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「持続可能な社会」をめざす国際社会と独自の「循環型社会」をめざす日本

2007-09-30 10:31:16 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
 

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今日は国際社会がめざす「持続可能な社会」と日本がめざす「循環型社会」という言葉の概念(意味)の相違について少し考えてみます。

2000年以前は、日本の「循環型社会」の概念に対する議論は環境分野の専門家の間でも混乱していました。私の考えでは、1990年代前半に日本で議論されていた「循環型社会」の概念は、国連の環境と開発に関する世界委員会(WCED)が提唱した「持続可能な開発/社会」に沿ったあるいは類似した概念であったと思いますが、90年代後半の「循環型社会」の概念はしだいに日本独自の概念に変質してきました。

ですから、90年代前半までに私が書いた記事や講演では、「持続可能な社会」と「循環型社会」という2つの概念をほとんど同義語と考えていましたので、必要に応じて「持続可能な社会(循環型社会)」と表記していました。しかし、90年代後半に両者に相違があると感じるようになり、2000年5月の「循環型社会形成推進基本法」の成立以降、私は両者をはっきりと意識して、その相違を提示してきました。

環境省は1993年成立の「環境基本法」の第12条に基づいて毎年「環境白書」を刊行しています。2002年には、2000年成立の「循環型社会形成推進基本法」の第14条に基づいて、初めての「循環型社会白書」を刊行しました。つまり、2つの別の法律に基づいて別の白書が刊行されたのです。

次の図は平成14年(2002年)の「循環型社会白書」と同年の「環境白書」です。




環境白書の副題として「動き始めた持続可能な社会づくり」と書いてあることに注意してください。「循環型社会」と「持続可能な社会」という2つの、概念が異なる社会を構築しようとしているかのようです。

日本の行政サイドやマスメディアでは、2000年5月の「循環型社会形成推進基本法」の成立に合わせてそれを支える個別法(廃棄物処理法、資源有効利用促進法、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、建設リサイクル法、食品リサイクル法、グリーン購入法)が整備されたので、「循環型社会の構築をめざす法的な枠組みが整った」と言われていますが、私は、この法律の成立によって日本の「循環型社会」の概念は完全に「廃棄物問題」に矮小化されてしまったと考えています。

しかし、この個別法を見てもわかるように、これらはすべて廃棄物処理とリサイクルに関する法律ばかりです。さらに、この循環型社会形成推進基本法の第2条の「循環型社会の定義」は、以下に示すように、極めて難解です。

X X X X X 
第2条 この法律において「循環型社会」とは、製品等が廃棄物等となることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分(廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)第2条第1項に規定する廃棄物をいう。以下同じ。)としての処分を いう。以下同じ。)が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会をいう。

この法律において「循環資源」とは、廃棄物のうち、有用なものをいう。
この法律において「循環的な利用」とは、再使用、再生利用及び熱回収をいう。
X X X X X 
 
この定義を見る限り、この法律は「循環型社会」 の名を冠してはいますが、その実態は「廃棄物処理・処分基本法」と称すべきものでWCEDが提唱した「持続可能な社会の概念」とは大きく異なる日本独自の概念です。

第2条の定義は、「持続的な経済成長(現行経済の持続的拡大)」という2002年2月4日の施政方針演説で小泉政権が掲げた政治目標の下で、日本が21世紀に進むべき廃棄物政策の方向と手段に関する定義ではあっても、国際社会がめざす「21世紀社会のビジョンである持続可能な社会」の定義ではありません。そのことは循環型社会の形成にあたって、エネルギー体系の転換に一切触れていないことからも明らかです。

ところで、今年(平成19年版)の「環境白書」と「循環型社会白書」はどうなっているのでしょうか。次の図をご覧ください。両者は合体しました。その理由をご覧ください。図の右側に「刊行に当たって」から抜粋した記述にも2つの言葉が出てきます。

この2つの言葉の使用に、「環境省が混乱はない」というのであれば、循環型社会の形成とは日本の政治目標である「持続的な経済成長」の下で生じる廃棄物対策以外の何物でもないと理解するよりつじつまが合いません。敢えて2つの言葉を意味づければ、21世紀に国際社会がめざす「持続可能な社会」という大きな概念の中に日本の独自の「循環型社会」という小さな概念が入っていると理解することになります。

しかし、日本は「持続的な経済成長」のために、さまざまの政策や法整備を行っていますが、 まったくと言ってよいほど「持続可能な社会」を構築するための法体系が未整備であることを指摘しておかなければなりません。

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1 コメント

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Unknown (うずら)
2007-09-30 17:04:47
家電製品のクーラーや暖房を使わずに、快適な家やマンションを作るには、タンクに水を貯めて、パイプを床下や壁横に通して、夏は水を冷やして家を冷やし、冬は水を温めて家を暖めるのがいいのですか?

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