環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

緑の福祉国家5 21世紀へ移る準備をした「90年代」②

2007-01-15 04:50:19 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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★未来社会の環境の状況について(91年10月)
ブルントラント報告が公表される以前から、発展途上国への援助を通して「持続可能な開発」を試みてきたスウェーデンが描く「持続可能な社会」の環境的側面の要約が、スウェーデン環境保護庁が91年10月に公表した「未来社会の環境状況について」と題した資料の中に提示されています。

私は自然保護との関係で⑧がわかりやすいと思います。70年代頃までは、日本のどこにでもいたメダカやドジョウ、タナゴなどの魚、フジバカマのような野草は今絶滅が危惧されていますし、日本の普通の景観であった里山や棚田の現状をみれば、日本の状況の厳しさが実感できるでしょう。そして、⑨にバイオ技術で世界の最先端を行く、予防志向の国スウェーデンの「バイオ技術」に対する見識が見てとれると思います。

この要約に基づいて、「持続可能な社会」をイメージすれば、日本の現状は明らかに持続可能ではないといえるでしょう。持続可能な社会とは従来のSF小説や未来小説にしばしば登場する巨大なコンクリート構造物の間を高速交通が縫うように走り回る、電子機器に囲まれた都市型社会とはまったく正反対の、豊かな自然の中で環境にやさしい適正規模の科学技術が定着した落ち着いた社会となるでしょう。

一世を風靡した「手塚治虫の鉄腕アトムの世界」「真鍋博のイラストの世界」とは大きく異なります。そこには日本の行政当局者や多くの環境・エネルギー関係者が理解する「持続可能な開発/持続可能な社会」の概念とは大きな認識の相違があります。

★「循環政策」(92年6月)
「自然循環と調和した社会の実現」をめざすガイドラインとなる「循環政策(エコサイクル:環境の新たな展望)」(自然循環システムと調和した社会の実現をめざすガイドライン)が国会で承認され、これまでの「福祉国家」を「緑の福祉国家」に変える第一歩を踏み出す法的な基礎ができました。
循環政策の焦点は「廃棄物に対する製造者責任制度」、「廃棄物税の検討」、「化学物質の監視」などです。
 
★経済発展のための政策(95年11月)
「経済発展のための政策」は「税金」「教育」「労働」に関する権利と「環境問題」を包括的にとらえたもので、この政策の目玉は、税金部門の「課税対象の転換」でした。

★「緑の福祉国家の実現」というビジョンを掲げた施政方針演説(96年9月17日)
ペーション首相は施政方針演説で、「スウェーデンは生態学的に持続可能性を持った国をつくる推進力となり、そのモデルとなろう。エネルギー、水、各種原材料といった天然資源の、より効率的な利用なくしては、今後の社会の繁栄はあり得ないものである」と述べました。これは、「福祉国家」を25年かけて「緑の福祉国家」に転換する決意を述べたものです。

首相がこのビジョンを実現するための転換政策の柱としたのは、「エネルギー体系の転換」「環境関連法の整備や新たな環境税の導入を含めた新政策の実行と具体的目標の設定」、「環境にやさしい公共事業」、「国際協力」の4項目です。

この演説のなかで、 「持続可能な開発」に対するスウェーデンの解釈が明らかになっています。英文では、つぎのように表現されています。

Sustainable development in the broad sense is defined as community development that meets the needs of the present without compromising the ability of future generations to meet their own needs.

ここでは、「広義の持続可能な開発とは、将来世代が彼らの必要を満たす能力を損なうことなく、現世代の必要を満たす社会の開発」と定義されています。 

重要なことは「社会の開発」であって、日本が理解する「経済の開発、経済の発展や経済の成長」ではありません。資源・エネルギーへの配慮を欠いた経済成長は「社会」や「環境」を破壊する可能性が高いからです。

首相は施政方針演説後の記者会見で「緑の福祉国家の実現を社民党の次期一大プロジェクトにしたい」と語り、「スウェーデンが今後25年のうちに緑の福祉国家のモデル国になることも可能である」との見通しを示しました。ここに、明快なビジョンが見えてきます。

記者会見で首相は、「各世代が希望に満ちた大プロジェクトを持つべきだ。それぞれの世代にビジョンが必要だ。私たちの前の世代のビジョンは、貧しかったスウェーデンを『福祉国家』にすることだった。いまの私たちのビジョンは、スウェーデンを『緑の福祉国家』に変えることだ。この仕事は若い閣僚が目標を立て、プロジェクト推進の原動力になるのが自然だ」と述べ、若い閣僚に政府の主導権を委ね、「閣僚環境委員会」を設置しました。

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2 コメント

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Unknown (サイトウタツヤ)
2007-01-16 00:50:49
ニュースを見ていると、非常に違和感を感じる時があります。TOYOTAの利益が過去最高だとか、銀行は今儲かっている、ワンセグが好調だ・・等々。
確かに、一つずつのニュースだけを聞いていると、これが世界だ!と思ってしまいますが、やはり我々は「動物」である以上、ワンセグよりもお米が本当は必要なはずだからでしょう。
トヨタがいくら好調と言っても、50年後には?がつきます。

今の世の中、特に政財界を見るとまるで結末が分かっているのにそれから目をそむけるかのような行動をとっているような気がします。

「不安感があるから危機感がない」その不安を2,3年の株価の上昇を得ることによってごまかそうとしているとしか思えません。

実は私自身もその不安から目をそむけようとして株式をかじりました。結果は割愛しますが、根本的な不安はお金じゃ取り払えそうにありません。

小澤先生がブログタイトルの下に書いてある「将来不安は政治家が取り組む問題」と言う主張はこれからの環境問題のキーワードになると思います。
政治家の仕事は、不安をごまかすことではなく、不安を取り除くこと。国民の抱える不安に真正面から立ち向かうリーダーがこの国には必要だと思いました。
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Unknown (小澤)
2007-01-16 11:51:32
サイトウさん、コメントありがとうございます。
「トヨタがいくら好調といっても50年後には?がつきます」、

石井吉徳さんの主張「ピークオイル」をベースに考えればトヨタに限らず、いろんな業種が50年後には「???」でしょう。昨年9月22日の毎日新聞によれば、トヨタをはじめホンダ、日産が米ビッグスリー
とともに、米カリフォルニア州司法省から「自動車廃排ガスが地球温暖化を引き起こし、環境被害を受けた」と損害賠償請求訴訟でを起こされたそうです。
訴訟の背景はこの報道ではよくわかりませんが、
何らかの行動が起これば、日本のマスコミがフォロー
するでしょう。
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