エル・グレコ展を観に東京都立美術館を訪れました。エル・グレコは、取り立てて個人的好みという訳ではないのですが、絵の前に立つとぐーっと引きつけられてしまう不思議な絵です。ロンドン滞在中はナショナル・ギャラリーにも何枚かありましたので良く見ていましたし、大陸ではお膝元のプラド美術館に多く展示されていました。今回は、「日本で開かれたエル・グレコの個展で過去最大の規模」(展覧会HP→)ということですので、大変楽しみにしていました。
3連休最終日の月曜日ということで、通勤列車並みの館内混雑を覚悟していたのですが、この手の大型展覧会としては混雑は控えめでした。待ち時間無しで入館できましたし、ゆっくりとマイペースでというまでにはいきませんが、人込みで不愉快な思いをすることなく鑑賞できました。
会場は、エル・グレコによる肖像画や宗教画が約50点展示されています。大型の絵は少なく、作品数も大量と言う程ではないのですが、なんせ1枚1枚の絵がものすごく強いエネルギーを発していますから、正直、終盤に差し掛かるころになると、「絵のエネルギー」対「自分のスタミナ」の対決になります。私自身、後半はややバテ気味。
《枢機卿としての聖ヒエロニムス》ロンドン・ナショナルギャラリー
《神殿から商人を追いだすキリスト》
※展示品はバレス・フィサ・コレクション、マドリードのものでしたが、この画像ファイルはロンドン・ナショナルギャラリー蔵の絵のものです
いつもながらですが、一目でエル・グレコの絵と分かる細長い人物の顔や独特の筆遣い、色使いが特徴的です。細長く、彫の深い人物顔はなんか漫画っぽく見えてしまうところもありますが、教会の祭壇画としても描かれたエル・グレコの絵は、一度、教会の中で見てみたいと思いました。
圧巻は本展の最大の目玉でもある「無原罪のお宿り」(冒頭のチラシの絵)です。縦3メートル以上ある、この絵を眺めていると、自分自身が神に召されて天上に昇るような気持ちにさせられます。多くの観覧者がやっていましたが、この絵は是非、絵の前で膝をつき、祭壇画を崇めるように鑑賞するのが良いと思います。周囲の人々が消え、自分が美術館に居ることすら忘れ、ヨーロッパの人気のない教会に礼拝に来ているような感覚になります。
エル・グレコの絵は、半生を過ごしたトレドに多く残されているそうです。会場にはトレドの写真も掲示されていました。マドリッドから電車で近いということすら知らなかったので、マドリッドを訪れた時に足を延ばさなかったことが悔やまれます。
美術史に残る画家の引力に引きつけられっぱなしの2時間弱でした。
2012年2月11日