何とも言い難い、苦い後味が残る映画である。原題はDeath of Stalin(邦題はなかなかうまく訳したと思う)。スターリン死の直前から、その死、そして死後の跡目争いが描かれる。コメディ・ジャンルに分類されていたのだが、ブラック・コメディもここまでくると背筋が寒くなる。
スターリンの粛清の描写が恐ろしい。スターリンの機嫌を損ねることを怯える人、メニューの料理を選ぶかのようにリストから指名される処刑者、問答無用で連れ去られるリストから選ばれた市民。コメディタッチに描かれているとは言え、こうした世界が70年前に存在していたと思うと恐ろしい。
側近たちの後継者争いの駆け引き、策謀も凄まじい。コミカルには描かれているが、現実には生死をかけたギリギリの権力闘争が展開されていたこと容易に想像できる。近づきたくもない世界だ。
好き嫌いは分かれる映画だし、気分が晴れたり、元気になる映画でもないが、見て損はない。細かい史実との相違は少なからずあるようだが、時代の雰囲気を知るには良いと思うし、独裁者の世界や非自由社会に戻ることがあってはならないというのが分かるだけでも良い。
監督:アーマンド・イアヌッチ
製作:ヤン・ゼヌー ローラン・ゼトゥンヌ
製作総指揮:ケビン・ローダー
原作:ファビアン・ニュリ
脚本:アーマンド・イアヌッチ デビッド・シュナイダー イアン・マーティン ピーター・フェローズ
撮影:ザック・ニコルソン
美術:クリスティーナ・カサリ
キャスト
フルシチョフ:スティーブ・ブシェーミ
ベリヤ:サイモン・ラッセル・ビール
マレンコフ:ジェフリー・タンバー
モロトフ:マイケル・ペイリン
ミコヤン:ポール・ホワイトハウス
ジューコフ:ジェイソン・アイザックス
スヴェトラーナ:アンドレア・ライズボロー
ワシーリール:パート・フレンド
アンドレーエフパ:ディ・コンシダイン
マリヤ:オルガ・キュリレンコ
スターリン:アドリアン・マクローリン
カガノービチダー:モット・クロウリー
ブルガーニン:ポール・チャヒディ