環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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2002年2月4日の小泉首相の施政方針演説

2007-09-12 11:42:11 | 政治/行政/地方分権


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私は昨日のブログで、 「持続的な経済成長」という表現は、2002年2月4日の「小泉首相の施政方針演説」で用いられた表現そのままです、と書きました。今日は久しぶりに「日本あの日・あの頃」のカテゴリーで、2002年2月4日の「小泉首相の施政方針演説」を振り返ってみましょう。

この施政方針の中で示された「持続的な経済成長」という表現は一昨日の安倍首相の所信表明演説に引き継がれただけでなく、私の本「スウェーデンに学ぶ持続可能な社会 安心と安全の国づくりとは何か」(朝日選書 2006年2月)の論旨の展開の基礎の一つとなっているからです。

次の図をご覧ください。2002年2月4日の「小泉首相の施政方針演説」の全文です。


「はじめに」のところで、小泉首相は日本のめざす方向を次のように述べています。「我が国が持続的な経済成長を取り戻すためには」 「改革なくして成長なし」 という表現に象徴されるように、小泉首相のビジョン(政治目標)は 「持続的な経済成長」 (つまり、20世紀の経済社会の延長上にある「経済の持続的拡大」)です。その意味で、21世紀初頭に発足した小泉・連立内閣は 「行き詰まった20世紀経済を再生するための内閣」 といえるでしょう。  


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2001年4月の小泉・連立内閣発足以来、政府の「経済財政白書」のサブタイトルが、2001年の「改革なくして成長なし」に始まって、2005年が「改革なくして成長なしⅤ」であったことからも、この内閣が従来の経済拡大路線を着実に踏襲していることは明らかです。
 
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次の図は上の図の環境に関する部分(緑の網をかけた部分) 「美しい環境に囲まれ、快適に過ごせる社会」を拡大したものです。


私の本のもう一つのテーマであり、さらに大きな地球的規模の問題である「持続可能な開発」という、21世紀社会の最重要キー・ワードについてはたった一言、「9月に開催される『持続可能な開発に関する世界首脳会議』においては、環境保護と開発を共に達成すべきことを訴えてまいります」と述べたにすぎません。

ちなみに、持続可能な開発に関する世界首脳会議(環境・開発サミット、WSSD)は2002年8月26日から9月4日まで南アフリカのヨハネスブルクで開かれた国連主催の環境サミットで、1992年の「国連環境開発会議〈UNCED〉=地球サミット」後10年を期して開催されました。

新聞の一面をほぼ埋め尽くす1万2000字を超える施政方針演説は9本の柱からなっています。

はじめに
●経済財政運営の基本姿勢と金融安定化への取り組み
●構造改革断行の基本姿勢
●努力が報われる再挑戦できる社会
●民間と地方の知恵が活力と豊かさを生み出す社会
●人をいたわり安全で安心に暮らせる社会
●美しい環境に囲まれ快適に過ごせる社会
●子どもたちの夢と希望をはぐくむ社会
●安全保障と危機管理の基本姿勢
●外交の基本姿勢
むすび

しかし、小泉首相のこの所信表明演説の要旨は、「20世紀の社会が行き詰まっているので、それを改善した20世紀型の経済成長が今まで通りできる社会をつくろう」ということではないのでしょうか。

私がそう考えた理由は、環境問題に触れてはいるものの、21世紀の国づくりの大前提である「環境問題を十分踏まえた21世前半社会への展望」が見えないからです。このことは21世紀のキーワードである「持続可能性あるいは持続性」にかかわる言葉の使い方から明らかでしょう。この施政方針演説には「持続可能性あるいは持続性」にかかわる言葉が次のような表現で6か所登場します。

1. 持続的な経済成長(はじめに)
2. 効率的で持続的な財政への転換(経済財政の運営の基本姿勢と金融安定化への取り組み)
3. 特に医療制度は、厳しい医療保険財政の下、持続的な制度(人をいたわり安全で安心に暮らせる社会)
4. 「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(美しい環境に囲まれ快適に過ごせる社会)
5. 年間500万台に上る使用済み自動車の持続的なリサイクルを行うための仕組み(美しい環境に囲まれ快適に過ごせる社会)
6. 両国の持続可能な経済成長を図るため「成長のための日米経済パートナーシップ」(外交の基本姿勢)

このように、地球温暖化に象徴される21世紀最大の問題である「環境問題」に対して、日本のリーダーの関心が極めて薄いということは、次の世論調査の結果が示すように、日本の市民の「環境問題への関心」が薄いことによるのかもしれません。




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