログラムを堪能した。
1,2曲目は初めて聴く曲だったが、3曲目のフィンランディアを合唱付きで聴くのも初めて。「フィンランディア」はN響の厚い音圧と抑制のきいたエストニア国立合唱団の組み合わせが美しく、背筋が伸びる演奏。
後半の「クレルヴォ」はフィンランドの民族叙事詩『カレワラ』の一部を取り上げたものだが、聴くのは初めて(以前、フランクフルトオペラでアウリス・サッリネン作曲のオペラの実演に接したことはあり)。シベリウスらしい民族色豊かな音楽で、初めての私にも聴きやすく、感情移入できるものだった。
この物語、クレルヴォとその妹との近親相姦が描かれるが、独奏者のソプラノのヨハンナ・ルサネンとバリトンのヴィッレ・ルサネンも姉弟とのこと。両名とも迫力満点の熱演だった。N響とエストニア国立男性合唱団のコラボから、壮大な歴史絵巻が瞼に浮かぶようである。
終演後、大活躍のエストニア国立合唱団にはとりわけ大きな拍手が寄せられ、オケが解散した後、合唱団の全員がステージから去るまで、会場からは拍手が続いた。それなりに長く会員を続けている私も、あまりこうした光景は記憶がない。私も拍手に参加したが、気持ちの良い拍手だった。こうした合唱団を招聘できたのもパーヴォさんのコネクションなのだろう。
先週・今週と、今シーズンのN響の更なる飛躍を期待させてくれるのに十分な演奏会だった。
第1892回 定期公演 Cプログラム
2018年9月22日(土)
開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール
シベリウス/「レンミンケイネンの歌」作品31-1
シベリウス/「サンデルス」作品28
シベリウス/交響詩「フィンランディア」作品26(男声合唱付き)
シベリウス/「クレルヴォ」作品7*
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ソプラノ*:ヨハンナ・ルサネン
バリトン*:ヴィッレ・ルサネン
男声合唱:エストニア国立男声合唱団
No.1892 Subscription (Program C)
Saturday, September 22, 2018
3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall
Sibelius / "A Song for Lemminkäinen", op.31-1
Sibelius / “Sandels”, op.28
Sibelius / “Finlandia”, tone poem op.26 (Version for Male Chorus and Orchestra)
Sibelius / “Kullervo”, op.7*
Paavo Järvi, conductor
Johanna Rusanen, soprano*
Ville Rusanen, baritone*
Estonian National Male Choir, male chorus