その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

N響/ ヒュー・ウルフ指揮/ 「ロメオとジュリエット」組曲 第1、2番(抜粋)(プロコフィエフ)ほか

2013-02-10 19:27:14 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 東京の冬の空は、抜けるような雲ひとつない青空。コンサートに行くというより、Walkingにでも出かけたくなるような暖かい気候のなか、N響の定期演奏会へ行きました。今日は、N響に初登場のアメリカ人指揮者ヒュー・ウルフ。私も初めて聴く指揮者です。席はいつもの3階自由席1500円(貧民席)です。

 1曲目はルイスによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。プログラムによるとプロムスでベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を演奏したというポール・ルイスのピアノは十八番という言葉どおりの、堂々たる演奏でした。クリアで力強い打鍵で、音に曇りがありません。今日の青空のように、明快で見通しの良い演奏です。聴いていて、音がダイレクトに胸に響き、痺れます。この曲は体の一部とでも言わんばかりの慣れた演奏ぶり。オーケストラも熱演で、ピアノ独奏としっかりかみ合っていました。重層的でうねりのある演奏で、「皇帝」の王道を行くとでも言わんばかりです。久しぶりに生で聴く5番ですが、大満足でした。

 休憩をはさんで2曲。1曲目は、イギリス人作曲家トーマス・アデスという作曲家のオペラ「パウダー・ハー・フェイス」から「ダンス」。日本初演です。現代音楽にしては聴きやすく、変化のあるリズムと描写的な音楽はいかにもオペラの音楽。プロコフィエフのオペラ音楽に多少似たところもあり、私的には好みでした。オペラも観てみたい。

 そして、最後は、プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」からの抜粋版。これが素晴らしい劇的な熱演でした。ウルフは暗譜で、オーケストラを煽ります。丁度、同日同じ時間帯で東京芸術劇場でフィルハーモニア管を指揮しているサロネンにも似たスマートで理知的な指揮ぶりですが、サロネンよりも情熱的な気がします。そして、N響は見事にウルフの棒に応えます。強弱のメリハリがはっきりしていて、音楽が立体的で美しく、ドラマティック。「ロメオとジュリエット」のバレエは見たことない私ですが、バレエシーンが目に浮かぶほどの表現です。コクとキレのある演奏で、弦と管のバランスも抜群。3階席まで音圧を感じるほどの金管の大音量は久しぶりに聴いた気がしました。

 馴染のないウルフだったのですが、前回のアクセルロッドに続き、嬉しい大誤算。感動というよりも、すかっと爽やかに大満足の演奏会でした。


※ポール・ルイスのアンコール曲

第1748回 定期公演 Aプログラム
2013年2月10日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm

NHKホール

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
アデス/歌劇「パウダー・ハー・フェイス」(1995)から「ダンス」(2007)[日本初演]
プロコフィエフ/「ロメオとジュリエット」組曲 第1、2番(抜粋)

指揮:ヒュー・ウルフ
ピアノ:ポール・ルイス
コメント (6)
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