環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

あれから40年 2010年は混乱か?-その4   デニス・メドウズさん vs 茅陽一さん 

2009-05-01 21:26:31 | 環境問題総論/経済的手法
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
  





下の図をクリックしてください。
 


昨日(4月30日)の朝日新聞の夕刊に、来日中のデニス・メドウズさんへのインタビュー記事が掲載されました。




記事のポイントは3つあります。

①今後100年間で人類が最も困難になるのは2030年ごろだと思っている。今後はエネルギーの不足、水の問題、食糧問題など「負の圧力」がさらに大きくなるからだ。(私は「このまま行けば、2010年は混乱、2050年は大混乱?」と考えていました。)

②金融危機に始まった今回の危機は「短期的」と思われがちですが、実は今後30年続く危機が始まったばかりだと思う。

「持続可能性(サステナビリティ)」とは、原子力や炭素吸着といった技術の進歩がもたらすわけではなく、人間の意識・態度の問題である。だから難しい。

この中で、今日は特に③の持続可能性とは原子力や炭素吸着といった技術の進歩がもたらすわけではない」というメドウズさんの発言に注目したいと思います。日本は「原子力」と「炭素吸着」の技術開発に熱心です。2005年頃から「低炭素社会」に向けて「原子力」と「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」技術の推進が顕著となってきました。一方、スウェーデンは持続可能性の観点から「原子力」や「炭素吸着」の技術開発にはそれほど熱心ではありません。原子力を段階的に時間をかけて廃止し、化石燃料からも脱却する方針です。

関連記事
またしても、ミスリードしかねない「スウェーデンの脱原発政策転換」という日本の報道(2009-03-21)

緑の福祉国家15 「気候変動」への対応④(2007-01-26)


故意か、単なる偶然か、わかりませんが、興味深いことに、メドウズさんへのインタビュー記事が掲載された前日の4月29日の朝日新聞には、次のような全面広告が掲載されました。

●最先端技術(CCS)で創る低炭素社会」

この広告記事によりますと、このCCSの実用化を目指し、日本の一流会社29社が結集して、2008年5月に「日本CCS調査株式会社」が設立されたそうです。日本政府は「低炭素社会づくり行動計画」において、2020年までにCCSの実用化を目指すと明記しているそうです。

そして、この広告記事の中に、この技術に対する茅陽一さんの期待を込めた次のようなコメントが出ています。

茅さんは、「CCSは化石燃料の利用とCO2のゼロエミッションを同時に達成するので、低炭素社会への移行期の温暖化対策としてまたとない重要な対策技術といえる」とおっしゃっていますが、ほんとうにそのようにお考えなのでしょうか。

96年の第11回原子力円卓会議(最終回)(この円卓会議の議事録の最後の茅さんの結びの発言をぜひご覧ください)で同席した頃までの茅さんのシステム論に基づくお考えに、私は大きな期待と関心を寄せていたのですが、その後、お話を聞く機会を逸しており、久しぶりに今回の記事で最近のお考えを拝見したというわけです。このCCSという技術体系は、私には途方もない莫大なコスト(実用化するまでに、そして、その後の維持費)がかかる技術のように思えます。しかも、この技術が実用化できるかどうかは2020年までかかるとのことです。だとすれば、それまでの化石燃料の消費をどうするかという計画も同時に示されなければならないと思います。予定通り実用化に成功しても。実用化に失敗する可能性もあるからです。

今回のCCS技術に関する茅さんのコメントは、メドウズさんのお考えとは正反対といってよいでしょう。皮肉なことに茅さんは、メドウズさんの「成長の限界の3部作」の2番目「限界を超えて」の監訳者なのです。




私は、「生きる選択 限界を超えて」に寄せられた茅さんの「監訳者のあとがき」にいたく感動した記憶があります。改めて、17年ぶりにこの本を取り出し、当時の感動を再確認しました。あの感動をぜひ皆さんと分かち合いたいと思い、ここに、紹介します。

●監訳者あとがき p371~372

●監訳者あとがき p373~374

●監訳者あとがき p375~376


関連記事
あれから40年 2010年は混乱か?-その1

最新の画像もっと見る

コメントを投稿