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★閣僚環境委員会の設置(97年1月)
記者会見で首相は、「各世代が希望に満ちた大プロジェクトを持つべきだ。それぞれの世代にビジョンが必要だ。私たちの前の世代のビジョンは、貧しかったスウェーデンを『福祉国家』にすることだった。いまの私たちのビジョンは、スウェーデンを『緑の福祉国家』に変えることだ。この仕事は若い閣僚が目標を立て、プロジェクト推進の原動力になるのが自然だ」と述べ、若い閣僚に政府の主導権を委ね、「閣僚環境委員会」を設置しました。
閣僚環境委員会は、委員長に環境大臣、委員は教育大臣、労働副大臣、農業大臣、財務副大臣の5人からなります。
委員会のメンバーの性別や年齢の若さにも驚かされますが、委員会を構成する閣僚が環境、教育、労働、農業、財務の閣僚であることに注目したいと思います。環境問題に対する首相の認識と位置づけが、委員会構成にもはっきりとあらわれているといえるでしょう。
この委員会の任務は、「持続可能なスウェーデン」を実現しようとする政府のすべての政策の土台となる、包括的な政策プログラムを97年末までにつくり、98年からそれをスタートさせることでした。97年秋から98年春にかけて、エネルギー、交通、地域交通、地域開発、雇用、消費、住宅、農業、建設・設計などの各分野で、持続可能な開発の達成に必要な政策プログラムがつぎつぎに打ち出されました。
★「環境の質に関する15の政策目標」(98年4月)
このビジョンを実現するために、政府は88年と91年の環境政策で定めた「環境の質に関する170の政策目標」を約1年かけて精査し、「環境の質に関する15の政策目標案」にまとめ、国会に上程しました。98年4月28日の国会で、この政策目標案は承認され、政府の正式な政策目標となりました。これが、今後の「緑の福祉国家」の環境的側面の行動指針となります。
「環境の質に関する15の政策目標(EQOs Environmental Quality Objectives)」は次のとおりです。
政府は98年の「環境の質に関する15の政策目標」の多くに中間目標を定め、国会に上程しました。国会は2001年11月にこれを承認しました。2003年8月、政府の指示に従って環境保護庁は16番目の政策目標として「生物多様性」を政府に提案しました。2005年11月、国会はこれを承認しました
したがって、上の図の「環境の質に関する15の政策目標」に2005年11月から「生物多様性」が加わり、2007年1月1日現在で「環境の質に関する16の政策目標」が策定されたことになります。それぞれの政策目標に対して、「環境の質」、「達成時期」、「担当行政機関」が具体的に決められています。最終目標年次は2020~25年です。
★「緑の福祉国家」の国家像を示した施政方針演説(99年9月)
それでは、「緑の福祉国家」とは具体的にどのような国家像なのでしょうか。99年9月14日の首相の施政方針演説から、その概要を知ることができます。
ペーション首相は「スウェーデンは生態学的にバランスのとれた国家でなければならない。スウェーデンの環境政策は、これまでにない最もラジカルな再構築を経験した。それが99年1月施行の環境法典の成立であった」と語り、つぎのような国家像を示しました。
①福祉国家としてのリーディングな地位を強化する国家。
②ノウハウおよび専門技術についてリーディングな国家。
③IT(情報技術)のリーディングな国家。
④多様性に富んだ国家。
⑤国民の労働と事業に基づいた成長と繁栄の国家。この三年間で、スウェーデン国内に10万の新会社が設立された。これらの企業は新しい雇用を生み出し、繁栄を推し進め、競争と創造性を刺激している。この展開は、税制の戦略的変革によってさらに強化されるであろう。
⑥「開発」および「平等」に基づいたヨーロッパを保障するために、活発に貢献する国家。
⑦国民が他人のなかに自己の存在を見出すことができる力を秘めた国家。
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